不動産売買営業のお客様方の中には、住宅資金を調達したり土地を取得したりするのに、親御様等から支援を受ける方がいらっしゃいますよね。
そういうお客様方の計画に、場合によっては贈与が潜んでいるかもしれません。
この記事では、お客様に贈与を受けたつもりがなくても贈与とみなされ、申告が必要となる場合5つをご紹介します。
是非この5つを押さえ、お客様方の計画に贈与があったらそれらをしっかり抽出していきましょう!
では、どうぞ。
お客様の住宅資金の調達や土地取得の計画に、贈与がないか確認すべき理由
私たち宅建業従業者の多くは、日常的に住宅を取得しようとするお客様と接しますよね。
そしてお客様方の中には、親御様をはじめとする御親族様方から、様々な支援を受ける予定の方もいらっしゃると思います。
そういう場合私たち宅建業従業者は、お客様方の資金調達計画や土地取得計画に注意深く耳を傾ける必要があります。
なぜならその計画の一部ないし全部に、贈与が潜んでいる場合があるからです。
そしてその贈与が一定額以上の場合、贈与税という税金が課税されることになるからです。
贈与税そのものの仕組みや計算方法は、下記の記事をご確認ください。
もちろんお客様ご本人が、贈与をしっかり認識し、すでに税理士さん等にご相談済でしたら心配ありません。
しかし大抵の場合贈与については、以下の2つの原因から問題になる場合があります。
1.お客様方がご自身の計画の中に、贈与があるにもかかわらず、それを認識していない。
2.お客様が想定していた贈与税額よりも、遥かに高額な贈与税が課されてしまう。
私たち宅建業従業者は、お客様の資金調達、土地取得の計画に贈与が潜んでないか、まずは注意深く確認しましょう。
そして贈与とみなされそうな要因が見つかったら、まずは速やかに「お客様、それは贈与にあたるかもしれません」とお伝えしましょう。
私たち宅建業従業者は、贈与税そのものの具体的説明は、難しくてなかなかできないでしょうし、そもそもすべきでないとされています。
しかしお客様の計画に無自覚の贈与が入っていたらそれを抽出し、お客様に気付きを持って頂くようガイドすることはできると思います。
是非そこをめざしましょう!
贈与でないようで、贈与とみなされる場合5つ
以下にお客様が住宅資金を調達したり、土地を取得しようとしする際に、直接的な贈与でないけど贈与とみなされる場合5つをご紹介します。
最初の4つは重要なので、是非覚えましょう。
5つ目は扱うケース自体が少ないと思いますので、余裕があったら覚えましょう。
住宅ローンの返済を親に肩代わりしてもらった場合
あるお客様が、ご自分名義で住宅ローンを組んで、住宅を購入しようとしているとします。
詳しい計画をうかがったところ、その住宅ローンの月々の返済はご自分がされるものの、毎月親御様から返済額に相当する額を送金してもらう予定だったとします。
住宅購入を検討しているお客様の計画がもしこのようだったら、贈与税が発生する可能性があることを、すぐに申し伝えましょう。
そしてお客様自ら、税務署や税理士さんにご相談所頂くようご誘導しましょう。
この場合、実施的には親御様がお客様の住宅ローンを肩代わりしていることになり、贈与があったものとみなされる可能性があります。
場合によっては特例等により、お客様への課税が非課税になったり、先送りされたりするかもしれません。
仮にそういう場合であっても、「それでしたら非課税になりますよ」等のコメントは控え、税制のプロにお任せするようにしましょう。
親名義の土地を自分名義に変更し、そこに住宅を建てた場合
以下のケースは宅建業の免許を持つ業者様の中でも、とりわけハウスメーカー様や工務店様に起こり安いケースかと思います。
住宅を建てようとしているお客様に、「土地はもう見つかりましたか?」とうかがったところ、「親の土地に建てる予定です」とお答えになったとします。
この場合お客様の計画が、贈与に当たる場合があります。
お客様が「親の土地」の権利関係を、どう処理するかがポイントです。
この場合考えられる権利関係は、以下の3つです。
1.親御様の土地を使用貸借し、そこにご自分の家を建てる。→土地所有者は親御様のまま。
2.親御様の土地に借地権を設定し、そこにご自分の家を建てる。→土地所有者は親御様のまま。
3.親御様の土地の名義をご自分に変更し、そこに家を建てる。→土地所有者はご自分に移転。
もうお分かりですよね。
3の場合、もし金銭の授受を伴わず名義をご自分に変更したら、その土地は親からご自分に贈与されたものとみなされ、申告が必要になり、贈与税の課税対象となります。
もしお客様の計画がこのようでしたら、贈与の可能性があることをお伝えし、税務署や税理士さんに速やかにご相談頂くよう、ご誘導しましょう。
なお土地の取得費を親御様に月払いで返済する約束をし、最初の数年間は約束通り返済するも、途中からその返済を免除されたとします。
その場合、免除された部分がやはり贈与とみなされます。
親等から住宅用地を相場よりも著しく安い価格で購入した場合
以下もやはりハウスメーカー様や工務店様に起こり安いケースです。
住宅を建てようとしているお客様に、やはり「土地はもう見つかりましたか?」とうかがったとします。
するとお客様は、「親戚の土地が空いているのでそこを購入する予定です」とお答えになったとします。
この場合、その購入予定価格が相場相当額だったら特に問題ありません。
ところが相場よりも著しく安価だったら、気を付けなければなりません。
相場と購入予定価格との差額分が贈与とみなされ、申告が必要になり、贈与税が課税される可能性があるからです。
もしお客様の土地取得予定がこのようでしたら、まずは取得予定額をうかがいましょう。
そして相場よりも著しく安価でしたら、贈与とみなされる場合があることをお伝えし、税務署や税理士さん等にご相談頂くよう申し伝えましょう。
夫婦共有名義で住宅を取得し、実際の負担割合と異なる持分で登記した場合
例えばあるご夫婦が、3000万円の住宅を取得したとします。
支払いは、価格3000万円に対し奥様が頭金1000万を入れ、残り2000万円をご主人が住宅ローンを組んだとします。
この場合ご主人は3分の2、奥様は3分の1の持分で登記するのが通例です。
しかしお客様方の意向で、持分2分の1づつで登記したとします。
こういう場合、ご主人から奥様に500万円の贈与があったとみなされ、奥様はその贈与を申告し、贈与税を納税しなければならない場合があります。
もし対応中のお客様がご夫婦共有名義にされる予定の場合、実際の負担割合と異なる持分で登記すると、贈与とみなされる場合があることをしっかりお伝えしましょう。
そして場合によっては、税務署や税理士さん等にご相談頂くよう、申し伝えましょう。
「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出しなかった場合
以下は住宅の購入ではありませんが、贈与に関し私たち宅建業従事者が知っておくと良いと思われる内容です。
とは言え実際に扱うのは、極めて希だと思います。
余裕がある方だけ、お読み頂けたらと思います。
AさんはBさんから土地を借り、その土地上に自ら所有する家を建て、住んでいたとします。
この場合、AさんとBさんの間には賃貸借が成立していて、Bさん所有のこの土地には、Aさんを借地権者とする借地権が設定されていることになります。
やがて年月が経過し、Aさんの息子がBさんからその土地を買い取ったとします。
このことで以後Aさんは、Bさんに土地賃料を支払う必要がなくなりました。
また新たな土地所有者となったAさんの息子も、Aさんに賃料を求めなかったとします。
さてこの場合、当初備わっていた賃貸借、及びAさんの借地権はどうなってしまうのでしょう?
実はこの場合、賃貸借は使用貸借に変わり、Aさんの賃借権は、新たな土地所有者であるAさんの息子に贈与されたとみなされます。
実は税制では、賃借権も贈与対象になるとされています。
そこで登場するのが「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」という書面です。
この申出書は、新たな土地所有者が賃料を求めないからといって、使用貸借に変わったわけではなく、賃貸借は継続してます、よって賃借人の賃借権も変更ないです、ということを申し出る書面です。
実は民法では、使用貸借と賃料0円の賃貸借を区別しています。
そして税法も、この民法の原則に則るとされています。
この書面を税務署に提出することで、使用貸借でなく、Aさんを賃借人、Aさんの息子を賃貸人とする、賃料0円の賃貸借であること、よってAさんが賃借権者である点に変更はないことを申し出ることになります。
この申し出により、贈与税は課税されなくなります。
お客様の計画に贈与があった場合の、私たち宅建業従業者の対応法
以上見て参りました通り、お客様の住宅資金の調達計画、土地取得の計画には、お客様の意図しない贈与が潜んでいる場合があります。
私たち宅建業従業者は贈与税に対するアンテナをしっかり張り、お客様のお話に注意深く耳を傾けるようにしましょう。
そしてもし「あっ、これは贈与に当たるかも」という要因が見つかったら、まずはそのことをお客様にしっかりお伝えしましょう。
そしてお客様自ら、税務署や税理士さん等にご相談頂くよう申し伝えましょう。
私たち宅建業従業者は、贈与税の中身についての安易な発言は控え、詳しくは税制のプロにお任せするようにしましょう!
まとめ
いかがでしたか?
住宅を取得しようとするお客様が無自覚に贈与を受けていないかどうか、日頃から注意を払って参りましょう!
以下にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□贈与でないようで、贈与とみなされる場合5つ
・住宅ローンの返済を親に肩代わりしてもらった場合
・親名義の土地を自分名義に変更し、そこに住宅を建てた場合
・親等から住宅用地を相場よりも著しく安い価格で購入した場合
・夫婦共有名義で住宅を取得し、実際の負担割合と異なる持分で登記した場合
・「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出しなかった場合
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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