【不動産売買】中古住宅の建物状況調査(インスペクション)とは?

不動産会社の売買営業員として、中古住宅に携わっていると、建物状況調査(インスペクション)というもを避けて通ることはできませんよね。

この建物状況調査(インスペクション)、正しく理解できてますか?

この記事では、不動産会社の売買営業員が中古住宅に携わる場合、どうしても知っておきたい建物状況調査(インスペクション)について、不動産売買営業初心者の方向けに、分かりやすくご説明します。

この記事を読めば、建物状況調査(インスペクション)の全体像を、しっかり捉えることができますよ!

では、どうぞ。

(注)

この記事では、不動産賃貸における建物状況調査(インスペクション)については、言及しておりまん。

目次

改正宅建業法で言う建物状況調査(インスペクション)とは?その主要条件5つ

そもそも建物状況調査(インスペクション)とは、建物調査の専門家が、その状況を調査することを言うとされていました。

しかし2018年に宅建業法が改正され、この建物状況調査という言葉は、極めて限定的に用いられるようになりました。

改正宅建業法において建物状況調査(インスペクション)とは、主に下記5つの事項を満たすものを言います。

1.調査対象となる建物が、中古(既存)の住宅である(店舗や事務所等でない)こと。

2.その調査部位が、建物の構造耐力上主要な部分、及び雨水の浸入を防ぐ部分であること。

3.その調査方法が、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に規程する方法であること。

4.その調査を実施する者が、国が定めた既存住宅状況調査技術者講習という講習を修了した、建築士であること。

5.1年以内に実施されたものであること。

仮にある建築士が中古住宅を、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に則って、建物の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分について調査したとします。

しかしその建築士は、国が定めた既存住宅状況調査技術者講習という講習を修了していませんでした。

この場合この調査は、宅建業法で言う建物状況調査(インスペクション)には該当しないことになります。

この5点、まずはしっかり押さえておきましょう!

媒介業者による建物状況調査(インスペクション)のあっせんについて

不動産の売買営業員として中古住宅に携わる際、「建物状況調査(インスペクション)のあっせん」の「あっせん」の意味を、正しく捉えておく必要があります。

また「あっせん」の手順についても、把握しておきたいところです。

以下、この2点について見ていきましょう。

媒介業者による建物状況調査(インスペクション)のあっせんとは

建物状況調査(インスペクション)のあっせんとは、媒介業者が、売主様と建物状況調査(インスペクション)を行う業者とを結びつけることを言います。

とは言えただ単に、建物状況調査(インスペクション)を行う業者に関する情報を提供しただけでは、あっせんとまでは言えないとされています。

建物状況調査(インスペクション)の実施に向け、具体的行動を起こすことで、あっせんになるとされています。

ただし、現に建物状況調査(インスペクション)が実施されたかどうかは問いません。

実施されなくても、その為に具体的行動を起こせば、それはあっせんということになります。

なお同一の行為を、宅建業者が購入希望者様・買主様に対して行った場合も、あっせんになります。

建物状況調査(インスペクション)のあっせんの方法

中古住宅の売買仲介に携わった際に、建物状況調査(インスペクション)をあっせんしてほしいと言われたら、担当営業員は、どうしたらいいのでしょう?

と申しますか、中古住宅の売買においては、宅建業者は建物状況調査(インスペクション)について言及する義務があります(詳しくは後述します)ので、その手のご要望を承るケースは、少なくありません。

このような場合、相談できる上司や先輩が身近にいれば、その方々に相談すれば良いですが、それが困難な職場もあると思います。

その場合には、宅建協会や全日など勤務先が所属する団体に、躊躇せずご相談されてみることをおすすめします!

地域によっては、自治体と宅建協会や全日等の団体が協力し合い、補助金を活用しながら建物状況調査(インスペクション)を実施できる場合がもあります。

また仮にそのような補助金制度が整っていなくても、宅建協会や全日等の団体は、所属宅建業者から建物状況調査(インスペクション)について相談を受けたら、大抵の場合、親切にご説明してくださいます。

売買仲介の営業員として、初めてあっせんする場合は、まずは相談してみて、その上で具体的行動を起こすと良いようです。

建物状況調査(インスペクション)において重要とされる透明性・客観性

宅建業者によっては、自社で建物状況調査(インスペクション)を実施できる人材を保有しているところもあると思います。

ところが、自社の売買仲介案件に対し、自社の人員で建物状況調査(インスペクション)を行うのは、適切でないとされています。

と申しますのも、建物状況調査(インスペクション)は、高い透明性・客観性が確保されるべきものであるとされていて、対象物件の媒介業者等の利害関係者が実施することは、透明性・客観性を欠く恐れがあるとされているからです。

そして実は、透明性・客観性という観点に立った時、不動産売買のベテラン営業員の中には、媒介業者による建物状況調査(インスペクション)のあっせん自体を、疑問視する方もいたりします。

ご存じの方も多いと思いますが、インターネットで「建物状況調査 業者」というキーワードで検索すれば、建物状況調査(インスペクション)を実施できる業者は、いとも簡単に見つけ出せます。

ベテラン営業員の方々の中には、建物状況調査(インスペクション)の概要や主旨等を売主様・購入希望者様・買主様にしっかりご説明はするものの、あっせんは敢えて行わず、お客様自らが業者選定を行うよう、ご誘導なさっている方もいるようです。

いずれにしても、媒介業者として、売主様・購入希望者様・買主様に建物状況調査(インスペクション)について言及する際は、透明性・客観性の確保に留意しましょう。

宅建業者が購入希望者様・買主様に建物状況調査(インスペクション)をあっせんする場合の注意点

不動産の売買営業員として、中古住宅の買主様側仲介に付く場合、お客様から、購入希望の中古住宅について、建物状況調査(インスペクション)を行いたい、と言われる場合があります。

その場合、お客様方が現にその物件の購入を検討されているが故に、特に注意しなければならないことが幾つかあります。

それは主に、下記4つです。

1.購入希望者様・買主様の建物状況調査(インスペクション)には、売主様の承諾を要する。

2.購入希望者様・買主様の建物状況調査(インスペクション)では、調査部位を正しくご理解頂くことが重要。

3.建物状況調査(インスペクション)は、契約不適合責任の調査ではないことを、ご理解頂く必要がある。

4.建物状況調査(インスペクション)は、建築基準法等に基づく既存不適格の調査ではないことを、ご理解頂く必要がある。

以下1つづつ、少し詳しく見ていきましょう。

購入希望者様・買主様の建物状況調査(インスペクション)には、売主様の承諾を要する

購入希望者様・買主様が建物状況調査を行おうとする場合には、その時の所有者である売主様から、承諾を得る必要があります。

その場合、購入希望者様側・買主様側仲介の営業員は、売主様側仲介の営業員にそのことを伝え、売主様の承諾を取り付けて頂くことになります。

ただしその物件が、例えば、引き合いが多い物件などの場合には、売主様から承諾を得られない恐れがあります。

売主様は、契約自由の原則から、建物状況調査(インスペクション)を行わないことを了承してくれる方のみを、買い手として選択することができます。

その物件の引き合いが多ければ、売主様は、何ら要望をおっしゃらない方に購入して頂くことを望むかもしれないからです。

買主様側仲介に付く場合、お客様が、その物件を購入するかどうかの判断材料として、建物状況調査の実施を要望される場合があると思います。

その場合、上述したようなリスクがあるかことを、必要に応じて、購入希望者様にご説明する必要があります。

購入希望者様・買主様の建物状況調査(インスペクション)では、調査部位を正しくご理解頂くことが重要

購入希望者様側・買主様側仲介の営業員が、購入希望者様・買主様に、宅建業法に基づく建物状況調査(インスペクション)についてご説明する際には、その調査部位について、しっかりご理解頂く必要があります。

繰り返しになりますが、宅建業法に基づく建物状況調査(インスペクション)の調査部位は、建物の構造耐力上主要な部分、および雨水の浸入を防ぐ部分です。

別の言い方をすれば、建物の構造耐力上主要な部分、及び雨水の浸入を防ぐ部分しか調査しない、ということです。

購入希望者様・買主様方々の中には、建物状況調査(インスペクション)の調査部位を、例えば、給排水配管関係等も含む、もっと広範囲なものと捉えている方がいらっしゃったりします。

しかも宅建業者から、「建物状況調査(インスペクション)というものがありまして、国土交通省の基準に基づく調査で、国土交通省が定めた講習を修了した建築士でないと出来ないんですよ」と言われると、期待値が上がり過ぎてしまう恐れがあります。

したがって、調査部位はあくまで、建物の構造耐力上主要な部分、及び雨水の浸入を防ぐ部分だけであり、例えば、給排水配管関係等は含まれないということを、しっかりお伝えしておく必要があるわけです。

実は不動産売買のベテラン営業員の方々の中には、宅建業法に基づく建物状況調査(インスペクション)は、実用面から見ると、調査部位が乏しい、調査自体が緩い、と捉えていらっしゃる方もいたりします。

調査業者のほうも、宅建業法に基づく建物状況調査(インスペクション)に加え、様々なオプションを用意していたりします。

宅建業者として、購入希望者(買主)様に、建物状況調査(インスペクション)についてお話しする際には、その調査内容をしっかりご説明すると共に、調査業者から取り寄せた情報に基づき、必要に応じて、オプションについてもご説明してみると良いようです。

建物状況調査(インスペクション)は、契約不適合責任の調査ではない

購入希望者様・買主様方の中には、建物状況調査(インスペクション)と契約不適合とを、混同してしまう方もいらっしゃるようです。

その場合例えば、建物状況調査(インスペクション)の結果に何も問題が無ければ、特段の契約不適合も無いと捉えてしまったりするようです。

購入希望者様・買主様側仲介の営業員は、建物状況調査(インスペクション)は、契約不適合に関する調査ではないこと、契約不適合が無いことを保証するものではないことを、ご説明する必要があります。

建物状況調査(インスペクション)は、建築基準法等に基づく既存不適格の調査ではない

購入希望者様・買主様の中には、建物状況調査(インスペクション)を、建築基準法・都市計画法等における既存不適格の調査と混同してしまう方もいらっしゃるようです。

その場合、建物状況調査(インスペクション)の結果に何も問題が無ければ、既存不適格も無いと捉えてしまったりします。

購入希望者様・買主様側仲介の営業員は、建物状況調査(インスペクション)は、既存不適格に関する調査ではないこと、既存不適格が無いことを保証するものではないことを、ご説明する必要があります。

建物状況調査(インスペクション)と媒介契約・重要事項説明・売買契約

現行の宅建業法においては、建物状況調査(インスペクション)に関する様々な事項が義務化されておりますが、これは、2018年の宅建業法の改正によるものです。

その時の改正によって、媒介契約時、重要事項説明時、売買契約時に、建物状況調査(インスペクション)に関する幾つかの事項が追加され、義務化されました。

そしてそれら追加事項は、今は各団体が所属宅建業者向けに作成している媒介契約書、重要重要説明書、売買契約書の定型書式にしっかり反映されています。

したがって、それら書式に則って書類作成すれば、改正宅建業法に基づく建物状況調査(インスペクション)について、漏れ等を生じさせてしまう心配は、ほぼ無いようです。

ここでは参考まで、改正によって義務化された事項について見ておきます。

【大前提】建物状況調査(インスペクション)そのものが義務化されたわけではない

まず大前提として、押さえておくべきことがあります。

それは宅建業法の改正により、建物状況調査(インスペクション)に関する様々な事項が義務化されたものの、建物状況調査(インスペクション)そのものが義務化されたわけではない、ということです。

義務化されたのは建物状況調査(インスペクション)そのものでなく、下記に示す幾つかの事項です。

媒介契約における、建物状況(インスペクション)に関する追加・義務化項目

改正宅建業法においては、宅建業者は、売却の媒介を承った際に、その売却依頼主様との間で、「建物状況調査(インスペクション)のあっせんも行います」という約束を交わしたら、その約束を果たす業務を負います。

そしてその旨を、媒介契約書に反響させる必要があります。

所属先の団体が作成する媒介契約書の定型書式に、下記のような記載があると思います。

「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無(有・無)」

そしてもし、売却依頼主様との間であっせんする約束をしたら「有」に、しなかったら「無」にチェックを入れます。

なお、宅建業者が購入の媒介を承り、その媒介の契約を取り交わす場合も同様です。

重要事項説明における、建物状況(インスペクション)に関する追加・義務化項目

改正宅建業法においては、媒介契約時だけでなく、重要事項説明時においても、建物状況調査(インスペクション)に関することで、義務化さられた事項があります。

順番に見ていきましょう。

1.建物状況調査(インスペクション)の実施の有無

所属先の団体が作成する重要事項説明書の定型書式に、「建物状況調査(インスペクション)の実施の有無」の「有」・「無」にチェックを入れる箇所があると思います。

対象中古住宅が、建物状況調査(インスペクション)を実施していれば「有」に、していなければ「無」にチェックを入れます。

なお繰り返しになりますが、ここで「有」となる建物状況調査(インスペクション)は、1年間以内に実施したもののみが対象になります。

2.「有」の場合、宅建士が「建物状況調査の結果の概要」について説明

現に建物状況調査(インスペクション)を実施し、「有」となる場合、担当の宅地建物取引士は、「建物状況調査の結果の概要」という書面について、買主様に説明する必要があります。

「建物状況調査の結果の概要」とは、建物状況調査(インスペクション)を実施した建築士が作成する書面で、調査対象部位ごとの劣化事象等が記載されています。

したがって担当の宅建士は、その書面内容を買主様にご説明できるよう、予めしっかり読み込んでおく必要があります。

とは言え買主様から、宅建士では分からない、専門的な質問をされる場合もあると思います。

その場合、買主様側仲介の営業員は、建物状況調査(インスペクション)を実施した建築士から、直接買主様に詳しいご説明をしてもらうよう、手配することになります。

重要事項説明における、設計図書等の保存状況の説明について

買主様への重要事項説明においては、建物状況調査(インスペクション)に関して、他に設計図書等の保存状況についての説明も、新たな説明義務事項として、追加されています。

所属先の団体が作成する重要事項説明書の定型書式に、「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況」という箇所があると思います。

殆どの定型書式が、「建物状況調査の結果の概要」の箇所の下段に、以前からの説明事項である「耐震診断に関する事項」と一体となって設けられていると思います。

定型書式に則って、上から順番に項目を埋めていき、買主様にしっかりご説明する必要があります。

建物状況調査(インスペクション)を実施した場合の重要事項説明時の注意点

建物状況調査(インスペクション)が実施された場合、それは売主様による場合もあれば、買主様による場合もあります。

そしてもし、それが売主様による場合には、重要事項説明時に、買主様に申し添えておくべきことがあります。

それは、上記「宅建業者が購入希望者様・買主様に建物状況調査(インスペクション)をあっせんする場合の注意点」で述べた、下記3つです。

・購入希望者様・買主様の建物状況調査(インスペクション)では、調査部位を正しくご理解頂くことが重要。

・建物状況調査(インスペクション)は、契約不適合責任の調査ではないことを、ご理解頂く必要がある。

・建物状況調査(インスペクション)は、建築基準法等に基づく既存不適格の調査ではないことを、ご理解頂く必要がある。

売主様によって建物状況調査(インスペクション)が行われた物件を、購入しようとする買主様には、これら3つを申し添え、建物状況調査(インスペクション)を、正しくご理解頂くことが大切です。

売買契約における、建物状況(インスペクション)に関する追加・義務化項目

改正宅建業法においては、売買契約時においても、建物状況調査(インスペクション)に関し、追加・義務化された事項があります。

所属先の団体が作成する売買契約書の定型書式に、下記のような箇所があると思います。

「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について確認した事項」

売買契約書のこの箇所は、建物状況調査(インスペクション)が実施され、建物状況調査の結果の概要について説明し、その説明したという事実を、売主様と買主様双方にご確認頂き、「有」にチェックを入れます。

更に「有」の欄の必要事項を記入します。

なお建物状況調査(インスペクション)を実施していない時は、「無」にチェックを入れます。

まとめ

いかがでしたか?

是非この記事をご一読頂き、改正宅建業法における建物状況調査(インスペクション)に関して、知識の習得から始めてみてはいかがでしょう?

最後にもう1度、内容を確認しておきます。

□改正宅建業法で言う建物状況調査(インスペクション)

1.調査対象となる建物が、中古(既存)の住宅である(店舗や事務所等でない)こと。

2.その調査部位が、建物の構造耐力上主要な部分、及び雨水の浸入を防ぐ部分であること。

3.その調査方法が、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に規程する方法であること。

4.その調査を実施する者が、国が定めた既存住宅状況調査技術者講習という講習を修了した、建築士であること。

5.1年以内に実施されたものであること。

□媒介業者による建物状況調査(インスペクション)のあっせん

・あっせんとは、宅建業者が建物状況調査の実施に向け、具体的行動を起こすこと。

・初めてあっせんする場合には、まずは宅建協会や全日等、勤務先が所属する団体に相談。

□建物状況調査(インスペクション)における透明性・客観性

宅建業者は、建物状況調査(インスペクション)をあっせんする場合は、透明性・客観性に要留意。

□購入希望者様・買主様へのあっせんの注意点

1.売主様の承諾を要する。

2.調査部位を正しくご理解頂くことが重要。

3.契約不適合責任の調査ではないことの理解。

4.建築基準法等に基づく既存不適格の調査ではないことの理解。

□建物状況調査(インスペクション)と媒介契約・重要事項説明・売買契約

・建物状況調査(インスペクション)は義務ではない。

・媒介契約-建物状況調査を実施する者のあっせんの有無

・重要事項説明-建物状況調査(インスペクション)の実施の有無/「有」の場合は「建物状況調査の結果の概要」の説明/設計図書等の保存状況の説明

*売主様側で建物状況調査(インスペクション)が実施された場合、調査部位、契約不適合の調査でないこと、既存不適格の調査でないことを要説明。

・売買契約-建物の構造耐力上主要な部分等の状況について確認した事項の有無

この記事は以上となります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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