【初心者向け】買主様側仲介での不動産売買契約から引渡しまでの実務

売買契約の進め方を学びたいけど、何をどう進めたらいいか分からない、と戸惑っていませんか?

この記事では、不動産売買における買主様側仲介での、売買契約から引渡しまでの実務について、極力深掘りは控え、超初心者向けにご説明します。

この記事を読めば、不動産売買の買主様側での契約から決済引渡しまでの流れをおさえることができます。

もし今、不動産賃貸営業から売買営業にスイッチしたいとお考えでしたら、是非この記事を読んで踏み出してみてください!

目次

居住用不動産を購入する際に買主様がやらなければならない2つのこと

不動産売買における買主様側仲介と売主様側との実務は、内容が異なる点が多々あります。

今回の記事では、買主様側の実務について、買主様が住宅ローンを利用して、新に住宅を購入した場合を想定してご説明します。

さてこの場合、買主様がやらなければならない具体的なことは何でしょう。

それは、下記の2つです。

1.売主様から物件を購入する
2.住宅ローンを利用する

では実際に、それぞれがどのように進んでいき、買主様側の仲介業者は、それらにどう関わるのか、順番に見ていきましょう。

「1.売主様から物件を購入する」手順と方法

A.購入申込書の提出

お客様が内覧した物件を購入したいとおっしゃったら、まず売主様側の仲介業者に購入申込書を提出します。

購入申込書は、買付(かいつけ)証明書と言う場合もあります。

書式は売主様側仲介業者指定の場合もあれば、特に指定がない場合もあります。売主様側仲介業者に確認しましょう。

用紙を入手したら、必要事項をお客様(買主予定者様)にご記入頂き、売主側仲介業者にメール、もしくはファックスで送ります。

B.本人確認

ちょっと硬い話しになりますが、宅建業者は「犯罪収益移転防止法」という法に基き、不動産取引の際に、お客様の「本人確認」をしなければならないとされています。

ご本人様の確認として、運転免許証や健康保険証等の身分証を確認させて頂き、そのコピーを取得するようにしましょう。

C.売渡承諾書の受領

売主様側の仲介業者は、買主様から購入申込書を受領したら、その書面を売主様に提示し、売り渡しに応じるかどうかの判断を仰ぎます。

売主様が「売ります」と判断はさった場合、その旨を口頭でお知らせ頂くだけの場合もありますが、この種の意思表示は、やはりある程度の「重さ」が必要かと思います。

そこでよく用いられるのが、売渡(うりわたし)承諾書です。

売主様に書いて頂いた売渡承諾書を、売主様側の仲介業者が買主様側の仲介業者にメールあるいはファックスで送ってきます。

D.重要事項説明

売買契約の前に、宅建業者はお客様(買主様)に重要事項説明をしなければなりません。

重要事項説明は、書面作成を売主様側の仲介業者が行い、その説明を買主様側の仲介業者の宅地建物取引士が行うのが一般的です。

したがって、もしご自身が宅地建物取引士の資格をお持ちでなかったら、有資格者の上司もしくは先輩に依頼するようにしましょう。

実施場所は、お客様(買主様)側の仲介業者の事務所が一般的ですが、お客様のご自宅の場合もあります。

また売買契約当日に、契約書への署名押印前に重要事項説明をする場合もあります。

E.売買契約

売買契約は通常、買主様側の仲介業者の事務所、もしくは売主様側の仲介業者の事務所で行われます。

また買主様、あるいは売主様が希望する、銀行の応接室で行う場合もあります。

売買契約書は、通常売主様側の仲介業者が作成します。

売主様、買主様、売主様側の仲介業者、買主様側の仲介業者が揃ったら、売主様と買主様それぞれに、契約書に署名押印して頂きます。

そして最後に、2通ある契約書の1通に売主が、また他の1通に買主様が、それぞれ収入印紙を貼って消印し、完了となります。

また、もし売買契約当日に買主様への重要事項説明を実施するようでしたら、約束の場所に買主様に早めにお越し頂いて実施するのが一般的です。

売主様と買主様が会わずに、持ち回りで実施する場合もあります。

売主様の仲介業者から、売主様の署名押印済みの契約書類を受け取り、後から買主様に署名押印して頂く場合もあれば、売主様の署名押印が無い状態で契約書類を預かり、先に買主様に署名押印して頂く場合もあります。

持ち回り契約の場合は、手順について、事前に売主様側の仲介業者としっかり打ち合わせておきましょう。

F.手付金の支払い

通常買主様は、売買契約締結時に、売主様に手付金をお支払いします。

買主様に現金を持参して頂き、その場で売主様にお支払い頂く場合もあれば、売主様の指定口座にお振り込み頂く場合もあります。そしてその場合の振込手数料は、通常買主様が負担します。

また振り込みの場合、是非とも買主様側の仲介業者のほうから、売主様に、「只今、買主様が手付金を送金しました。着金が確認できるまで今しばらくお待ち頂けますか」と、申し出ましょう。

その上でもし売主様が、ちゃんと振り込んで頂いたようなのでもう大丈夫ですよ、とおっしゃればそれで解散でよろしいと思います。

しかし売主様が、着金が確認できるまでお待ちになるようでしたら、買主様にも今しばらくお待ち頂くようお願いしましょう。

買主様の振り込みが完了したからといって、買主様側の仲介業者から解散を促してしまうと、売主様への配慮を欠いてしまう場合があります。注意しましょう。

G.売買残代金の支払い

買主様は、最終的に物件を取得するにあたり、売主様に売買残代金をお支払いします。

残代金は通常、銀行から融資を受けて得た資金で支払います。

H.諸費用①(物件購入に伴うもの)の支払い

買主様には、物件の価格以外にも支払わなければならない諸費用があります。

下記の通りです。

・固定資産税等の案分
・所有権移転(保存)登記の登録免許税と司法書士への報酬

I.物件の引渡し

買主様は支払いを済ませたら、売主様から物件の鍵を頂きます。この鍵の譲り受けをもって、引渡し完了となります。賃貸と同じですね!

J.所有権移転(保存)登記の申請

買主様が売主様に残代金を支払い、売主様が買主様に物件を引渡したら、その物件の所有件は、売主様から買主様に移転します。

そしてこの、「物件の所有件が売主様から買主様に移転した」という事実は、登記されることになります。

これを所有権移転(保存)登記と言い、その為の申請を決済引渡し時に行います。

なお、この実務は司法書士が担います。

(注)

所有権移転(保存)登記の実務を担う司法書士の手配は、通常買主様側の仲介業者が行います。登記費用を負担するのが通常買主様だからです。

各宅建業者は、大抵お付き合いのある司法書士が決まっています。

契約が決まったら、上司から予め会社とお付き合いのある司法書士の連絡先を聞いておき、決済引渡しの日が絞り込めたら、早めに連絡を入れて業務を依頼するようにしましょう。

K.売買物件引渡確認書の受領

この度の売買物件取引が無事に完了したことを、売主様と買主様双方にご確認頂いたことを明らかにするために、売買物件引渡確認書という書面を受領します。

売主様と買主様双方に署名・押印して頂き、仲介業者が受領して保管します。

L.諸費用③(仲介手数料)の受領

最後に、買主様よりこの度の仲介業務の仲介手数料を頂戴します。

「2.住宅ローンを利用する」手順と方法

ここからは、買主様が住宅ローンを利用するに当たっての、手順について見ていきましょう。

下記の通りです。

a.事前審査

お客様(買主予定者様)が物件購入の意思をお示しになったら、銀行から、住宅ローンの承認を得られるかどうかがポイントになります。

不動産の売買取引では通常、契約を締結する前に、融資を受ける銀行で事前審査を行います。

b.本審査

事前審査が承認され、売買契約を締結したら、本審査を行います。

(注)事前審査、及び本審査に際し、買主様は銀行から様々な書類の提出を求められます。後ほど詳しくご説明します。

c.金銭消費貸借契約

本審査の承認が得られたら、続いて買主様と銀行との間で、金銭消費貸借契約を交わします。

場所は、融資を受ける銀行で交わされるのが一般的です。また金銭消費貸借契約は通称、金消(きんしょう)契約と呼ばれます。

d.融資実行

買主様が融資によって得たお金が、買主様の銀行口座に一旦振り込まれます。これを融資実行と言います。

買主様は融資実行を受けたら、直ちに売主様に売買残代金をお支払いすることになります。

e.諸費用②(住宅ローン利用に伴うもの)の支払い

買主様が住宅ローンを利用した場合、それに伴う下記諸費用の支払いが発生します。

・金融機関への事務手数料等
・火災保険料
・抵当権設定登記の登録免許税と司法書士への報酬

f.抵当権設定登記の申請

銀行が買主様に融資実行したら、銀行はその物件に対して抵当権を設定します。

そしてこの、「銀行は買主様が所有するこの物件に、抵当権を設定した」という事実は、登記されることになります。

これを抵当権設定登記と言い、この申請業務もやはり司法書士が担います。

(注)

司法書士の業務は、先に挙げた「所有権移(保存)転登記の申請」と、この「抵当権設定登記の申請」の2つになります。

買主様が「住宅ローンを利用して、売主様から物件を購入する」一連の流れ

ではここから、上記の「1.売主様から物件を購入する」と「2.住宅ローンを利用する」を合わせた一連の流れを、それぞれのステージごとに確認していきましょう。

ステージ1.契約前

A.購入申込書の提出(物件購入)

B.本人確認(物件購入)

a.事前審査(住宅ローン)

C.売渡承諾書の受領(物件購入)

D.重要事項説明(物件購入)

ステージ2.契約当日

E.売買契約(物件購入)

F.手付金の支払い(物件購入)

ステージ3.契約後決済引渡し前

b.本審査(住宅ローン)

c.金銭消費貸借契約(住宅ローン)

ステージ4.決済引渡し当日

d.融資実行(住宅ローン)

G.売買残代金の支払い(物件購入)

H.諸費用①の支払い(物件購入)

e.諸費用②の支払い(住宅ローン)

I.物件の引渡し(物件購入)

J.所有権移転(保存)登記の申請(物件購入)

f.抵当権設定登記の申請(住宅ローン)

K.売買物件引渡確認書の受領(物件購入)

L.諸費用③(仲介手数料)の受領(物件購入)

(注)

決済引渡しの際、場合によっては、買主様がお支払いしなければならない額の総額が、融資の額を上回ってしまうケースがあり得ます。

したがって、買主様側の仲介業者は、その可能性がある場合には、買主様にその差額よりもやや多めの額を口座に入れておいて頂くよう、予め申し伝えておく必要があります。

留意しておきましょう。

住宅ローンの審査内容と銀行から求められる書類について

住宅ローンを利用する際には、銀行は買主様と購入予定物件のことを色々調べなければなりません。

銀行はその為の根拠資料として、様々な資料を買主様に求めてきます。

買主様側の仲介業者は、買主様にそれらの書類をご用意頂くよう、場合によってはフォローして差し上げる必要があります。

なお求められる書類と、それに基く審査の内容は、概ね下記の通りのようです。

根拠書類1.売買契約書

買主様は本当に物件を購入するのか、その根拠書類として、売買契約書の写しを求められます。

根拠書類2.所得証明書(等)

買主様は本当に住宅ローンの返済が可能かどうか。その見極め材料として、所得証明書(等)を求められるようです。

根拠書類3.住民票

買主様は本当に購入予定物件を居住用として使用するのか、その確認書類として、住民票を求められます。

(注)

受ける融資が住宅ローンの場合、買主様は、購入予定物件での住民票を提出しなけなりません。

なぜなら住宅ローンは、その家に居住する場合にのみ融資してもらえる、金利的にも優遇された特別なローンだからです。

したがって買主様は、購入する物件に早めに住所を移し、その住民票を用意しなければなりません。

根拠書類4.購入予定物件書類

購入予定物件は、本当に融資額相当の担保価値があるのか、その判断材料として、購入予定物件資料(新築の場合は建築確認関係書類等)を求められます。

まとめ

いかがでしたか?

不動産売買における契約から決済引渡しまでの実務は、賃貸とちがった複雑さがありますが、是非この記事を参考にして頂けたらと思います。

最後にもう一度内容を確認しておきましょう。

□契約から決済引渡しまでの流れ

(契約前)

購入申込/本人確認/事前審査/売渡承諾書の受領/重要事項説明

(契約当日)

売買契約/手付金の支払い

(契約後決済引渡し前)

本審査/金銭消費貸借契約

(決済引渡し当日)

融資実行/売買残代金の支払い/仲介手数料以外の諸費用の支払い/物件の引渡し/登記申請/売買物件引渡確認書の受領/諸費用(仲介手数料)の受領

□買主様が銀行に提出すべき根拠書類

売買契約書/所得証明書/住民票/購入予定物件書類

以上、最後までお読み頂いてありがとうございました!

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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