【売買】位置指定道路(建築基準法第42条1項5号)を押さえよう!

建築基準法の道路には、第42条1項1号以外にも、いろいろあるのをご存じですか?

この記事では、道路調査で1項1号道路の次によく登場する、位置指定道路(建築基準法42条1項5号)についてご説明します。

位置指定道路は、売買初心者の方がいきなり扱うには、ちよっとハードルは高めです。

まずはしっかりと、理解することから始めましょう!

そして機会があったら、是非独自調査をなさってみてください。やり終えた項には、きっと「不動産売買のプロ」に一歩近づいています!

では、どうぞ。

目次

道路調査の基本的な手順

お客様から物件の売却依頼を承るなどして物件調査をする場合、その物件の前面通路が建築基準法の道路かどうか(道路調査)がとても重要です。

道路調査の基本手順は下記の通りです。

1.市役所(町村役場)の道路管理(路政)課で、道路法の道路かどうか確認する。

2.市役所(町村役場)の道路管理(路政)課で、幅員が4メートル以上かどうか確認する。

3.市役所(町村役場)の建築指導課で、建築基準法における道路判定をしてもらう。

1項1号道路と位置指定道路

もし道路管理(路政)課で、道路法の道路であり、かつ幅員4メートル以上であると確認できたら、特別な事情がない限り、建築指導課で1項1号と判定されます。

では、道路法の道路でないと確認できた場合には、建築指導課はどういう判定をするのでしょう。

ちなみに道路法の道路でないということは、道路台帳に記載が無いということです。したがって、幅員も確認できません。

この場合建築指導課は、建築指導課独自の記録を元にその通路(つうろ)を判定します。

そして、そういう場合の判定結果として比較的多いのが、位置指定道路です。

位置指定道路の定義

ここで一度、位置指定道路とはどういう道路か確認しておきましょう。

位置指定道路とは、「特定行政庁から位置の指定を受けた私道」のことを言います。

1項1号道路が、建築基準法第42条1項1号で定められているのに対し、位置指定道路は同じ第42条1項の5号で定められています。

なお「特定行政庁」とは、市町村長あるいは都道府県知事のことです。

「特定行政庁から位置の指定を受けた私道」と言われても、よく解らないですよね。

この意味は、位置指定道路でないもの(私有地の通路だったり、私有地の空地だったり)が、どういう経緯を経て位置指定道路になったのかを辿ってみると、ピンと来ます!

それは例えば、以下のような経緯です。

位置指定道路ができるまでの経緯

よくあるケースを2つ見てみましょう!

互いに私有地の一部を出し合って位置指定道路とするケース

建築基準法施行以前に、ある場所にA、B、C、D4軒の家が隣接して建っていたとします。

Aは北西側、Bは北東側、Cは南西側、Dは南東側に建っており、CとDの南側に、幅員4メートル以上の県道が通っていたとします。

CとDはそのまま県道に出れましたが、AとBは、Cの敷地の東側の一部とDの敷地の西側の一部を通らせて貰わないと、その県道に出ることができなかったとします。

ABCDの4人は、幸い関係も良好で、今までトラブルもありませんでした。

やがて建築基準法が施行され、代替わりもする時期になったので、AとCの敷地の東側の一部、BとDの敷地の西側の一部を、それぞれ同じ面積づつ差し出し、そこをしっかり施工して通路にすることにしました。

通路として使用し始めて数年後、4人は市に、その通路を位置指定道路にしてほしいと相談しました。

市の回答では、位置指定道路にするには何ヵ所か工事が必要とのことでした。4人は費用を同額づつ出し合い工事を実施しました。

その後、この通路は市によって、無事に位置指定道路に指定されました。

広い敷地を分割して家を建てる時に位置指定道路を設けるケース

ある建設会社が、南側が1項1号に接する広めの土地を購入しました。建設会社はその土地の北西側にa、北東側にb、南西側にc、南東側にdの4軒の家を建築して販売することにしました。

cとdは南側が1項1号道路に接し、接道義務を満たします。しかしaとbは、普通に敷地分割しただけでは、接道義務を満たせません。

そこで建設会社は、aとcの東側及びbとdの西側に通路を接地し、南側の1項1号道路に繋げました。

その通路は、市から無事に位置指定道路の指定を受けることができました。

aとbは、有効に建築基準法の道路に接する運びとなりました。

(注)

このケースでの位置指定道路の所有者は、主に下記の3つが想定されます。

1.建設会社自らが所有する。
2.abcdが持分4分の1づつ共有する。
3.4分割し、隣接する部分をabcdがそれぞれ所有する。

位置指定道路が私道である場合の重要事項説明について

上記のとおり位置指定道路は、もともとは道路でない私有地であったわけです。

そしてこのことは、位置指定道路に指定されたからといって、基本的に変わることはありません。

基本的には、位置指定道路は指定された後も私有地であり私道である、ということです。

私有地であり私道であるということは、「その土地の所有者」と「その土地を接道とする土地の所有者」とのあいだに、約束ごとが成立している、ということです。

そしてその約束ごとには、位置指定道路共通の事項もあれば、その位置指定道路固有の特別な事項もあったりします。

私たち宅建業者が、私道の位置指定道路を接道とする土地を仲介する場合には、まずはしっかりと、その所有者を確認し、その情報を重要事項説明書に盛り込む必要があります。

そしてもし所有者とのあいだに、何か特別な約束事項があったら、それらもしっかりと記入し、説明する必要があります。

また私道の位置指定道路は、現況をしっかり調査することが大切です。

現況をしっかり調査し、予め想定されるリスクやデメリットを、やはり重要事項説明書に盛り込んで説明する必要があります。

これは非常に難しいです。

どんなベテランの方であっても、将来起こるリスクやデメリットのすべてを洗い出すことは不可能だと言えます。

したがって私たち宅建業者は、想定し得る限りのリスクやデメリットを重要事項説明書に記載して説明しつつも、それらですべてではないこと、場合によっては記載に無いことも起こる可能性があることを、書き添えてご説明する必要がるのです。

私道の位置指定道路を接道とする土地の売買価格

売却しようとしている土地の接道が、私道の位置指定道路である場合、実はそれ自体がデメリットになってしまいます。

設定価格も、接道が私道ということで低めとなるケースが多いです。

宅地の価値は、接道が公道か私道かに大きく左右されるということです。

位置指定道路が私道である場合の注意点

以下に、私道の位置指定道路に想定されるリスクやデメリットを記載します。なお記載は、それらリスクやデメリットの一部です。

位置指定道路の通行権に関すること

位置指定道路は、その道路に依存する建築物が接道義務を満たす目的で指定されます。

よって、その道路に依存する人々の通行権については、関係ないと言えば関係ないです。

中には、通行料を支払うことで通行できるという位置指定道路もあるようです。

扱う土地が私道の位置指定道路に接道する場合は、その通行権についてもしっかり確認しましょう。

位置指定道路の補修や整備に関すること

道路は工作物である以上、劣化によってやがて補修等が必要になることが想定されます。

もし道路端に側溝が備わっていたら、そこにゴミも溜ます。

それらの補修や整備を、買主様が担わなければならない場合があります。

また、担い手が買主様以外の方だった場合、担う方が義務などをしっかり履行するタイプの方だったら良いですが、そうではない可能性があります。

そうでない方だった場合、買主様が何か不利益を被るかもしれないリスクがあります。

扱うが私道の位置指定道路に接道する場合は、補修や整備を誰が担うことになっているか、しっかり確認する必要があります。

位置指定道路の埋設配管に関すること

位置指定道路は、地中に上水道管や下水道管などが埋設されている場合があります。

その場合、それら埋設配管の所有者は誰か、また、それらの維持管理をしなければならないのは誰か、しっかり確認する必要があります。

(注)

これら以外にも、私道の位置指定道路特有のリスクやデメリットは多々想定されると思います。また調査時点で想定し得なかったことが、将来起こる可能性もあります。

位置指定道路が公道であるケース

位置指定道路によっては、所有権が市町村になっているものがあります。

これはどういうことでしょう。

その主な事例としては、当初は私道だったものの、その後所有者全員が市町村に相談し、市町村に移管された場合などです。

市町村は、相談を受けた位置指定道路を調査し、一定の基準が満たされていると判断して譲り受けます。

所有者一同から市町村に無償譲与されるのが一般的です。

この場合、所有者は市町村になるわけですから「公道」になります。

維持管理義務も市町村に移ります。

位置指定道路であっても公道であれば、上記のようなリスクやデメリットを考慮する必要は無くなります。

なお、市町村による位置指定道路の引き受け度合いは、市町村によって様々なようです。

積極的に引き受けている市町村もあれば、ハードルが高い市町村もあるようです。

売買経験一年未満の方が私道の位置指定道路を扱う件

以上見てきたように、私道の位置指定道路は、不動産の取引対象として扱うのは、経験を有しない方にとっては非常に難易度が高いです。

売買取引の経験が一年未満で、不動産調査の経験がそこまでお有りでない場合は、扱うことは見送りましょう。

ただし独自調査は、是非なさってみてください。

その機会に、是非とも模擬体験を積んでおいて、来るべき本番取引に備えておきましょう!

まとめ

いかがでしたか?

最後にもう一度内容を確認しておきましょう。

□位置指定道路の定義

「特定行政庁から位置指定を受けた私道」

□位置指定道路が出来るまでの事例

1.互いに私有地の一部を出し合って位置指定道路とする

2.広い敷地を分割して家を建てる時に位置指定道路を設ける

□私道の位置指定道路の注意点・重要事項説明

所有者/特別な取り決め事項/通行権/舗装・側溝等の維持管理義務/埋設配管等の所有権・維持管理義務/その他想定し得る限りのリスクやデメリット/これら以外にも起こる可能性がある旨

□位置指定道路に接道する土地の価格

公道か私道かで価格に違いあり

□公道の位置指定道路

市町村に移管

□私道の位置指定道路を扱う件

難度は高い。経験を有しない場合は一旦見送り、まずは取引の模擬体験から。

この記事は以上です。

この度も、最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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