越境問題を解消する上で不動産売買営業員が押さえたい重要なこと1つ

不動産業者の売買営業員として売主様から物件の売却依頼を承った際、境界の向こう側のブロック塀がこちら側に傾いていたり、こちら側の屋根の先が向こう側に飛び出ていて、焦った経験はありませんか?

いわゆる越境です。

さてこういう場合、どう解消したらいいでしょう?

実は越境問題を解消する場合には、解消しようとする者の多くが根拠とする、ある重要な考え方があるのをご存じですか?

この記事では、越境問題を解消しようとする際に知っておきたい重要な1つの考え方について、売買営業初心者の方向けにご説明します。

この記事を読めば、越境問題に直面現場しても、落ち着いて対処できますよ!

では、どうぞ。

目次

越境問題を解消する際に原則となる、重要な1つの考え方とは

売主様からお預かりした物件に越境物があると、不動産売買の担当営業員としては非常に焦りますよね。

木の枝が飛び出している程度ならまだしも、越境物を撤去するのに費用を要する場合には、一瞬途方に暮れてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?

お隣の方はその越境物の撤去に応じて頂けるだろうか、もし応じて頂けなかったら、やはり売り出し中止になってしまうのだろうか等、いろいろ心配になってしまうと思います。

さてこういう場合、私たち不動産業者はどう解消したらいいのでしょう?

越境問題解消の原則となる「『動く側』が譲歩する」という考え方

越境問題の解消法自体は、きっと様々あると思います。

しかし実は、越境問題を解消しようとする場合、ある重要な1つ考え方が存在します。

そして不動産業者・建設業者・解体業者など、その越境問題を解消しようとする者の多くが、その考え方に基づいて解消法を見出だします。

その考え方は、民法などの法律からは一線を画す考え方です。

その考え方とは、「不動産を売り買いする側、建て替えたり解体したりする側に譲歩して頂き、越境問題を極力穏便に処理しましょう」というものです。

いわば、「『動く側』に譲歩して頂きましょう」とでも言うのでしょうか。

以下に便宜的に、この「動く側」という言葉と、その言葉と対を成す「動かない側」という言葉を用いて、具体例でご説明します。

今仮に、Aさんの敷地とXさんの敷地の境界に、越境物があるとします。

この度、Aさんがその不動産をBさんに売却することにしたとします。

この場合、「動く側」とはAさんもしくはBさんになります。

この場合、もし不動産業者がAとBの不動産売買に関与したら、一般的には「動く側」であるAさんもしくはBさんに譲歩して頂くかたちで、その越境問題を解消します。

越境物の所有者が「動く側」の場合の解消法は越境物の撤去

越境問題の具体的解消法は、越境物がAとXどちらの所有物かによって変わって参ります。

例えば、Aさん側に存在するAさんの所有物が、Xさん側に越境していたとします。

こういう場合、「『動く側』が譲歩する」という原則に基づくと、どういう解消法が適切でしょう?

それは一般的には、やはり越境物の撤去であろうと考えられます。

こういう場合不動産業者としては、AさんもしくはBさんの費用負担で、越境物を撤去して頂く方向で話を進めるのが一般的です。

越境物の所有者が「動かない側」の場合の解消法は覚書の取り交わし

また逆に、Xさん側に存在するXさんの所有物が、Aさん側に越境していたとします。

この場合もやはり、「動く側」であるAさんもしくはBさんに、譲歩して頂くようにします。

初回の申し入れにおいては、Xさんに越境物の撤去をお願いする場合もあると思います。

しかしそこで良い返答が得られなかった場合、一般的には無理強いはしません。

そこで用いられるのが覚書の取り交わしです。

Xさんに越境物の速やかな撤去をお願いするのでなく、「Xが将来建て替えなどをする際、越境物を撤去することとする」といった主旨の覚書を交わすことで解消します。

越境問題解消の原則が「『動く側』が譲歩する」とされる背景

実は法律テキには、相手の物がこちら側に越境していたら、こちらはその相手に、その越境物を撤去するよう請求することができます。

そしてその請求を受けた相手は、それを撤去しなければなりません。

にもかかわらず一般的に、「動かない側」の物が「動く側」に越境している場合には、越境物の速やかな撤去を請求することはあまりありません。

何故でしょう?

それはその後のご近所付き合いを考慮すると、「動かない側」に撤去を無理強いするのは得策でないと考えられるからです。

再び上記例で考えてみましょう。

元々AさんとXさんは、Xさんの物がAさん側に越境していながらも、その越境物を越境物として存在させたまま、永らくご近所付き合いを続けてきました。

しかしここに来て、AさんがBさんに不動産を売却することになり、越境問題がクローズアップされました。

AさんもしくはBさんは、法律を楯に強い強制力をもって、Xさんに越境物の撤去を申し入れました。

Xさんは意にそぐわないながらも、50万円を投じて越境物を撤去しました。

その後隣地にBさんが引っ越してきました。

いかがでしょう?

この場合Xさんは、Bさんのことを快く思わない可能性は、ありはしませんでしょうか?

越境問題が凝(しこ)りとなって、その後永らく続くであろうBさんとXさんとのご近所付き合いが、ギクシャクした状態からスタートすることになるかもしれません。

そもそも隣人がAさんからBさんに替わることで、Xさんの日常生活に何か大きな違いが生じる訳ではありません。

にもかかわらずXさんが50万円を支出するのは、やはり痛手であろうことが想像できます。

また越境には、今となっては確認できないような、隣人同士の様々な事情がその背景にある場合がありします。

例えば過去に、Xさんの親がAさんの親に越境を承諾してもらっていて、その変わりにAさんの親はXさんの親に、何か別のかたちで世話になっていた、などの場合です。

このようなことから、不動産取引の現場においては、越境問題については、不用意に法律を根拠に「動かない側」に無理を強いることは控え、「動く側」に譲歩を得て穏便に解消しようとするのが一般的なわけです。

この傾向は、越境問題を解消しようとする業者が建設業者や解体業者の場合も、一般的には同様であるようです。

越境物の所有者が「動く側」の場合、その撤去は売主と買主どちらがするべき?

上記において、自らの不動産を売却しようとするAさんの物が越境している場合には、Aさんもしくはその買主であるBさんによってその越境物を撤去し、隣人Xさんとの越境問題を解消するのが一般的、と申し上げました。

そしてその理由として、この場合の「動く側」がAさんもしくはBさんだから、と申し添えました。

ではこのAさんとBさんのうち、実際に費用を負担して越境物を撤去するのはどちらが好ましいでしょう?

売却依頼を承った不動産会社は、Aさんに撤去してから引渡すようご説明するべきでしょうか?

あるいは、買主による越境物の撤去を条件として売り出すよう、ご提案すべきでしょうか?

担当の不動産売買営業員としては、原則としては、やはり売主であるAさんに撤去して頂くよう申し入れるべき、と考えられます。

なぜなら仮に特約等で買主様による越境物の撤去を盛り込んだとしても、買主様が本当にそれを実施して頂けるどうかわからないからです。

越境物が建物の一部で、その建物が解体されることが明らかであったり、越境物が既存不適合要件に該当していたりして、それらを撤去是正しないと建築確認申請が通らないなどの場合でしたら、場合によっては買主様にお任せしても良いようです。

なぜならそれを撤去是正しなければ、金融機関から借り入れができない可能性があったりして、買主様も必然的に撤去しなければならない状況下にあるからです。

すなわち、「『動く側』が譲歩する」ことを原則とする越境問題の解消が、確実に履行されると考えられるからです。

しかしながら越境物を撤去しなくても、買主様に直接的な不利益が生じそうにない場合には、買主様が越境を放置してしまい、それがXさんとのトラブルに発展する恐れがあります。

このように、売買対象不動産の敷地内の物が向こう側に越境している場合には、買主様が撤去することに必然性が見出だせない以上は、原則売主様に撤去して頂くようにします。

なお売り出し物件に越境物がある場合、それ自体が物件のデメリットになります。

もし越境物の撤去を買主側に委ねて売り出す場合、それ自体がデメリットになり、買主が見つかり辛い可能性があることを、予め売主様に申し伝えるようにしましょう。

そして場合によっては、撤去相当額を減額して売り出すことを、提案してみましょう。

まとめ

いかがでしたか?

越境問題に直面した場合は、是正ここで言及した「『動く側』が譲歩する」という原則に基づいて、解消にあたってみてください。

以下にもう一度、内容を確認しておきます。

□越境問題を解消する際に原則とされる考え方

「『動く側』が譲歩する」

□越境の具体的解消法

・越境物の所有者が「動く側」→撤去

・越境物の所有者が「動かない側」→覚書

□越境物の所有者が「動く側」の場合、撤去するのは売主、それとも買主?

・原則→売主が撤去

・例外→買主の撤去に必要性がある場合、買主でも可

*撤去を買主とする場合、売主に売却し辛くなる旨要説明、場合によっては撤去費用相当額の減額も

この記事は以上となります。

この度も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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