住宅ローン控除や不動産所得による所得税の減税と源泉徴収票の見方

不動産の売買営業をやっていると、お客様から住宅ローン控除について聞かれますよね。

住宅ローン控除(減税)制度では、ローン残高の0.7%を13年間(2022年の改正による)に渡って控除しますが、所得税のどの部分から控除されるかわかりますか?

これを正しく理解するには、所得税の計算方法や、源泉徴収票の見方を理解する必要があったりします。

この記事ではまず、その辺りをご説明します!

なお不動産の売買営業員の方々が、その辺りを押さえようとする際、せっかくなので一緒に押さえてしまいたいものがあります。

賃料収入等に基づく不動産所得において、それが赤字(損益)の場合に、給与所得と通算算することで所得税を減税できる仕組みです。

この記事では、その点もご説明します。

この記事を読めば、住宅ローン控除や不動産所得の赤字による減税額を計算する時に、源泉徴収票のどこを見ればいいか、分かるようになります!

では、どうぞ。

(注)

1.この記事に記載する計算式では、復興特別所得税は割愛しております。

2.この記事では、住宅ローン控除及び不動産所得の損益による、住民税の納税額の減税については、言及しておりません。

目次

所得税の納税額の計算で押さえたい4つの計算式

住宅ローン控除や不動産所得の赤字によって、所得税が減税される場合、所得税の納税額は、どのように計算したらいいでしょう?

その辺りを理解するためには、何よりもまず、所得税の納税額の計算方法そのものを理解する必要があります。

所得税の納税額は、以下の4つの計算式を使って計算します。

A1.収入-必要経費=所得

(収入から必要経費を引いて所得を出す)

A2.所得-所得控除=課税所得

(所得から所得控除を引いて課税所得を出す)

A3.課税所得×税率=所得税額

(課税所得に税率を掛けて所得税額を出す)

A4.所得税額-税額控除=所得税の納税額

(所得税額から税額控除を引いて所得税の納税額を出す)

この4つ、最初はなかなか覚えづらいですが、覚えてしまうと後が楽です。

是非覚えてしまいましょう!

(注)

上記A4の計算式では、「税額控除」が0円の場合、「所得税額」がそのまま「所得税の納税額」になります。

所得控除と税額控除

上記の計算式において、「税率」が掛けられる前と後に、「○○控除」というものが1つづつありますよね。

「所得控除」と「税額控除」です。

控除する住宅ローン控除のことを、正しく捉えるためには、これら2つの控除を、明確に区別できるようにしておく必要があります。

以下、それぞれについて確認しておきましょう。

「所得控除」とは

「所得控除」とは、「課税所得」に「税率」を掛ける前に差し引く控除のことです。

「課税所得」に「税額」を掛けるとは、すなわち「所得税額」を出すことですよね。

「所得控除」とはいわば、「所得税額」を出す前にに差し引く控除のことです。

「税額控除」とは

「税額控除」とは、「課税所得」に「税率」を掛けた後に差し引く控除のことです。

繰り返しになりますが、「課税所得」に「税率」を掛けたら「所得税額」が出ますよね。

したがって「税額控除」とはいわば、「所得税額」から直接差し引く控除のことです。

「所得控除」と「税額控除」の減税額の差

「所得控除」と「税額控除」には、所得税を計算する場合、決定的な違いがあります。

減税額です。

以下それぞれの控除の減税額について、具体例を用いて比較してみます。

まずは、「所得控除」です。

今仮に所得を500万円、所得控除を50万円または100万円、税率20%、税額控除を0円とします。

この場合、所得控除50万円と100万円とでは、納税額は幾ら違うでしょう?

まず所得控除50万の場合、課税所得は450万円、所得税額は90万円で、納税額も90万円になります。

また所得控除100万円の場合、課税所得は400万円、所得税額は80万円で、納税額も80万円になります。

よって所得控除50万円と100万円では、所得税の納税額が10万円違います。

次に、「税額控除」です。

今仮に所得を500万円、所得控除を0円、税率20%、税額控除を50万円または100万円とします。

まず税額控除50万円の場合、所得税額は100万円、納税額は50万円になります。

また税額控除100万円の場合、所得税額が100万円、納税額は0円になります。

よって税額控除50万円と100万円では、所得税の納税額が50万円違います。

このように「所得控除」では、控除額が50万円増えても10万円しか減税されませんが、「税額控除」ではそのまま50万円が減税されます。

「税額控除」による減税額は、その効果がとても大きいことが、ご理解頂けると思います。

住宅ローン控除による所得税の減税と納税額の計算

ここまでで、所得税の納税額が4つの計算式から計算できること、そしてそれらの計算式には2つの控除があり、「税額控除」の減税額がとても大きいことが、お分かり頂けたと思います。

そこで住宅ローン控除です!

住宅ローン控除は、「所得控除」と「税額控除」のどちらの控除でしょう?

これは皆さん、よくご存じのことと思います。

「税額控除」です!

住宅ローン控除がある場合、最終的な「所得税の納税額」は、「所得税額」からその控除額を差し引いた金額になります!

上記A1からA4の計算式で言うと、A4の計算式で計算されます。

この辺りのことは、不動産の売買営業、とりわけ実需物件の売買営業に携わる多くの方々には、当たり前過ぎることかと思います。

でも取引の幅を広げていって、投資用物件関連の税制に馴染んでくると、住宅ローン控除が、税率を掛ける前と後どちらで差し引くか、すなわち「所得控除」か「税額控除」か、曖昧になってきたりします。

是非この機会に、住宅ローン控除は減税額が大きい「税額控除」である点、押さえておきましょう!

住宅ローン控除による所得税の減税と源泉徴収票の見方

ここまでで、住宅ローン控除が「税額控除」であり、上記計算式のA4で計算できることがわかりました。

ではこの住宅ローン控除は、源泉徴収票のどの金額から控除されるでしょう?

すなわち源泉徴収票で「所得税額」を確認するには、どこを見ればいいでしょう?

これはシンプルです!

「源泉徴収額」です。

ただこれだけだと、表面的な理解で終わってしまいます。

せっかくなので、もう一歩踏み込んで理解しておきましょう。

源泉徴収票には、下記4つの金額が記載されています。

・「支払金額」

・「給与所得控除後の金額」

・「所得控除の額の合計額」

・「源泉徴収額」

上記A1からA4の計算式に出てくる金額に、これら4つの金額を照らし合わせると、下記のようになります。

・「収入」=「支払金額」

・「所得」=「給与所得控除後の金額」

・「所得控除」=「所得控除の額の合計額」

・「所得税額」=「源泉徴収額」または「所得税の納税額」=「源泉徴収額」

また上記A1からA4の計算式に、これら4つの金額を反映させると下記のような計算式になります。

B1.支払金額-給与所得控除=給与所得控除後の金額

B2.給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額=課税所得

B3.課税所得×税率=源泉徴収額

B4.源泉徴収額-税額控除=所得税の納税額 または 所得税額-税額控除=源泉徴収額

「給与所得控除後の金額」の中にある『給与所得控除』とは、「必要経費」のことです。

源泉徴収で所得税を納税する場合、「必要経費」を『給与所得控除』として一定額を差し引くことになっています。

ただしその『給与所得控除』の金額そのものは、源泉徴収票には表記されません。

また「所得税額」=「源泉徴収額」となり、その計算式が「源泉徴収額-税額控除=所得税の納税額」となる場合とは、「税額控除」を確定申告する場合です。

一方「所得税の納税額」=「源泉徴収額」となり、その計算式が「所得税額-税額控除=源泉徴収額」となる場合とは、「税額控除」を年末調整する場合です。

住宅ローン控除で言えば、初年度は確定申告であり、その際の源泉徴収票の「源泉徴収額」は、「所得税額」を表します。

そして2年目以降は年末調整なので、「所得税の納税額」を表します。

この項では、上記A1からA4の計算式と、B1からB2の計算式との関連性を、しっかり押さえておきましょう!

不動産所得の赤字(損益)による所得税の減税と源泉徴収票の見方

不動産の売買営業員が、住宅ローン控除によって所得税の減税や、源泉徴収票の見方を理解しようとする際、せっかくなので一緒に押さえたいものがあります。

不動産所得の赤字(損益)によって、所得税が減税される仕組みです。

不動産所得とは、自ら所有するマンション等で賃料収入を得ている場合の、利益または損益のことです。

不動産所得の赤字(損益)は、所得税の計算において、どの部分に組み入れられるのでしょう?

結論を申します。

「所得」です。

実は赤字(損益)に限らず、黒字(利益)も「所得」に算入します。

要するに、不動産所得がある場合、他の「所得」に不動産所得の利益なり損益なりを合算して、最終的な「所得」を出すわけです。

不動産所得が黒字(利益)なら「所得」は高くなりますし、赤字(損益)なら低くなるわけです。

上記A1からA4の計算式に、不動産所得を組み入れた計算式は、下記の通りです。

C1.収入-必要経費=所得

C2.(所得+不動産所得)-所得控除=最終的な課税所得

C3.最終的な課税所得×最終的な税率=最終的な所得税額

C4.最終的な所得税額-税額控除=最終的な所得税の納税額

またこの計算式に、源泉徴収票の記載金額を反映させると下記の通りです。

D1.支払金額-給与所得控除=給与所得控除後の金額

D2.(給与所得控除後の金額+不動産所得)-所得控除の額の合計額=最終的な課税所得

D3.最終的な課税所得×最終的な税率=最終的な所得税額

D4.最終的な所得税額-税額控除=最終的な所得税の納税額

不動産所得を組み入れると、「課税所得」・「税率」・「所得税額」が変わり、結果として「所得税の納税額」が変わることを、押さえておきましょう。

住宅ローン控除と不動産所得の損益計算が共に存在する場合

今仮に、自ら所有する賃貸物件の不動産所得が赤字(損益)の方が、住宅ローン控除を受けようとしているとします。

いわば住宅ローン控除と、不動産所得の赤字(損益)が共にあるケースです。

この場合、所得税の計算はどうなるでしょう?

この場合、まず「所得」から「不動産所得」を引いて、更に「所得控除」を引き、「最終的な課税所得」を出します。

そして「最終的な課税所得」に「最終的な税率」を掛けて、「最終的な所得税額」を出します。

そして最後、「最終的な所得税額」から住宅ローン控除を引いたら「最終的な納税額」が出ます。

問題ありませんよね!

譲渡所得について

不動産の賃貸による利益または損益が不動産所得であるのに対し、不動産売買による利益または損益を、譲渡所得と言います。

さてこの譲渡所得は、上記A1からA4の計算式に、どのように組み入れたらいいでしょう?

実は譲渡所得は、これらの計算式には組み入れません。

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、分離課税と言って、他の所得と分離して計算するものとされています。

まとめ

いかがでしたか?

是非この機会に、源泉徴収票の見方と併せ、住宅ローン控除や不動産所得の赤字(損益)がある場合の所得税の計算の仕組みを押さえましょう!

以下にもう一度、この記事の内容を確認しておきます。

□所得税の納税額の計算式

1.収入-必要経費=所得

2.所得-所得控除=課税所得

3.課税所得×税率=所得税額

4.所得税額-税額控除=所得税の納税額

□所得控除と税額控除

・所得控除:税率を掛ける前の控除

・所得控除:税率を掛けた後の控除

□住宅ローン控除

*住宅ローン控除=税額控除

□源泉徴収票の見方

・「収入」=「支払金額」

・「所得」=「給与所得控除後の金額」

・「所得控除」=「所得控除の額の合計額」

・「所得税額」=「源泉徴収額」または「所得税の納税額」=「源泉徴収額」

□不動産所得がある場合の納税額の計算

不動産所得を組み入れるところ→「所得」

*「(所得-不動産所得)-所得控除=最終的な課税所得」

□譲渡所得について

譲渡所得は他の所得と分離して計算→分離課税

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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