店舗・事務所など、不動産の事業用建物賃貸営業に携わっていると、居抜き物件を扱うこともあると思います。
実はこの居抜き物件、取り扱いに非常に気をつけなければならない場合があるのをご存じですか?
リースが使われている場合です。
この記事では、リースとはどういうものか、居抜き物件にリースが使われている場合、どういう点に気をつけなければならないのかについて、ご説明します。
今実際に、不動産賃貸営業で居抜き物件を扱っている方で、リースのことをまだよくご存じない方は、是非知っておいて頂きたい内容です。
ては、どうぞ。
居抜き物件におけるリースとは
まず居抜き物件とはどういうものか、確認しておきましょう。
居抜き物件とは、不動産の店舗・事務所等の事業用建物の賃貸の物件のことで、その建物不動産(主にスケルトン)に、内装や機器等の動産が付いている物件のことです。
居抜き物件の多くは飲食店舗です。
居抜き物件のことを宅建業者目線でご説明しますと、以下の2つが同時に行われる物件と言えます。
1.建物不動産(主にスケルトン部分)の賃借権が、前賃借人から新賃借人に移る物件。
2.前賃借人によって建物不動産に備え付けられた内装や機器等の動産の所有権が、譲渡人(=前賃借人)から譲受人(=新賃借人)に移る物件。
ここで着目したいのが、上記1と2のうちの、2のほうです。
前賃借人によって備え付けられた動産の所有権が、すべて間違いなく前賃借人にあれば、この1と2の移行は比較的スムーズに行われます。
しかし実はそれら動産の中には、前賃借人に所有権が無いものが含まれているケースが少なくありません。
そして前賃借人に所有権が無い動産こそが、リースによる動産なのです。
これらリース品の所有権は、前賃借人には無いのです。
リース品の所有権について
ではリースによって備え付けられたそれら動産の所有権は、誰にあるのでしょう?
その前にリースとはどういうものか、触れておきます。
リースとは、その機器を使おうとする者(ここでは前賃借人)が、それらを自らの費用で購入するのでなく、リース会社から借り受けることを言います。
それらを使おうとする者が、リース会社とリース契約に基づいてリース料を支払い、リース会社はそれらの機器を貸し出すわけです。
そのようなリース品の所有権は誰にあるのか?
もうお分かりですよね!
リース品の所有権は、リース会社にあります。
物件を賃りて店を出そうとする方が、リースを使う理由
自ら購入して所有権を得た動産は売却できます。
一方リース品は売却できません。
一見するとリースは、前賃借人には不都合な面が多いような印象を受けます。
にもかかわらず、リースは根強い人気があります。
なぜでしょう?
実はリースを使うと、金融機関からの借り入れとは別枠で、機器を調達することが可能になります。
今仮に、スケルトン物件を賃借し、新規でパン屋さんを開業しようとする方がいるとします。
その方はまだ実績が無いので、金融機関からの融資額も、制限されてしまったとします。
その方は、金融機関からの借り入れで業務用冷蔵庫、業務用冷凍庫、その他パン製造に必要な機器を購入しました。
しかしあと1点、業務用オーブンを備え付けなければなりません。
そこでその方は、リースを使って業務用オーブンを調達することにしました。
このようにリースは、機器購入費にこれ以上現金を充てるのは控えたい、かつこれ以上金融機関から借り入れするのも難しい、そういう場合に使われたりします。
また人によっては、できる限り多くの現金を手元に残しておくために、より戦略的にリースを使う方もいらっしゃいます。
このようにリースは、現金や融資とは別の機器調達手段として確立しているわけです。
居抜き物件にリースが使われている場合の対処法
では扱おうとする居抜き物件にリースが使われていた場合、仲介する宅建業者はどう対処すればいいのでしょう?
以下に見ていきましょう。
【重要】居抜き物件のリース処理は高難度、場合によっては手を引く選択も
以下、居抜き物件のリース品の処理についてご説明しますが、そのことについて、予め認識しておかなければならないことがあります。
それは、居抜き物件のリース処理は、場合によっては難易度が非常に高く、その処理を誤ってしまうと、大きなトラブルに発展する恐れがある、ということです。
したがってもしご自身が居抜き物件に携わってまだ日が浅い場合、その物件なリースが使われていることが分かったら、その案件は上司や先輩にお任せし、自らは手を引いたほうが良いケースが多いです。
そのことを前提に、以下を読み進めて頂けたらと思います。
残代金を一括精算してリース品を撤去
居抜き物件にリースが使われている場合、その処理方法として最も好ましいのは、残代金を一括精算してリース品を撤去して頂くことです。
もしリースが使われている居抜き物件に、譲渡人側の仲介業者として携わる場合には、お客様にそのようにして頂くよう申し入れましょう。
そして譲渡対象動産を、お客様の所有動産のみとして頂くようにしましょう。
ただしお客様によっては、後述する他の処理方法を望んでおり、一括精算による撤去に応じて頂けない場合もあります。
そういう場合、居抜き物件の仲介経験が乏しい方は、この案件からは手を引き、あとは経験豊富な上司や先輩にお任せすることをお勧めします。
このことは、譲受人側の仲介で携わる場合も同様です。
もしお客様が譲り受けようとする居抜き物件にリースが使われていたら、譲渡人にリース品の撤去を申し入れましょう。
そしてその申し入れに応じて頂けなかたり、譲り受けようとするお客様ご自身が、リース引き継ぎ(後述します)等をご希望の場合は、その案件からは手を引き、上司や先輩にお任せするようにしましょう。
譲渡人がリース品を買い取り、自らの所有とした上で譲受人に売却
次に好ましい方法は、前賃借人(譲渡人)が残代金等をリース会社に支払ってリース品を買い取り、所有権を獲得してしまう方法です。
リース品の所有権がリース会社から前賃借人(譲渡人)に移れば、その動産は自ら購入して備え付けた他の所有動産と同じ扱いになります。
前賃借人(譲渡人)の他の所有動産と同様に、リース会社から買い取ったその動産も譲渡対象動産に組み込んで売却することができます。
またリース品の買い取り相当額を売却価格に上乗せすることで、リース買い取りに要した費用を回収することができます。
ポイントは、前賃借人(譲渡人)が責任を持って、必ず引き渡し前に、前賃借人(譲渡人)自らの費用負担で、リース品を買い取って頂くことです。
宅建業者として譲渡人側の仲介に入った際、お客様によっては、まず先に所有動産を売り払い、その売却金でリース品を買い取りたいとおっしゃる方がいます。
しかし原則として、このご要望には応じないようにしましょう。
お客様がリース品の売却をご希望の場合、繰り返しになりますが、まず先に買い取り、所有権を得てからにして頂きましょう。
(注)
所有動産の売却金でリース品を買い取って所有権を獲得し、その後に売却するという手法は、リース会社と譲受人の承諾を得られれば遂行可能とされています。
しかしその手法は難易度が高く、リスクも伴うことから、居抜き物件の取り扱い経験の乏しい方は手を出すべきではないようです。
この記事では、この手法の詳細については割愛します。
譲受人によるリース引き継ぎ
居抜き物件にリースが使われている場合の他の対処法として、前賃借人(譲渡人)がリース会社と取り交わしているリース契約を、新賃借人(譲受人)が引き継ぐという手法があります。
ただしこの手法は、居抜き物件を扱った経験がまだ乏しい方には難易度が高いです。
居抜き物件の仲介に入った際、前賃借人(譲渡人)のお客様からリースを新賃借人(譲受人)に引き継いでもらいたいとの要望があったら、ご自身の経験が乏しい場合は手を引きましょう。
そして先輩や上司にお任せするようにしましょう。
なお新賃借人(譲受人)によるリース引き継ぎは、リース会社がそれを容認していることが前提となります。
リース会社によっては、またリース契約の内容によっては、リース引き継ぎが認められない場合があります。
またそもそも、前賃借人(譲渡人)がリース会社とリース契約を結べているのは、そのリース会社の審査を通過したからです。
したがって、やはり新賃借人(譲受人)もリース会社の審査を通過しなければ、リースを引き継ぐことはできません。
まとめ
いかがでしたか?
居抜き物件にリースが使われている場合、その取り扱いには十分注意する必要がありことが、お分かり頂けたと思います。
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□リースとは
リース会社にリース料を支払って動産を借り受けること。
□リース品の所有権
リース品の所有権は、それをリースしているリース会社にある。前賃貸人(譲渡人)には無い。
□居抜き物件のリース品の処理方法
・残代金の一括精算による撤去
・残代金の一括精算による買い取り(所有権の取得)
・新賃借人(譲受人)へのリース引き継ぎ
*居抜き物件の扱い経験が乏しい場合、難易度が高い処理法からは手を引くべき
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント