【不動産】贈与税の計算方法と、軽減や先送りできる特例等3つを説明

不動産の売買仲介に携わっていると、頭金を親御様から負担して頂く予定のお客様などから、贈与税について聞かれたりしませんか?

こういう場合、基本的にはお客様に直接税務署や税理士さんにご確認頂くようお話すれば大丈夫です。

でも担当者として、何も贈与税のことを何も分かってないのも不安ですよね!

この記事では贈与税とその計算方法について、不動産売買営業初心者の方向けにわかりやすくご説明します。

併せて、贈与税が軽減もしくは非課税になったり、納税時期が先送りできる特例等例についてもご説明します。

この記事を読めば、贈与税の基本が押さえられますよ!

では、どうぞ。

目次

贈与税とその計算方法について

贈与税とは

ある年の1月1日から12月31日までの1年間に、AさんがBさんから財産をもらった(無償で譲る受けた)とします。

この時、もらった側のBさんには税金が課税されます。

この税金を、贈与税と言います。

なお生活費、教育費、ご祝儀、お見舞金等は、税制における贈与には当たらないとされています。

よって贈与税は、課税されません。

例えば、大学生が親御様から仕送りしてもらう生活費には、贈与税は課税されません。

贈与税の計算式

贈与税の税額は、以下の計算式で計算します。

贈与税額=

(贈与額 -基礎控除額)×税率- 控除額

以下にこの計算式に出てくる「贈与額」、「基礎控除額」、「税率」と「控除額」について、少し詳しく見ていきましょう。

「贈与額」について

その年の1月1日から12月31日までの1年間に、AさんがBさんから財産をもらったとます。

そしてそれらすべてが現金だったとします。

この場合、「贈与額」は至ってシンプルです。

それらもらった現金の合計額が、そのまま「贈与額」になります。

ところがこれが不動産の場合、「贈与税」の算出は難解になります。

不動産の贈与額は、その不動産の評価額を用います。

加えて土地と建物で、用いる評価額が異なります。

土地には路線価(=相続税路線価)を、建物には固定資産税評価額(=固定資産税路線価)を用います。

確認の手順としては、まず固定資産税の納税通知書、ないし市町村役場の税務課発行の評価証明書から、土地と建物それぞれの、固定資産税評価額を確認します。

建物は、そのまま記載額が贈与額になります。

また土地の贈与額は路線価を用いますので、記載の土地固定資産税評価額を7で割り、更に8を掛けます。

土地の贈与額

=土地の固定資産税評価額÷7×8

この方法で算出された額が、その土地の贈与額の目安になります。

このようにして確認できた建物の評価額と土地の評価額との合計が、その不動産の「贈与額」の目安になります。

あくまで目安である点に注意しましょう。

またもらった財産が土地のみで、かつその土地に路線価が定められていたら、国税庁ホームページの路線価図から、「贈与額」の目安を求めることもできます。

ただしこの方法で得られた贈与額も、あくまで目安である点に注意しましょう。

そしてもしお客様から、不動産の贈与額についてたずねられたら、固定資産税の納税通知書もしくは評価証明書をお手元にご用意頂き、直接税務署等にお問い合わせ頂くよう、ご誘導しましょう。

「基礎控除額」について

贈与税の計算における基礎控除額とは、贈与税の計算に際し、真っ先に贈与額から差し引く額のことです。

額は110万円です。

「税率」と「控除額」について

最後に贈与税の計算式の中の、「税率」と「控除額」について見ていきます。

「税率」と「控除額」は、与える側ともらう側との関係によって、「一般贈与財産の税率」と「特例贈与財産の税率」に分かれます。

下記の通りです。

【一般贈与財産の税率(通常税率)】

与える側ともらう側の関係が、後述する特例贈与財産に当たらない場合、一般贈与財産の税率を使用します。

例えば兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合がこれに当たります。

下記の表の通りです。

(*左から「基礎控除後の課税価格」・「税率」・「控除額」の順です。)

200万円以下 :10%/なし

300万円以下:15%/10万円

400万円以下:20%/25万円

600万円以下:30%/65万円

1,000万円以下:40%/125万円

1,500万円以下:45%/175万円

3,000万円以下:50%/250万円

3,000万円超:55%/400万円

例えばある方が兄から、贈与額1800万円の不動産を贈与されたとします。

すると計算式は下記の通りとなります。

(1800万円-110万円)×50%-250万円=595万円

贈与税額は595万円になります。

計算は、先に贈与額1800万円から基礎控除額110万円を引き、その後に税率50%を掛けます。

順序を間違えないようにしましょう。

【特例贈与財産の税率(優遇税率)】

一方、与える側ともらう側の関係が親と子、ないし祖父母と孫の場合、特例贈与財産の税率を用います。

なお特例贈与財産の税率が使えるのは、もらう側が贈与された年の1月1日時点で20歳以上の場合に限ります。

下記の表の通りです。

(*左から「基礎控除後の課税価格」・「税率」・「控除額」の順です。)

200万円以下 :10%/なし

300万円以下:15%/10万円

400万円以下:20%/30万円

600万円以下:30%/90万円

1,000万円以下:40%/190万円

1,500万円以下:45%/265万円

3,000万円以下:50%/415万円

3,000万円超:55%/640万円

例えばある方が祖母から、贈与額1800万円の不動産を贈与されたとします。

すると計算式は下記の通りとなります。

(1800万円-110万円)×50%-415万円=430万円

贈与税額は430万円になります。

贈与税を減額・先送りできる特例等3つ

贈与税には贈与税額を減額できたり、納税時期を先送りできる特例や特別控除があります。

またそれらを活用することで、非課税になる場合もあります。

以下に順番に見ていきましょう。

(注)

・この記事は、2021年11月時点の内容に基づくものです。

・この記事は、2021年12月31日までとされる「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」については、記載しておりません。

贈与税の相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、財産をもらった時には贈与税を納めないでおき、相続した時に一括して精算できる特例のことです。

いわば、贈与税納税の先送りが可能な制度です。

例えばある方が父親からA万円贈与され、相続時精算課税制度を利用したとします。

贈与時の贈与税は0円になり、A万円に対する納税は先送りされます。

数年後その父親が亡くなり、B万円を相続することになったとします。

この時この方は、贈与時に先送りしたA万円と、相続したB万円の合計額に対する税額を、相続税として納税することになります。

A万円に対する納税が消滅したわけではない点に、注意しましょう。

なおこの制度の贈与額の上限は2500万円です。

また利用できるのは、以下の4つの条件を満たす場合に限られます。

(相続時精算課税制度の利用条件4つ)

1.親から子、祖父母から孫への贈与であること。

2.親ないし祖父母が、贈与があった年の1月1日時点で60歳以上であること。

3.子ないし孫が、贈与があった年の1月1日時点で20歳以上であること。

4.贈与があった翌年の2月1日から3月15日の間に、税務署に申告すること。

また注意点が1つあります。

(相続時精算課税制度の注意点1つ)

1.暦年贈与制度と併用できない。

暦年贈与

これまで見てきた通り、贈与税の計算は、贈与額から基礎控除額110万円を差し引くことからスタートします。

したがってその年の贈与額が110万円以下だったら、贈与税はかからないことになります。

暦年贈与とは、贈与税のこのような仕組みを利用し、財産を年間110万円以下づつ複数年に渡って移していき、結果として大きな財産を移すことを言います。

ただしこの手法には、注意が必要なようです。

もしお客様から歴年贈与についてたずねられたら、必ず税理士さん等専門家の助言を得るようご誘導しましょう。

というのも、当人が歴年贈与のつもりでそれを行っても、税務署から定期贈与とみなされる場合があるようだからです。

定期贈与とは、予め決まった時期に決まった金額を贈与することを定め、その通りに贈与すること、とされています。

定期贈与とみなされると、移した財産一括に贈与税が課税されます。

例えば贈与契約書等に、「1100万円を毎年110万円づつ10年間にわたって贈与する」と記載したとします。

契約書のこのような記載は、定期贈与とみなされる可能性が極めて高いとされています。

そして1100万円の定期贈与とみなされると、贈与額1100万円に対し贈与税が課税されることになります。

なお歴年贈与は不動産でも可能とされています。

不動産の場合、持分をA→AB共有→Bといふうに、徐々に移していくことになります。

したがって登記費用等様々な経費が発生します。

不動産の歴年贈与は、想定される経費の額を考慮したうえで、実施するかどうかを判断するのが望ましいとされています。

(歴年贈与の注意点3つ)

・定期贈与とみなされる恐れあり。税理士さん等専門家の助言を得て実施するのが望ましい。

・移す財産が不動産の場合、諸経費が相当額発生する。

・相続時精算課税制度制度と併用できない。

贈与税の配偶者控除制度

贈与税の配偶者控除とは、居住用不動産の取得資金を配偶者に贈与するときに使える特例のことで、通称おしどり贈与と呼ばれるものです。

控除額の上限は2000万円です。

なおこの特例は、110万円の基礎控除と併用可能ですので、最大2110万円まで控除できることのになります。

この特例を利用するための条件は、以下の4つです。

(配偶者控除制度の利用条件4つ)

1.夫婦の婚姻期間が20年以上であること。

2.贈与された財産が、 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること。

3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始し、その後も引き続き住む見込みであること。

4.贈与があった翌年の2月1日から3月15日の間に、税務署に申告すること。

まとめ

いかがでしたか?

今後もし贈与を伴うお客様がいらっしゃったら、是非参考にして頂けたらと思います。

最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。

□贈与税の計算式

贈与税額=

(贈与額 -基礎控除額)×税率- 控除額

□贈与税の計算における「贈与額」

・土地→路線価(=相続税路線価)

・建物→固定資産税評価額(=固定資産税路線価)

□贈与税の計算における「基礎控除額」

真っ先に贈与額から差し引く110万円

□贈与税の計算における「税率」と「 控除額」

・一般贈与財産の税率(通常税率)

・特例贈与財産の税率(優遇税率)

□贈与税の特例及び特別控除

相続時精算課税制度/歴年贈与/配偶者控除制度

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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