【不動産】建物賃貸借契約の更新と、更新後の契約期間の関係について

不動産会社で住居賃貸など、建物賃貸借に携わっていると、ほとんどの契約が更新できることになっていますよね。

この更新、実は合意更新と法定更新というのがあるのをご存じですか?

また場合によっては、自動更新という言葉を使う場合もあります。

合意更新に法定更新に自動更新、何がどう違うのでしょう?

この記事では、不動産の建物賃貸借契約の更新について、その種類についてご説明と併せ、更新後の契約期間についてもご説明します。

この記事を読めば、建物賃貸借の更新のことが分かるようになりますよ!

では、どうぞ。

目次

建物賃貸借契約の更新、及び更新後の契約期間

不動産の建物賃貸借契約の更新には、どういう更新があるのでしょう?

そしてそれら更新の、更新後の契約期間はどうなるのでしょう?

結論から申します。

建物賃貸借契約の更新には、合意更新と法定更新があります。

そして合意更新後の契約期間は、従前の契約期間と同じになる場合と、「期間の定めなし」になる場合があります。

また法定更新後の契約期間は、必ず「期間の定めなし」になります。

以下、順番に詳しく見ていきましょう。

【前提1】建物賃貸で更新が関係してくるのは「期間の定めあり」の普通借家契約だけ

建物賃貸借契約の更新と更新後の契約期間について詳しく見ていく前に、前提として知っておかなければならないことがあります。

まず建物賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約があります。

そして普通借家契約には、「期間の定めあり」と「期間の定めなし」があります。

これら建物賃貸借契約のうち、更新という観念が当てはまるのは「期間の定めあり」の普通借家契約だけです。

定期借家契約、及び「期間の定めなし」の普通借家契約には、契約の更新という観念は当てはまりません。

【前提2】更新後の契約期間は「期間の定めなし」になる

更新後の契約期間は、特段の定めが無い限り「期間の定めなし」になります。

このことは、借地借家法で決められています。

第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

e-Govポータル 『デジタル庁』

合意更新と法定更新

さてここから、本題に入ります。

冒頭で述べたように、建物賃貸借契約の更新には、合意更新と自動更新があります。

以下にそれぞれ、少し詳しめに見ていきます。

合意更新とは

「期間の定めあり」の建物賃貸借契約は、賃貸人と賃借人双方が合意すれば更新することができます。

このような合意による更新を、合意更新と言います。

合意更新には、以下の2つのケースがあります。

1つ目は、契約期間満了時に賃貸人と賃借人双方が協議し、「更新しまょう」と合意する場合です。

2つ目は契約締結時に、特約等に自動的に更新する旨の条項(=自動更新条項)を盛り込んだ契約書で締結した場合です。

ただしこれらの場合、ただ協議によって合意しただけ、あるいはただ条項に「自動的に更新となる」とあっただけでは、更新後の契約期間は「期間の定めなし」になります。

更新後の契約期間を従前の期間と同じにするためには、それぞれ下記のような手続きを経る必要があります。

まず1つ目の協議による合意では、「契約期間は最初と同じにしましょう」というふうに、期間まで合意しておく、ということです。

また2つ目の自動更新条項による合意では、「期間も従前と同じにする」というふうに、やはり期間の合意まで盛り込んでおく、ということです。

期間も従前と同じにする旨も盛り込んだ自動更新条項とは、例えば下記のような条項です。

【例1】

「期間満了の1か月前までに契約を終了させる旨の通知をしないときは、契約は○年間更新されるものとし、以後も同様とする」

【例2】

「期間満了の30日前までに解約の申入れがない場合は、賃料や期間等従前と同一条件にて自動的に更新するものとする」

要するに、協議による合意であれ自動更新条項による合意であれ、更新後の契約期間を従前と同じにするためには、その旨をしっかり協議ないし条項に入れておく必要がある、ということです。

冒頭で合意更新後の契約期間が、従前の期間と同じになる場合と「期間の定めなし」になる場合があると申し上げたのは、このことです。

法定更新とは

「期間の定めあり」の建物賃貸借契約では、賃貸人の更新拒絶に正当事由が認められる場合を除き、賃貸人が更新に合意しなくても、借地借家法によって更新になります。

いわば法(借地借家法)の定めによって更新になる、というわけです。

これを法定更新と言います。

(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
(*「3の建物の転貸借がされている場合」は省略します。)

e-Govポータル 『デジタル庁』

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

e-Govポータル 『デジタル庁』

法定更新のポイントは下記の通りです。

・賃貸人もしくは賃借人が、期間満了の1年から6ヶ月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは法定更新となる。

・通知をしても、期間満了後も賃借人が住み続け、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったとき
は法定更新となる。

そしてこれら法定更新は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。

ただし契約期間についてだけは、従前と同一でなく「期間の定めなし」になります。

したがって仮にその契約に、「期間も従前と同じにする」旨を盛り込んだ自動更新条項が設けられていたとしても、賃貸人が更新を拒絶した場合、なおも賃借人が住み続けたり、更新拒絶に正当事由が認められなかったら法定更新になります。

仮にこの契約に更新料が設定されていたら、このような経緯で法定更新となったら、以後更新料は必然的に発生しなくなります。

国土交通省の賃貸住居標準契約書による契約締結と更新

国土交通省の監修による、賃貸住居標準契約書には、更新に関する下記のような条文が設けられています。

「甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。」

賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版『国土交通省』

またこの条文は、全国の宅建業者の8割を占めるとされる、全国宅地建物取引業協会連合会の定型建物賃貸借契約書にも採用されています。

そこでもし、更新に関する特約を何ら設けないままこの契約書で締結し、その後更新になった場合、その更新は合意更新と法定更新のどちらになるでしょう?

この場合も、法定更新になると解されるようです。

上記の条文では、更新に予め合意したとはならない、ということでしょう。

ただ一方で、地域や会社によっては、合意更新とする場合もあるようです。

悩ましところですが、いづれにしても更新後の契約期間が「期間の定めなし」になる点は、相違ありません。

したがってもし、この契約書を用いて更新料を設定する場合は、期間も従前と同じにする旨を盛り込んだ自動更新条項も、しっかり設けておく必要があります。

自動更新とは

建物賃貸借の取引の現場では、合意更新と法定更新という言葉に加え、自動更新という言葉も用いると思います。

自動更新とは、どういう意味でしょう。

自動更新という言葉は、法律の専門家の方々が用いる正しい用いり方がある一方で、一部異なる用いり方もされています。

以下の通りです。

自動更新とは合意更新のうちの1つ

上述の通り、合意更新には2つのケースがあり、そのうちの1つが自動的に更新する旨を盛り込んだ条項(=自動更新条項)による合意更新でした。

自動更新とは、この自動更新条項による合意更新のことを言います。

すなわち自動更新とは、合意更新のうちの1つであるわけです。

したがって自動更新後の契約期間が、従前と同じになるか「期間の定めなし」になるかは、条項次第です。

期間も従前と同じにする旨が盛り込まれた自動更新条項だったら、更新後の契約期間は従前と同じになります。

盛り込まれていなかったら、「期間の定めなし」になります。

ただし実務においては、期間も従前と同じにする旨を盛り込んだ自動更新条項である場合が多いです。

なぜならこの条項を設ける主な理由は、更新料を継続的に発生させることである場合が多く、その為には、期間も従前と同じにする旨を盛り込んだ自動更新条項を設けなければならないからです。

自動更新を法定更新、ないし更新そのものとする用いり方

しかしながら地域や会社においては、法定更新が法の定めに基づいて「自動的」に更新となることから、自動更新=法定更新として用いる場合もあるようです。

更には、合意更新であれ法定更新であれ、建物賃貸借契約においては、賃借人が拒まなければ更新になることから、更新そのものを自動更新とする用いり方もあるようです。

悩ましいですね!

したがって私たち宅建業従業者は、これら多様な用いられ方が想定される場面で、とりわけ更新料を伴う建物賃貸借契約の場面では、その自動更新という言葉が、どういう意味合いで用いられているか、しっかり汲み取る必要がありそうです。

「法定更新や合意更新を問わず更新料が発生する」とする特約の有効性

ここまで建物賃貸借契約の更新と、更新後の契約期間との関係について見て参りました。

そして法定更新においては、更新後の契約期間は必然的に「期間の定めなし」になり、以後更新という観念が成立しなくなると申しました。

したがって繰り返しになりますが、法定更新後は、更新料というものが成立しなくなると捉えるのが一般的です。

ところが実務においては、下記のような法定更新後の更新料の発生を明記している特約を、有効とする場合があるようです。

「賃借人は、合意更新、法定更新を問わず本契約更新時に、頭書の記載に従って更新料を賃貸人に支払うものとする」

またしても、悩ましいですね!

ただしこの特約に対する全国宅地建物取引業協会連合会の見解は、「無効」としないまでも、争われる可能性があり「注意」としています。

そしてこの見解は、これまでの裁判の判例に基づく見解であるようです。

果たして私たち現場の者としては、この特約にどう向き合えば良いのでしょう?

やはりポイントは、全国宅地建物取引業協会連合会の「争われれる可能性があり『注意』」という見解だと思います。

現場の者としては、従前の期間と同じにする旨を盛り込んだ自動更新条項を設けたうえで、更新料を設定するのが良いようです。

争いは避けたいものです。

「法定更新でも更新料を支払わなければならない」旨を前提とする上記特約は、やはり用いないほうが無難なようです。

まとめ

いかがでしたか?

賃貸のお部屋探しで「更新」という言葉は、その契約が定期借家でない限り、必ず関係します。

是非この機会に、建物賃貸借契約の更新と、更新後の契約期間との関係を、押さえてしまいましょう!

下記にこの記事の内容を、まとめておきます。

□更新の種類と更新後の契約期間

【合意更新】

・協議による合意+従前と同じ期間の合意もあり→従前と同じ期間

・協議による合意+従前と同じ期間の合意なし→「期間の定めなし」

・自動更新条項による合意+従前と同じ期間の盛り込みあり→従前と同じ期間

・自動更新条項による合意+従前と同じ期間の盛り込みなし→「期間の定めなし」

【法定更新】

「期間の定めなし」

□国土交通省の住居賃貸標準契約書、全宅連の定型契約書による建物賃貸借契約

更新に関し何ら特約を設けなかった場合、法定更新と解される(一部合意更新と解する場合あり)。

*いづれにしても更新後の契約期間は「期間の定めなし」

□自動更新

自動更新=自動更新条項に基づく合意更新

しかし現場では、自動更新=法定更新とする用いられ方あり。

*用いられ方の見極めが必要。

□「法定更新や合意更新を問わず更新料が発生する」とする特約の有効性

無効とまでは言えないまでも、争われれる可能性あり(全国宅地建物取引業協会連合会)。

*現場としては、本特約は用いないほうが無難。

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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