【不動産】消費者契約法について住居賃貸営業員が知っておきたいこと

不動産会社で住居賃貸営業をやっていく上で、借地借家法や民法、宅建業法以外に、是非とも押さえておきたい法律があります。

消費者契約法です。

実は不動産の住居賃貸契約は、そのほとんどが消費者契約法の対象になります!

この記事では、消費者契約法について、不動産の住居賃貸営業員の方々向けにご説明します。

早速参りましょう!

目次

不動産の住居賃貸契約が、ほぼ消費者契約法の対象になる理由

消費者契約法とは、かみくだいて申しますと、事業者と個人(消費者)間の契約において、事業者による不当な行為から、個人(消費者)を守るための法律です。

事業者が個人(消費者)に対してウソ等をついて契約させたり、個人(消費者)に不利な条項を盛り込んで契約させることのないよう、様々な規程が設けられています。

そして様々なタイプの不動産契約の中でも、特に消費者契約法の対象となる率が高いのが、実は住居賃貸です(新築の住居売買もですが、この記事では割愛します)。

それには2つの理由が考えられます。

まず1つは、住居賃貸の借主が、ほとんど個人(消費者)だからです。

この点は経験的にご理解頂けると思いますが、住居賃貸の契約は、まれに法人契約もありますが、大抵は個人契約だと思います。

理由の2つ目は、住居賃貸の貸主が、ほぼ事業者に当たるとされているからです。

そもそも建物賃貸物件の所有者は、法人名義が多いですが、実は個人名義であっても、事業者と判断される傾向にあります。

消費者契約法には、「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人」も、事業者として扱うことになっています。

自ら所有する物件を貸し出して賃料を得る行為は、消費者契約法で事業とみなされる傾向にあり、個人名義の所有者であっても、事業者と判断されるわけです。

以上のことから、不動産の住居賃貸のほとんどが、消費者契約法の対象と言えるわけです。

さらに2つ!消費者契約法に関し、不動産賃貸営業員が気をつけたいこと

ここまで、不動産の住居賃貸のほとんどが、消費者契約法の対象になることがお分かり頂けたかと思います。

でも、まだ他にもあります。

不動産会社の従業者が、個人(消費者)のお客様と関わる場合、消費者契約法を意識する必要がある理由が、あと2つあります。

これらは住居賃貸に限ったことではありませんが、とても大切なことなので、この記事でも共有してみたいと思います!

その2つとは、下記の通りです。

不動産業者が個人(消費者)を仲介すると、消費者契約法の対象になる

不動産の契約で消費者契約法の対象たなるのは、何も賃貸借契約、売買契約だけではありません。

媒介契約も対象になります。

不動産賃貸においては、不動産業者とお客様とのあいだで、「私のお部屋探しは○○不動産に一任します」といった趣旨の書面は、通常は取り交わしませんよね。

そこにはいわば、暗黙の了解のようなものがあるだけで、不動産賃貸の営業員は、その了解に基づいて仲介(媒介)させて頂いていると思います。

実はこの了解も、消費者契約法の対象となります。

不動産の住居賃貸の営業員が、お客様にウソなどをついてその了解を取り付けたら、その行為は消費者契約法において、アウトです。

「あの物件は当社しか仲介できないんですよ」などとウソを付いて確約を取り付けたりしたら、アウトです。

もっともこの場合、消費者契約法云々以前の問題でしょうが…。

不動産の仲介(媒介)は、お客様が個人(消費者)の方だったら、消費者契約法の対象となります。

【重要】事業者側仲介の不動産業者の行為は、契約に直接影響する

不動産の住居賃貸営業員が、個人(消費者)のお客様を接客する上で、消費者契約法に関し最も重要なことを、下記にご説明します。

実は不動産業者が、事業者と個人(消費者)との賃貸に事業者側仲介として携わる場合、その不動産業者の行為は、その賃貸契約自体に直接影響を与えます。

何を申してるか、わかりづらいですよね。

例えば、お部屋を借りようとする個人(消費者)のお客様が、貸主側の仲介業者のウソによってうっかり契約書にサインしてしまったとします。

この場合、事業者である貸主(賃貸人)様が特にウソなどついてなくても、お客様は契約を取り消せます。

実は消費者契約法では、事業者から契約を託された第三者の不当な行為は、事業者本人による不当な行為として扱われることになっているんです。

繰り返しになりますが、不動産の住居賃貸なおいては大抵の場合、貸主が事業者で借主が個人(消費者)でしたよね。

この場合、事業者から契約を託された第三者とは、貸主側の仲介業者になります。

貸主様ご本人がウソ等ついてなくても、貸主様側の仲介業者がウソ等をついて、それによって借主様が契約してしまってら、借主様は契約を取り消せます。

物元(貸主側仲介)側の仲介業者、特に注意をしなければなりません。

なおこのことは、いわゆる両手(両直)を担う場合についても当てはまります。

過去の判例等に見る、消費者契約法と不動産住居賃貸

ここまでで、不動産の住居賃貸契約が、いかに消費者契約法と密接に関係しているか、お分かり頂けたと思います。

このような消費者契約法ですが、実際には、不動産の住居賃貸で、どういうふうに用いられるのでしょう?

以下に、不動産の住居の賃貸借契約について、消費者契約法が取り上げられた判例を見ていきます。

また消費者契約法の規程そのものの中で、不動産の住居賃貸に直接関係してくる内容も見ていきます。

少し難しいですが、住居賃貸と消費者契約法の関係について、もう1歩だけ、理解を深めましょう。

敷引特約と消費者契約法

不動産賃貸借契約において、賃借人の退去時に返還されるべき敷金等から、一定の金額を差し引く、いわゆる敷引について、過去に裁判で争われた経緯があるようです。

その裁判では、敷引の金額が、賃料の2倍ないし3.5倍強にとどまっていて、更新料のほかは礼金等他の一時金は支払わなくてよいことになっているので、この敷引特約は、消費者契約法違反にはない、と決しました。

この判決は、不動産の住居賃貸において、引を設定するうえでの1つの目安であるようです。

住居賃貸における敷引の額は、賃料の2倍ないし3.5倍までに留めておくのが望ましいようです。

それ以上になると、消費者契約法によって、それを超える部分が無効となる場合があり得るようです。

更新料特約と消費者契約法

賃貸借契約の更新の際に、賃借人から賃貸人に支払われる更新料についても、これまで裁判で争われた経緯があるようです。

過去の判例によれば、賃料3万8000円で、契約期間を1年とする共同住宅の賃貸において、更新時の更新料を賃料2ヶ月分とする特約が、消費者契約法違反でなく、有効になっているようです。

とは言え、不動産の住居賃貸の現場営業員の方々にとっては、2年更新で更新料1ヶ月といのが、相場観としてあるようです。

更新料の上限を見極めるには、今後の判例をもう少し見ていく必要がありそうですが、多くの宅建業者が、1年更新で賃料の1ヶ月相当を限度とし、それよりも借主に不利な更新特約は、敬遠しているようです。

借主の賃料支払い滞納と消費者契約法

借主が賃料を1ヶ月滞納しただけで、催告なく解除できるとする条項が、消費者契約法によって無効となった判例があるようです。

なお一般的な賃貸借契約書の雛形は、2ヶ月の滞納があったら、催告して解除できるとなっていると思います。

契約書雛形のこの条項については、不用意に変更するのは控えたほうが良さそうです。

借主への破産宣告、強制執行、銀行取引停止、刑事事件等と消費者契約法

借主が破産の宣告、強制執行、銀行取引停止、刑事事件などその他著しく社会的信用を失墜したときに、貸主が「直ちに契約解除できる」とする条項が、消費者契約法によって無効となった経緯があるようです。

貸主を事業者、借主を消費者とするおおかたの住居賃貸においては、そのような場合であっても、まず貸主から催告があり、その上で解除できるようにする必要があるようです。

原状回復と消費者契約法

借主が借りていたお部屋から退去するときに、自然損耗および通常の使用による損耗について、原状回復する義務を負うとした条項が、消費者契約法によって無効となった経緯があるようです。

なお現在(2022年4月)の国土交通省原状回復ガイドラインにおいては、そもそも「自然損耗および通常の使用による損耗」は、原状回復としておらず、原状回復を、下記のように定義しています。

「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

したがって、「自然損耗および通常の使用による損耗」は、不動産の住居賃貸なおいては、もはや原状回復ではないようです。

不動産の住居賃貸の現場では、原状回復については、この原則に則る必要がありそうです。

借主の後見開始と消費者契約法

消費者契約法においては、個人(消費者)が後見開始等の審判を受けたことのみを理由に、事業者が契約解除できる内容の条項は、無効とされています。

これは過去の判決などでなく、消費者契約法そのものの規程です。

不動産賃貸においては、事業者である貸主が、消費者である借主の後見開始のみを理由に、賃貸契約を解除できる条項を設けたら、その条項は消費者契約法によって無効になります。

借主の賃料納付遅滞の損害額と消費者契約法

消費者契約法では、遅滞損害額について、年利14.6%を超える部分を無効としています。

不動産賃貸について言えば、借主が賃料の納付を遅滞した場合の損害額を設定する場合、年利14.6%以内に設定する必要があります。

遅滞損害金の額が年利14.6%を超えていたら、超える部分は無効になります。

まとめ

いかがでしたか?

不動産の住居賃貸では、他の関連法令と同様に、消費者契約法もとても重要であることをしっかり押さえ、日々の取消をより安全性の高いものとして参りましょう!

最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。

□不動産の住居賃貸契約が、消費者契約法の対象率が高い理由

・借主のほとんどが個人(消費者)

・貸主のほとんどが事業者

*消費者契約法では「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人」も事業者

□不動産業者が個人(消費者)を仲介→消費者契約法の対象

□事業者側の仲介業者の行為→事業者の行為として扱われる

□判例等と消費者契約法

・敷引:賃料の2倍ないし3.5倍までに留めておくのが望ましい

・更新料:1年で2ヶ月分を有効とする判例あるも、相場観としては、1年で1ヶ月より貸主が有利となるのは敬遠する傾向あり

・借主の賃料支払い滞納:1ヶ月滞納無催告解除は無効の判例あり

*雛形は2ヶ月催告解除が主流

・借主への破産宣告、強制執行、銀行取引停止、刑事事件等:無催告解除を無効とする判例あり

・原状回復:「自然損耗および通常の使用による損耗」の回復義務を無効とする判例あり

*国土交通省原状回復ガイドラインに則るべき

・借主の後見開始:後見開始等の審判のみを理由に契約解除できる内容は消費者契約法違反

・借主の賃料納付遅滞の損害額:年利14.6%を超えは違反

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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