「スケルトン渡し」が出発点!店舗や事務所など事業用賃貸の捉え方

住居賃貸から店舗や事務所などの事業用賃貸に移ってくると、「えっ、こんなボロボロ状態で引渡してクレームにならないの?」と、心配になることはありませんか?

もしかしたらその引渡しは、スケルトン渡しと同じ型(かた)かもしれません。

この記事では、貸店舗・貸事務所など事業用建物賃貸における引渡しの主要な型(かた)をご紹介し、内装付き物件なのに、スケルトン渡しと同じ型(かた)の場合があることをご説明します。

この記事を読めば、店舗や事務所など事業用賃貸が今まで以上に扱い易くなりますよ!

では早速参りましょう。

目次

不動産の建物賃貸における「スケルトン」とは

まず最初にスケルトンの意味からです。

スケルトンには、本来様々な意味があるようですが、建築や不動産の分野で用いられる時は、「躯体」・「骨組み」という意味になります。

内装が無く、コンクリート(木造だったら木)がむき出しの、躯体だけの状態のことです。

スケルトンに施される物

物件はスケルトンのままでは使えません。

その上に、壁・床・天井や、トイレ・水回りなどが施され、初めて使えるようになります。

そしてこれらスケルトンに施される物には、様々な呼び方があります。

内装、設備、動産、造作物、備品、設置物などです。

この記事では、「内装」に統一しますね!

貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)の引渡しの型(かた)の種類

貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)には、実に様々な種類の引渡しがありますよね。

でもそれを整理すると、次の3つの型(かた)に集約できます。

1.スケルトン渡し

賃貸人が賃借人に、スケルトンの状態で物件を引渡すことです。

2.スケルトン+内装(賃貸人所有)

スケルトンに内装が付いた状態で引渡すことです。

ポイントは、内装の所有者が賃貸人である点です。

スケルトンと内装が一体となって貸し出される物件です。

一般的な住居賃貸がこの型ですね!

3.スケルトン+内装(賃借人所有)

スケルトンに内装が付いている点は、上記2と同じです。

しかしその内装の所有者が、賃借人である点が異なります。

賃借人の内装付き物件の引渡しが、スケルトン渡しと同じ型である理由

さてここで、上記1、2、3を改めて注意深く見ていきます。

それぞれの、賃貸借の対象となっている物は何でしょう?

賃貸借の対象となっている物とは、賃貸人の物を、賃借人が賃料を払って使わせてもらっている物ということです。

順番に見ていきましょう。

「1.スケルトン渡し」では、賃貸借の対象となっている物はスケルトン、すなわち躯体ですよね。

そもそも引渡し対象となるものがスケルトンしかありません。

次に「2.スケルトン+内装(賃貸人所有)」はどうでしょう?

2はスケルトンと内装の両方です。

2の内装の所有者は賃貸人ですよね。

賃借人は賃貸人に賃料を払って、スケルトンと一緒に内装も使わせてもらいます。

では「3.スケルトン+内装(賃借人所有)」はどうでしょう?

実は3も、賃貸借の対象となっている物はスケルトン、躯体のみです。

3の場合、付いている内装は賃借人の物ですよね。

賃貸人に賃料を払って使わせてもらっている物ではありません。

したがって賃貸借の対象となっている物ではありません。

もう一度整理します。

それぞれの型(かた)で賃貸借の対象となっている物は、下記の通りです。

1.スケルトン
2.スケルトン+内装
3.スケルトン

もうお分かり頂けましたかね!

賃貸借の対象となっている物に着目すると、実は1と3はスケルトンのみです。

スケルトンに内装が付いて引渡しても、その内装が賃借人の所有物だったら、賃貸人はスケルトンしか貸し出しません。

このように3つの引渡しの型(かた)のうち、実は1と3は同じ型(かた)なのです。

そして貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)では、スケルトンに付いた内装が賃貸人の物なのか賃借人の物なのか、言い換えれば、賃貸借の対象となる物なのかそうでないのかを見極められれば、実体を捉え易くなるんです!

とは言え、このように概念だけ示されてもピンと来ませんよね!

以下に幾つか具体例を集めました。

一緒に見ていきましょう。

スケルトン渡しと同じ型(かた)の、内装付き物件の引渡し例

賃貸人が内装を無償譲渡

スケルトンを賃貸借の対象として引渡すと同時に、付いている内装を賃貸人が賃借人に無償譲渡するケースです。

冒頭の例のような、美麗とは言い難い(言葉は適切ではありませんがボロボロの)外観で引渡されるケースが多いです。

特約に、賃借中の内装の維持管理は賃借人が担う旨が記載されていたりします。

賃借人の多くは、一部の継続利用できそうな物を除いて、自らの費用負担で内装をやり換えます。

原則はスケルトン戻しですが、賃貸人の承諾が得られる場合に限り、買取請求しないことを条件に残置が認められたり、居抜き募集が許されたりします。

居抜き(前賃借人が内装を有償譲渡)

賃貸人がスケルトンを賃貸借の対象として引渡すと同時に、付いている内装を、前の賃借人が新たな賃借人に有償で譲渡するケースです。

これがいわゆる居抜きです。

賃貸人が貸し出しているのは、あくまでスケルトンのみです。

新たな賃借人は引渡しを受けた後、賃貸借の対象となる物(スケルトン)に付いている内装を自ら所有することになります。

ここで注意したいのが明渡しです。

繰り返しになってしまいますが、賃貸人が貸し出しているのはスケルトンのみです。

したがって原則は、スケルトン戻しです。

居抜き募集できるのは、賃貸人が承諾した場合に限られます。

賃貸人が前賃借人から引き継いだ内装を、新たな賃借人に無償譲渡

スケルトンを賃貸借の対象として引渡すと同時に、前賃借人から引き継いだ内装を賃借人に無償譲渡するケースです。

前賃借人は当初居抜で募集していましたが、希望者が現れなかったなどの理由から断念し、賃貸人の承諾を得て内装を残置したケースなどがこれに該当します。

前賃借人の残置を承諾して明渡しに応じた時点で、内装の所有権は前賃借人から賃貸人に移ると解するのが一般的です。

新たな賃借人は、スケルトンの引渡しを受けると同時に、そこに付いた内装を所有することになります。

まとめ

いかがでしたか?

貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)は内装が付いていても、その多くがスケルトン渡しと同じ引渡しの型(かた)であることがお分かり頂けたでしょうか?

貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)は、慣れるのが一番です!

そして慣れるには、やはり引渡しの型(かた)を覚えてしまうと良いと思います。

よろしければ是非折に触れ、この記事を読み返して頂けたらと思います。

最後にもう一度、内容を確認しておきましょう!

□貸店舗・貸事務所(=事業用建物賃貸)の3つの型(かた)

1.スケルトン渡し
2.スケルトン+内装(賃貸人所有)
3.スケルトン+内装(賃借人所有)

□上記3つの賃貸借の対象物

1.スケルトン
2.スケルトン+内装
3.スケルトン

*賃貸借の対象物に着目→1と3は同じ

□具体例

・賃貸人が内装を無償譲渡
・居抜き(前賃借人が内装を有償譲渡)
・前賃借人から引き継いだ内装の無償譲渡

この記事は以上となります!

最後までお読み頂き、ありがとうごさいました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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