不動産の譲渡所得の計算とは?不動産売買営業初心者の方向けに説明

不動産会社で売買営業に携わっていると、売主様から売却に伴う税金について質問され、答えに困った経験はありませんか?

この時の税金の元となる額を、譲渡所得と言います。

この記事では不動産の譲渡所得について、不動産の売買営業初心者の方向けにわかりやすくご説明します。

この記事を読めば、不動産の譲渡所得の基本がわかり、お客様からご質問されても、落ち着いて対応できるようになりますよ!

では、どうぞ。

目次

譲渡所得とは

不動産を売却すると、そのことによって利益が出たり損失が出たりしますよね!

この時の利益ないし損失を、譲渡所得といいます。

譲渡所得は、所得税と住民税の根拠になります。

またこの記事で詳細は触れませんが、不動産の買換えに伴う様々な特別控除や特例を正しく運用するための重要な価になります。

譲渡所得とそれに基づく税制は、深く掘り下げると、私たち素人にはとても難しいです。

でもとても重要なので、その基本的な骨格はしっかり押さえておくことにしましょう!

以下に譲渡所得の基本について、順を追って見ていきます。

(注)

この記事は、終始譲渡所得そのものについてご説明しています。譲渡所得税の税率の詳細、3000万円特別控除、買換え特例、譲渡損失の損益通算については説明しておりません。

譲渡所得を正しく捉えには、購入から売却までを3つに分けるのがコツ

譲渡所得を正しく捉えるには、不動産の売却に伴うお金の出入りを税制目線で正しく捉える必要があります。

そしてその為には、購入から売却までを3つに分けると分かり易いです。

一般的に不動産の売却までの経緯は、まずその不動産を購入し、暫く住んだり貸したりして、そして売却する、となりますよね。

3つとはこの、「1.購入」、「2.住んだり貸したり」、「3.売却」のことです。

そして税制では、この3つすべてにお金の出入りが発生すると解釈します。

お金の出入りを書き出すと、下記の通りになります。

1.購入時→物件の購入価格/購入経費

2.居住(賃貸)期間→それに伴う価値の目減り=減価償却

3.売却時→物件の売却価格/売却経費

これら3つのうち、「1.購入時」と「3.売却時」はお分かり頂けると思います。

分かりづらいのが「2.居住(賃貸)期間→それに伴う価値の目減り=減価償却」ではないでしょうか?

以下にご説明します。

不動産の譲渡所得における減価償却

モノの価値は一般に、時間が経つにつれてだんだん目減りするとされています。

不動産もそうです。

ただし不動産は、価値が目減りするのは建物等だけです。

土地は目減りしません。

そして税制では、この価値の目減りに一定の基準を設けています。

そして不動産を売却する時に、その基準に基づく額をしっかり計算することになっています。

これを、減価償却と言います。

不動産を売却したら、譲渡所得を正しく計算しなければなりません。

そして譲渡所得を正しく計算するには、住んだり貸したりしたことに伴う価値の目減りを、税法に則って正しく計算して反映させる必要がある、というわけです。

譲渡所得における減価償却相当額の計算式

ではその減価償却に相当する額は、どのように計算すればいいのでしょう?

譲渡所得を求める際の減価償却費相当額の計算は、下記の通りです。

減価償却費相当額=

建物購入価額×0.9×償却率×経過年数

(注)

経過年数の端数は、6ヶ月以上の場合は1年とし、6ヶ月未満の場合は切り捨てます。

仮に新築のRC造分譲マンションの一室を、3500万円(土地1500万円+建物2000万円【消費税込】)で購入し、 20年住んで売却したとします。

この数字を計算式に当てはめてみましょう。なお住居等非事業用のRC造の償却率は0.015です。

すると下記のようになります。

2000万円×0.9×0.015×20

係数0.9を掛けるのを忘れないようにしましょう。

するとこの場合の減価償却費相当額は540万円になります。

すなわち、このマンションに20年住んだことで目減りしたとされる税制上の額は、540万円というわけです。

譲渡所得の計算の出発点となる額は、購入金額の3500万円ではなく、この540万円を反映させた2960万円になります。

(注)

上記は非事業用(居住用)建物の計算式です。この記事での事業用建物の計算式の詳細は割愛しますが、主に係0.9掛けが不要な点、経過年数の端数の切り上げと切り捨てを行わない点が異なります。

不動産の譲渡所得の計算式

減価償却費相当額の計算方法が分かったところで、次に譲渡所得そのものの計算方法を確認しておきましょう!

再び上記の、新築3500万円(土地1500万円+建物2000万円【消費税込】)のRC造分譲マンションの例を引用することとします。

物件所有者は、そのマンションに20年住んで売却しました。

売却価格は3240万円だったとします。

あと考慮しなければならないのが、購入時及び売却時の経費です。

経費はそれぞれ、購入経費が150万円、売却経費が100万円だったとします。

これで譲渡所得を計算するのに必要な数字は出揃いました。

・購入価格に減価償却相当額を反映させた額→2960万円

・購入経費→ 150万円

・売却価格→3240万円

・売却経費→100万円

そしてここで一旦立ち止まって、これら4つの数字が「出(-)」なのか「入り(+)」なのかに注意しながら計算していきます。

慣れないと「出(-)」と「入り(+)」が逆になったりします。

落ち着いて行きましょう!

マンション所有者からお金が出て行ったら「出(-)」、入って来たら「入り(+)」です。

すると下記のようになります。

・購入価格に減価償却相当額を考慮した額→2960万円:「出(-)」

・購入経費→ 150万円:「出(-)」

・売却価格→3240万円:「入り(+)」

・売却経費→100万円:「出(-)」

計算式は下記の通りです。

3240万円-2960万円-150万円-100万円

=30万円

出ました!

譲渡所得は30万円の利益になります。

譲渡所得の計算における、減価償却相当額の重要性

以上見てきた通り、譲渡所得は減価償却相当額をしっかり反映させた上で、購入時及び売却時の経費を考慮して計算します。

繰り返しになってしまいますが、ポイントは計算の出発点が、購入価格でなく、それに減価償却相当額を反映させた額である点です。

仮に、上記の新築3500万円(土地1500万円+建物2000万円【消費税込】)のRC造分譲マンションの例において、誤って減価償却相当額を反映させなかったとします。

するとその計算式は下記の通りになります。

3240万円-3500万円-150万円-100万円

=-10万円

譲渡所得は10万円の損失になってしまいます。

正しくは30万円の利益となり、所得税と住民税の計算に算入させる必要があります。

ところが誤って減価償却相当額を反映させなかったら、損失となり、その必要がないことになってしまうわけです。

不動産の譲渡所得は多くの場合、特別控除によって控除されます。

いわば譲渡所得が利益であろうと損失であろうと、所得税と住民税の税額に影響しない場合がほとんどです。

しかここに買換えが絡んでくると、事態は一変します。

この記事での詳細は割愛しますが、買換えの場合譲渡所得を正しく計算しておかないと、何かと好ましくない事態になりかねないのです。

譲渡所得の計算に経費を考慮することは、容易に理解できると思います。

ポイントは減価償却相当額も、忘れずに反映させることです。

しっかり押さえておきましょう。

税制の専門家による譲渡所得の計算式

税制の専門家の方々に譲渡所得の計算方法を問い合わせると、下記の計算式を教えてくださいます。

譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)

この記事の上記でご説明した計算方法と一見違って見えますが、実は全く同じです。

しかし「取得費」と「譲渡費用」という言葉が、専門的で難しいと思います。

ここで擦り合わせておきましょう!

まず「取得費」とは、上記で言う「購入価格」・「購入経費」・「減価償却相当額」のことです。

上記の新築3500万円(土地1500万円+建物2000万円【消費税込】)のRC造分譲マンションの例でいくと、「取得費」を出すための計算式は下記の通りになります。

3500万円+150万円-540万円=3110万円

「取得費」は3110万円になります。

減価償却相当額が一旦「出(-)」で挙がってくるのがポイントです。

次は「譲渡費用」です。

「譲渡費用」とは、上記の「購入経費」に当たります。

よって100万円です。

そして先程の、「売却価格-(取得費+譲渡費用)」という計算式に、これら出揃った額を当てはめてみます。

すると下記のようになります。

3240万円-(3110万円+100万円)

=3240万円-3210万円

=30万円

譲渡所得が出ました、30万円です。

最初にご説明した計算結果と、同じ結果であることがご確認頂けたと思います。

こちらの税務の専門家向けの計算式を使える方は、是非こちらの計算式で計算していきましょう。

しかし中にはこの計算式だと、それぞれの額が「出(-)」なのか「入り(+)」なのか、混乱してしまう方もいらっしゃると思います。

そういう方は上記でご説明した、「購入価格に減価償却相当額を反映させ、購入時と売却時の経費を考慮して計算する」という、理屈から入った計算方法でいきましょう。

譲渡所得と不動産所得の違い

私たち宅建業従業者にとって身近な税制上の言葉に、もう1つ不動産所得というものがあります。

この不動産所得という言葉、譲渡所得とどう違うのでしょう?

不動産所得とは、賃料収入に関わる所得、不動産の貸付けによる所得のことを言います。

賃料収入から、減価償却費を含む必要経費を差し引いて計算します。

譲渡所得が不動産の売却に伴う所得、不動産所得が賃料収入に伴う所得と理解しておけば大丈夫です。

この機会にしっかり区別して覚えてしまいましょう。

宅建業従業者がお客様から譲渡所得について質問された場合の注意点

宅建業従業者として不動産売買に携わっていると、売主様から売却時の税金、すなわち譲渡所得について、ご質問頂く場合も多いと思います。

しかし一方で、売主様方の売却不動産て、多種多様ですよね!

居住用もあれば事業用(収益物件)もありますし、売却物件によっては、購入価格が不明な物件もあったりして。

また古家付きで売却する場合もあれば、解体更地渡しもあったりと。

しかもこれらすべておいて、譲渡所得の計算式が微妙に異なってくるわけなんです。

どうやら他の税制同様この譲渡所得も、私たち税制の素人が不用意に口を挟むべきものではなさそうですね!

私たち宅建業従業者は、譲渡所得に関する基本的な知識を備えた上で、お客様方の譲渡所得に気付きを持つことは大切であるようです。

しかしお客様方からその具体的な中身についてご質問があった時などは、安易な回答は控えましょう。

不動産の譲渡所得は税務署の管轄になります。

譲渡所得の詳しい内容については、お客様方に直接税務署におたずね頂くようご誘導するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか?

難しい譲渡所得ですが、この機会に基本的な捉え方をしっかり押さえ、不動産ご売却のお客様の対応に生かしていきましょう。

最後にもう一度、内容を確認しておきます。

□譲渡所得を捉える際の、物件購入から売却までの3つのポイント

1.購入時→物件の購入価格/購入経費

2.居住(賃貸)期間→それに伴う価値の目減り=減価償却

3.売却時→物件の売却価格/売却経費

□譲渡所得における減価償却相当額の計算式

減価償却費相当額=

建物購入価額×0.9×償却率×経過年数

*この計算式は非事業用(居住用)建物の場合に限ります。

□不動産の譲渡所得の計算の出発点

購入価格→✕

購入価格に減価償却を反映させた額→○

□不動産の譲渡所得の計算式

譲渡所得=売却価格-購入価格に減価償却を反映させた額-購入経費-売却経費

□税制の専門家による譲渡所得の計算式

譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)

□お客様から譲渡所得について質問された場合の注意点

安易な回答は控え、直接税務署等におたずね頂くようご誘導。

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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