不動産の売買営業に携わっていると、新築物件の仲介に携わることもあると思います。
また新築戸建や新築マンションの販売員のように、それをメインとされている方々も、当然いらっしゃると思います。
この記事では、不動産売買において、その対象となる建物が新築の場合に、決済・引渡しまでの間に、特別に発生する手続きについて、ご説明します。
新築物件をメインで扱っている方々にとっては、当たり前の内容ですが、買主側の仲介業者として、稀にしか扱わない方々にとっては、新鮮な内容かと存じます。
では、どうぞ。
新築戸建の決済・引渡しまでの流れ
居住用不動産の売買においては、売買契約が終わり、買主様が住宅ローンの本審査に通ったら、次はいよいよ決済・引渡しの準備に入ります。
そしてもし、その物件が未登記の新築戸建だったら、その間にやるべきことは、少し多くなります。
概ね、以下の通りです(一部割愛しております)。
(決済・引渡し前)
・住居番号設定の届出
・表題登記
・住居用家屋証明書の申請
・買主様の住民票の移動
・住宅ローンの金銭消費貸借契約
(決済・引渡し当日)
・住宅ローンの実行/所有権保存登記/抵当権設定登記
これらのうち住居番号設定の届出、表題登記、住居用家屋証明書の申請、所有権保存登記の4つは、その物件が中古物件だった場合には、伴わないものです。
以下、新築物件に限り必要な手続きとなる、住居番号設定の届出、表題登記、住居用家屋証明書の申請、所有権保存登記の4つについて、少し詳しく見ていきます。
住居番号設定の届出
新築戸建の買主様は、住宅ローンを組むのが一般的です。
そして住宅ローンを組むためには、買主様に、その新築戸建へと住民票を移して頂く必要があります。
でも実は、新築戸建は、役所に住居表示を振り分けてもらう手続きをしないと、住居表示は無いままです。
その手続きを、住居番号の設定と言います。
買主様の本審査が承認された段階で、まだ住居番号の届出を済ませてない場合は、速やかに済ませる必要があります。
その届出をすることで、住居表示が振り分けられ、また、例の緑色の住居表示プレートも発行されます。
届出をする先は、市町村役場です。
なお自治体によっては、建物が完成する目処が立ったら、直ちに届出を求めるところもあるようです。
また一方、比較的のんびりし届出をしても大丈夫そうなところもあるようです。
更には、届出後即日で住居表示を振り分けてくれる自治体もあれば、振り分けに1、2週間を要する自治体もあるようです。
不動産の売買営業員として、住居番組の届出を要する物件に携わる場合は、届出をしてからから振り分けが完成するまでの日数について、予め確認しておく必要がありそうです。
表題登記
不動産売買においては、買主様が売買残代金を支払い、その物件がいよいよ正式に買主様のモノになるというタイミングで、その物件に所有権や抵当権を登記します。
なぜなら、それらの登記をしておかないと、他の者にその物件を横取りされそうになったり、一番目に抵当権を設定したにもかかわらず、割り込んで一番抵当権を設定されそうになった時に、「こっちが先だそっ!」と言えないからです。
ただし、それら様々な権利を登記するためには、その前段階として、その建物の物理的状況が登記されていなければなりません。
建物の物理的状況とは、物件の所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積、所有者の住所、氏名などです。
不動産の賃貸営業においても、重要事項説明の際に、登記情報に基づいて、それらの情報をご説明すると思います。
建物の物理的状況とは、これらのことです!
そして、建物の物理的状況を登記することを、表題登記と言います。
その物件の権利を登記するためには、まずは、表題登記が完了されていなければなりません。
表題登記は、既存建物(=新築でない建物)においては、既に行われています。
しかし新築建物においては、これから行う必要があります。
新築建物においては、まずはしっかり表題登記を行い、その上で、所有権や抵当権を登記することになります。
表題登記は、土地家屋調査士がその実務を行います。
司法書士ではない点、気を付けましょう!
また不動産売買においては、所有権の登記と抵当権の登記を、決済・引渡し日付けで行う必要がありますが、その物件が新築の場合には、その日の前までに、表題登記を完了させる必要があります。
その物件が新築の場合には、表題登記の完了時期を見据えた上で、決済・引渡し日を設定する必要があることを、押さえておきましょう。
また表題登記においては、担当の土地家屋調査士から、建築確認申請書類の写しや建築図面の写しと併せ、買主様の本物件転入前の住民票等、様々な書類を求められます。
どのような書類が必要になるかについても、担当の土地家屋調査士と、しっかり打ち合わせておく必要があります。
住居用家屋証明書の申請
所有権や抵当権など、その物件の権利を登記してもらう時には、買主様は、その実務を担う司法書士に報酬を支払います。
そして実は、報酬以外にもう1つ、支払わなければ(納めなければ)ならないものがあります。
登録免許税という税金です。
登録免許税は、司法書士を介して国に納められます。
登録免許税は、登記しようとする建物が店舗や事務所等でなく住居の場合、軽減措置を受けることができます。
ただしそのためには、住宅用家屋証明書というものを、法務局に提出する必要があります。
住宅用家屋証明書は、該当する市町村役場で取得できます。
その申請は、表題登記を担う土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
また、所有権や抵当権の登記を担う司法書士に依頼する場合もあります。
取得した住居用家屋証明書は、所有権や抵当権の登記を担う司法書士を介し、法務局に提出されます。
長期優良住宅の場合
登録免除税の軽減措置を受けようとする住宅が、長期優良住宅の場合、一般住宅よりも、もっと軽減率が優遇された軽減措置を受けることができます。
ただしそのためには、住宅用家屋証明書と併せ、長期優良住宅認定通知書の写しが必要になります。
所有権や抵当権の登記を担う司法書士に、住宅用家屋証明書と一緒に、法務局に提出してもらいます。
決済・引渡しを予定している新築住宅が、長期優良住宅の場合には、住宅用家屋証明書に加え、長期優良住宅認定通知書の写しを、忘れずに担当司法書士に渡すようにしまょう。
所有権保存登記
不動産売買において、決済・引渡しを行おうとする建物が既存建物(中古物件)の場合には、その所有権の登記は、所有権移転登記になります。
しかしその建物が新築の場合には、所有権保存登記になります。
所有権移転登記とは言わない点、押さえておきましょう!
所有権移転登記とは、所有権がAからBに移ることを言います。
でも新築の場合、元々の所有権が存在しません。
そういう場合、所有権保存登記というふうに、「移転」のところが「保存」になるわけです。
なお土地建物のうち、土地は所有権移転登記になります。
なぜなら土地のほうは、売主業者なり請負業者名義で、予め所有権が登記されているからです。
(注)
この記事では、埋め立て地等、土地の表題登記を要するケースについては、考慮しておりません。
まとめ
いかがでしたか?
新築物件にあまり携わらない方々は、是非この機会に、決済・引渡しまでに付加される手続きを、押さえてしまいましょう!
最後にもう一度、内容を確認しておきます。
□住居番号設定の届出
該当する市町村役場に早めに届出を行い、住居表示を振り分けてもらうようにする。
□表題登記
その建物が新築の場合に行う、建物の物理的状況(物件の所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積、所有者の住所、氏名など)の登記のこと。
表題登記が行われた後でなければ、所有権や抵当権などの、権利を登記することができない。
□住居用家屋証明書の申請
所有権や抵当権を登記しようとする物件が住居の場合、住居用家屋証明書の申請して取得し、それを法務局に提出することで、登録免許税の軽減措置を受けることができる。
*更にその建物が、長期優良住宅の場合、長期優良住宅認定通知書の写しを添えることで、更に優遇された軽減措置を受けることができる。
□所有権保存登記
所有権を登記しようとする物件が新築の場合、その登録は、所有権移転登記でなく、所有権保存登記になる。
この記事は、以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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