【売買】市街化調整区域なのに家が建てられる!既存建築物の建替とは

「市街化調整区域なのに新しい家が建っている!なぜ?」そんな疑問を持ったことはありませんか?

実はこの記事を読めば、その答えがわかります。

この記事では、市街化調整区域でも例外的に建築物の建築ができるものの一つ、「既存建築物の建替」についてご説明します。

また、「既存建築物の建替」を役所に認めてもらうのに必要な根拠資料についても言及します。

この記事を読み終えると、市街化調整区域の「既存建築物の建替」について理解できます。

これまで、不動産売買の仲介の経験がお有りでない方にとっては、「即実践!」というふうにはいかないとは思います。

市街化調整区域の宅地取引は、やはりハードルは高いです。

しかしながら、来るべき「実践の時」を見据え、この機会に押さえておくことは間違いなく有益なことです!

では、どうぞ。

目次

そもそも市街化調整区域とは

ご存じの方も多いと思いますが、まず最初に「市街化調整区域」の定義から確認しておきましょう。

「市街化調整区域」とは、市街化を抑制している区域のことです。

市街化を抑制しているので、原則として建築物の建築はできません。

対となる、既に市街化を形成している区域、もしくはおおよそ10年以内に市街化を図る区域である、「市街化区域」とセットで理解している方も多いと思います。

ここで、もう少しだけ踏み込んでみましょう!

不動産売買のみならず賃貸でも、よく耳にする「市街化区域」と「市街化調整区域」ですが、これらは一体、何がどう分類されて区分けされているのでしょう?

その分類とは、下記の通りです。

都市計画区域と都市計画区域外

まず日本の国土は、都市計画区域と都市計画区域外に分類されます。

「日本の国土」
=「都市計画区域」+「都市計画区域外」

線引きされた区域と非線引き区域

次に都市計画区域は、線引きされた区域と非線引き区域に分類されます。

「都市計画区域」
=「線引きされた区域」+「非線引き区域」

市街化区域と市街化調整区域

さらに線引きされた区域は、市街化区域と市街化調整区域に分類されるのです。

「線引きされた区域」
=「市街化区域」+「市街化調整区域」

【市街化調整区域】

このように市街化調整区域とは、都市計画の分類において、都市計画区域の中の、線引きされた区域の中に存在しているのです。

【市街化区域】

なお参考までですが、市街化区域のほうには、第一種低層住居専用地域その他計13に分類される、用途地域が存在します。市街化調整区域には存在しません。

「市街化区域」
=「第一種低層住居専用地域」+「第二種低層住居専用地域」+「田園住居地域」+「第一種中高層住居専用地域」+「第二種中高層住居専用地域」+「第一種住居地域」+「第二種住居地域」+「準住居地域」+「近隣商業地域」+「商業地域」+「準工業地域」+「工業地域」+「工業専用地域」

市街化調整区域の例外

不動産売買仲介を何度か経験すると、「ここは第一種低層住居専用地域だから戸建が建ち並んでいるんだな」とか、「商業地域だからビルばかり建っているんだな」など、実務を通じて得た知識を元に、街並みを見るようになるかと思います。

そんな中で、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域を見て、「あれ?建築はできないはずなのに、なぜ新築戸建ての建築工事がされてるの?」と、疑問をお持ちになることが、きっとあると思います。

確かに、レインズ等の物件情報サイトでも、市街化調整区域なのに「建築可」となっている売土地情報があったりします。

実は市街化調整区域であっても、例外的に建築可能な場合があります。

例としては、下記のような物です。

・農家住宅や農業用倉庫
・図書館や公民館
・既存建築物の建替
・その他

(注)

市街化調整区域での建築についての相談・確認窓口は、地方自治体の都市計画課等になります。

これらが建築可能かどうかは、地方自治体によって異なる場合があります。

売却依頼を受け、売主様側仲介で市街化調整区域の土地をお預かりする場合は、実際に建築可能かどうか、必ず確認するようにしましょう。

市街化調整区域における「既存建築物の建替(たてかえ)」とは

先に挙げた、市街化調整区域でも例外的に建築が可能なもの中で、不動産売買仲介で比較的身近なのが、「既存建築物の建替」です。

「既存建築物の建替」とは、一体どういうものなのでしょう?

先にザックリ申しますと、「以前家が建っていた土地にまた家を建てる」ことです。

たとえ市街化調整区域であっても、以前家が建っていた土地にだったら、また家を建てても良い、ということです。

ただ、これだとあまりにも漠然とし過ぎですよね。

もっと具体的にするために、「既存建築物の建替」を「既存建築物」と「建替」に分解して、細かく見ていきみましょう。

市街化調整区域における「既存建築物の建替」の、「既存建築物」とは

先に結論を申します。

ここで言う「既存建築物」とは、「線引きの日をまたいで現に存在していた建築物」のことを言います。

「線引き」とは、都市計画の分類の項でも出てきましたが、「この線を境にこちら側が市街化区域、あちら側が市街化調整区域」というふうに、市街化区域と市街化調整を区分けすることを言います。

そして、このような区分けがされた日、それが「線引きの日」になります。

そして重要なのが「またいで」です。

「線引きの日をまたいで」とは、線引きの日の「前」と「後」ということです。

しかし、ただの「前」と「後」では駄目で、「前」から「後」にかけて、継続していることが条件です。

したがって例えば、下記のケースは「線引きの日をまたいで」に該当しません。

・ずっと以前から建っていたけど、線引きの日の前には取り壊された。

・線引きの日の後に建てられ、今でも存続している。

・ずっと以前から存続していたけど、線引きの日の直前に取り壊され、線引きの日の直後に再び建てられた。

「線引きの日をまたいで」とは、あくまでも、線引きの日の前には既に建っていて、線引きの日も、そして線引きの日以降も継続して、同じ建築物が存在していた、という場合に限られます。

市街化調整区域における「既存建築物の建替」の、「建替」とは

ここで言う「建替」とは、同一の用途で同様の規模・構造の建築物を建築することをいいます。

ですから例えば、既存建築物が木造二階建てで、述べ床面100平米の住宅だったら、「建替」と言えるのは、木造二階建てもしくは一階建てで、述べ床面積100平米以内の住宅に限られます。

「既存建築物の建替」とは

以上見てきた「既存建築物」と「建替」をまとめて、改めて「既存建築物の建替」について確認します。

下記の通りになります。

「線引きの日の前から建っていて、線引きの日も、そして線引きの日の後も、継続して存在していた建築物と、同一の用途で同様の規模・構造の建築物」

(注)

市街化調整区域における既存建築物の建替についての相談・確認窓口は、地方自治体の都市計画課等になります。

既存建築物の建替は、地方自治体によっては認められていない可能性もあるようです。

また、認められている場合であっても、述べ床面積の制限が異なったり、用途が「専用住宅」のみに限定されたり等、詳細は地方自治体によって様々なようです。

売却依頼を受け、売主様側仲介で市街化調整区域の土地をお預かりする場合には、これらについて、地方自治体の都市計画課等にしっかり確認しましょう。

「既存建築物の建替」の根拠資料について

例えば、ある方から、親から相続した市街化調整区域の土地を売却してほしいと依頼を受けたとします。

依頼主様がおっしゃるには、以前自分の父親がここに家を建てて住んでいたので、この土地には家が建つはずだ、とおっしゃったとします。

しかし依頼主様は、その根拠となるような資料、例えば建物謄本や当時の写真などはお持ちでなかったとします。

役所はそれなりの根拠が無いと、既存建築物の建替を認めてくれません。

さてこういう場合、私たち宅建業者は、どうやってその根拠を示したらいいのでしょう?

以下に見ていきましょう!

「閉鎖謄本」を取得

建物が取り壊されたなどで、かつてあった建物謄本が閉鎖された場合、法務局でその閉鎖謄本を取得できる場合があります。

謄本には原則として、その建物の所有者、取得年月日、用途、述べ床面積が記されています。

また、取り壊し年月日が記されている場合もあります。

そして、その閉鎖謄本の、取得年月日、取り壊し年月日に着目します。

線引きの日は予め地方自治体の都市計画等で確認しておきます。

そして、取得年月日が線引きの日の前で、かつ取り壊し年月日が後になっていたら、地方自治体に「既存建築物」であることを認めてもらえる可能性が高いです。

国土地理院の航空写真を取得

国の機関に、国土地理院という国土交通省の特別な機関があります。

そこのホームページで、対象となる土地の、過去の航空写真を閲覧できます。

そのページで、対象となる土地上の、以下の2枚の航空写真を閲覧します。

①.取得年月日後で、かつ線引きの日より前の日付の航空写真

②.線引きの日より後の日付の航空写真

この2枚の航空写真で、同一の建築物が確認できたら、国土地理院で示された購入申込み手順にしたがって、「撮影年月日証明付き航空写真」2枚の購入申込みを行います。

すると目的の航空写真が、一週間から10日程度で本院から郵送で届きます。

その航空写真を、閉鎖謄本の附帯根拠資料として提出することで、地方自治体に「既存建築物」であることを認めてもらえる可能性が高まります。

なお、購入費用は、1枚あたり数千円掛かり、売却ご依頼主様にとっても、想定外の出費になる場合があります。

ご依頼主様には、予め、その点をしっかりご説明しておきましょう。

また、ホームページの航空写真で存在確認ができれば幸いですが、写真によっては解像度が粗すぎて、決め手を欠く場合があります。

その場合は、最寄り国土地理院の支所に直接赴いてみましょう。

最寄りの支所では、国土地理院本院が扱っている解像度の高い、より鮮明な航空写真が閲覧できます。

その航空写真であれば、建物の存在を明らかに出来る可能性が高まります。

◯地方自治体の担当窓口(都市計画課等)への根拠資料の提出

「閉鎖謄本」及び「撮影年月日証明付き航空写真」2枚が取得できたら、地方自治体の担当窓口(都市計画課等)に提出します。

なお、それら根拠資料と一緒に、現況写真、現地を示した地図、字図の添付も求められると思います。

一緒に準備しておきましょう。

あとは回答を待つだけです。

自治体によっては、回答までにある程度の日数を要する場合もあるようです。

気長に待ちましょう!

(注)

この記事では、都市計画法における開発許可制度の詳細については言及しておりません。

また、この記事で言う「建築物の建築ができる場合」とは、開発許可及び建築許可を要しない場合を指します。

まとめ

いかがでしたか?

市街化調整区域案件は、最初は少しとっつきにくいですが、これを機に是非「既存建築物の建替」は押さえてしまいましょう!

最後にもう一度内容を確認しておきます。

□国土に市街化調整区域の立ち位置

「日本の国土」
=「都市計画区域」+「都市計画区域外」

「都市計画区域」
=「線引きされた区域」+「非線引き区域」

「線引きされた区域」
=「市街化区域」+「市街化調整区域」

□市街化調整区域でも建築可能な(開発許可及び建築許可を要しない)もの

・農家住宅や農業用倉庫
・図書館や公民館
・既存建築物の建替
・その他

□「既存建築物の建替」とは

線引きの日の前から建っていて、線引きの日も、そして線引きの日の後も継続して存在していた建築物と、同一の用途で同様の規模・構造の建築物

□「既存建築物の建替」の根拠資料

・閉鎖謄本
・航空写真(撮影年月日証明付き)
・その他

この記事は以上です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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