不動産の売買営業員として、電柱がある住宅用地等を扱っている時に、お客様から「この電柱、移動できますか?」と聞かれ、慌てた経験はありませんか?
その敷地内あるいは前面道路にある電柱って、移動してもらえるものなのでしょうか?
また移動してもらえるとすれば、それはどういうふうにすればいいのでしょう?
この記事では、電柱やその支線を移動する場合の手順について、不動産売買営業初心者の方向けにわかりやすくご説明します。
加えて、移動する場合の費用や、電柱敷地料というものについて、更にはカーブミラー、道路標識、防犯灯についてもご説明します。
早速、参りましょう!
電柱や支線の移動は管理者(電力会社またはNTT)に問い合わせる
不動産の売買営業に携わっていると、その敷地内や前面道路に電柱や支線がある物件って、ありますよね。
そして慣れないと、その電柱や支線の扱いが大変そうに思え、調査するのをついつい後回しにしてしまい、そんな折にお客様から「この電柱、移動できますか?」とか聞かれてしまったりして…。
果たして電柱や支線のことって、どこに聞けばいいでしょう?
実は、それはとてもシンプルです。
それらを管理している会社に聞けばOKです。
管理している会社とは、主に電力会社またはNTTになります。
電柱本体を注意深く見てみると、その表面に、その電柱の識別を表す会社名やそのマーク(○○電力とかNTT、またはそのマーク)や、記号が記されているプレートが付いていたりします。
それらを便りに、管轄の電力会社、またはNTTに問い合わせます。
ただし場合によっては、手掛かりにのるものが見つけられない電柱もあります。
そういう場合、まずは電力会社に電話して、所在地を告げて特定してもらいます。
電柱や支線の調査は、慣れないうちは「電柱の件は別の部署になります」とか、電力会社の電柱と思って電話したら「その電柱はNTTさんのモノです」と言われたりするかもしれません。
最初のうちは手こずるかもしれませんが、電力会社、ないしNTTの電柱担当部署の問い合わせ先が明らかになったら、その電話番号を社用携帯に登録してしまいましょう!
後がラクです!
なお細めの電柱で、電力会社管理でもNTT管理でもないものが稀にあります。
その場合大抵は、その敷地の所有者の私物だったりします。
例えば大きな敷地の奥のほうに家があり、その家に電線を介して電気を供給する際に、引き込みの出発点から家までのあいだに設けられた電柱などです。
そのような電柱は、大抵の場合、土地所有者様が、私物であることを認識している場合が多いです。
所有者様に聞いてみましょう。
防犯灯・カーブミラー・道路標識に関する問い合わせ先について
本筋からそれますが、せっかくなので、電柱や支線以外で、問い合わせを要する場合があるものについて、言及しておきます。
防犯灯の問い合わせ先
移動したいと思われる電柱に、防犯灯というものが付いている場合があります。
防犯灯とは、それこそ電柱に取り付けられている、主に細長い形状の電灯のことです。
そして防犯灯の管理者は、実は電力会社でもNTTでもありません。
町内会になります。
その電柱が移動させると、その電柱に付いている防犯灯も移動することになります。
したがって電柱そのものの移動について、防犯灯の管理者である町内会にも確認する必要があります。
その町内会の町内会長への申し入れは、大抵の場合、その電柱管理者側がしてくれます。
また場合によっては、申請者側がする必要があることもあるようです。
カーブミラーの問い合わせ先
物件によっては、前面道路に設置されているカーブミラーを移動したくなったりします。
この場合の問い合わせ先は、道路調査と似ています。
まずは、各道路を管理する道路管理者、国道であれば最寄りの国道事務所、都道府県道であれば都道府県庁、市町村道であれば市役所や町村役場の道路維持管理課に問い合わせます。
場合によっては、「そのカーブミラーでしたら町内会長に聞いてください」と言われ、町内会長の連絡先を教えられたりします。
そういう場合は町内会長に相談し、その結果を役所に報告するかたちになります。
道路標識の問い合わせ先
物件によっては、もはやあまり機能していないと思われる道路標識を、移動ないし撤去してもらいたい、と感じる物件もあります。
一方通行の道路で、進入口に既に一方通行標識があるのに、そこからわずかに入ったところにまた一方通行標識があって、それが対象不動産の出入りの障害になりそうな場合等です。
そういう場合の相談先は、管轄の警察署の交通課になります。
警察署の交通課は、民間からそのような相談があってら、公安委員会というところにハナシを上げ、様々な調査を経て最初的には公安委員会が判断します。
なお警察署から申請者に対し、周辺からの同意書名や簡単な通行調査報告を求められる場合もあります。
回答としては、移動・撤去NGのケースも少なくないようです。
また移動・撤去できる場合であっても、半年ないし1年ぐらいを要します。
不動産売買において、電柱やその支線等の移動の要望が出るケースとは
ではそもそも、住宅用地や中古戸建ての売買において、敷地内や前面道路にある電柱や支線を、移動したくなるケースとは、どういうケースなのでしょう?
それは例えば、住宅業者が大き目な一つの土地を購入し、それを2つないし3つに分割して販売する場合などです。
例えば、大きな一つの宅地の接道部分の真ん中あたりに電柱があると、その敷地を3分割した時に、真ん中の宅地の、その調度ど真ん中に電柱が有ることになってしまい、その敷地への進入の障害になってしまいます。
こういう場合、分割後のそれぞれの宅内への進入の妨げにならない場所に、その電柱を移動したくなります。
あるいは中古戸建てにおいて、電柱のすぐ横にその家の窓があったりするケースです。
この中古戸建ての購入を検討するお客様によっては、「あの位置に電柱があると、よじ登って窓から進入できるので、防犯面で心配」となり、移動を要望される場合があります。
それ以外にも、敷地内にある電柱を前面道路に移設して欲しい、との要望を受けるケースもあったりします。
私たちの暮らしに欠かすことのできない電気を供給さてくれるための電柱ですが、このように移動等を求められる場合があったりするるわけです。
電柱やその支線等の調査手順
このように、扱おうとする物件に電柱や支線がある場合、それらの移動を求められるケースがあることを知ると、それらの調査の必要性が理解できると思います。
これまでと一部重複しますが、以下に電柱や支線の調査手順について、確認しておきます。
その電柱や支線の管理者を明らかにし、問い合わせる
繰り返しになりますが、まずは電柱表面のマークや番号を便りに、その電柱や支線の管理者を明らかにします。
そしてこの度不動産の売買がある旨を告げ、その電柱や支線を扱う上で注意点等があったら聞き出します。
予め何らかの取り決め事項があったら、それも聞き出します。
また電柱によっては、その土地所有者の私物の場合もあります。
その場合は、所有者様に聞き出します。
電柱敷地料や承諾書について確認する
その電柱が、敷地の敷地内にある場合、一般的にはその電柱の管理者は、土地所有者に費用を支払って、その電柱を置かせてもらっています。
そしてこの、電力会社なりNTTなりの電柱管理者から、土地所有者に支払われるお金のことを、電柱敷地料と言います。
なおこの時に、一般的には敷地利用に関する承諾書が作成されます。
電柱敷地料は、その土地の地目によって異なりますが、宅地だと、一年当たり1500円になります。
そして電柱敷地料が伴う土地が売り渡されたら、その受け取り手も、売主様から買主様に変わります。
承諾書も承継されます。
その際、諸手続きが必要になりますので、その手続き方法についても、確認しておく必要があります。
その電柱や支線の移動内容を想定し、移動できるかできないかを確認
電柱や支線が関係してくる物件の扱いに慣れてくると、その物件を買おうとする方が、その電柱や支線を、どういうふうに移動したいかが、だんだん想定できるようになります。
それらが想定できるようになったら、初期調査の段階で、この電柱を何処其処に移動できるかや、この支線を外せるかなど、より具体的に、移動の可否について確認しておくことが望ましいです。
とは言え最初のうちは、その想定が難しいことと思います。
最初のうちは、何はともあれ既設の電柱や支線が、移動できるかどうかだけでも聞き出しておきましょう。
【重要】電柱や支線は移動できない場合がある
不動産の売買営業で、電柱や支線のある物件を扱う場合、絶対に知っておかなければならないことがあります。
それは電柱や支線の移動は、必ずしも出来るとは限らない、ということです。
そして出来ない理由もさまざまです。
電柱を既設の場所から移すと、電気の供給が出来ない住戸が生じてしまうなど理由で、NGになる場合があります。
また既設の支線を撤去してしまうと、安全性が維持できないという理由の場合もあります。
あるいは技術的に移動可能でも、移動先の土地関係者の理解が得られなくてNGという場合もあるようです。
電柱や支線の移動が出来るかどうかについては、これも慣れてくるとある程度想定できるようです。
ただしそれでも、思わぬ理由でNGの場合もあるので、やはりしっかり確認することが大事です。
特に最初のうちは、慎重に調査するようにしましょう。
電柱や支線の移動に伴う費用について
電柱や支線を移動してもらう場合、基本的には費用がかかります。
その金額もさまざまで、10万円前後の場合もあれば、30万円を越える場合もあるようです。
それら費用を、電力会社やNTTはきちっとした根拠に基づいて算出しています。
電柱がある物件を扱い慣れてくると、ある程度、移設費用の目処がつようになるようですが、やはり難しいです。
しっかり確認するようにしましょう。
また移動の形態によっては、無理の場合もあります。
例えば、前面道路にある既設電柱を、敷地内に移動する場合など、無料になったりします。
しかしこれも、微妙な条件の違いで有料扱いになったりするようです。
またそもそも移動が認められない場合に、費用負担することで認められるということはありません。
電柱や支線の移動に伴う費用については、原則有料、費用は10万円程度から30万円程度とバラツキあり、場合によっては無料、というふうに捉えておくと良いようです。
まとめ
いかがでしたか?
電柱がある物件を扱い慣れてないと、ついつい電柱調査を後回しにしてしまうかもしれませんが、その物件を購入しようとする方にとってはとても重要なことです。
しっかり調査するようにしましょう。
以下にもう一度、内容を確認しておきます。
□電柱やその支線の管理者
・電力会社
・NTT
*稀にその土地の所有者の場合あり
□防犯灯・カーブミラー・道路標識の問い合わせ先
・防犯灯:町内会
・カーブミラー:道路管理者(→町内会)
・道路標識:警察署の交通課→公安委員会
□電柱やその支線等の調査手順
管理者の確認→取り決め事項等の聴取→敷地内にある場合は電柱敷地料や承諾書について確認→移動を求めた場合、それが可能かどうかの確認
□【重要】電柱や支線の移動は出来ない場合有り
□電柱や支線の費用
原則有料で10万円程度から30万円程度とバラツキあり。場合によっては無料。
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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