投資物件のお客様を接客するようになると、税金についていろいろご質問を受けることも多くなると思います。
不動産による賃料収入に基づく所得を、税制用語で不動産所得と言います。
不動産所得のご質問については、原則税務署や税理士さんにお問い合わせ頂くよう、ご誘導するのが良いとされています。
とは言え何も知らないのも、やはり心細いですよね!
この記事では、不動産所得の基本的な考え方について、不動産の売買営業員初心者の方向けにわかりやすくご説明します。
少し細かい部分もあると思います。
まずは1度サラッと読み、その後細かい部分をゆっくりお読み頂くと、わかりやすいと思います。
では、参りましょう!
不動産取得とは
所有している不動産を貸して賃料等を得ていると、その収入から経費を差し引いて、利益が出たのか損失が出たのかを見ていく必要があります。
そして利益が出たら税金を納めますし、損失が出たら、他の所得と通算(損益通算と言います)したりします。
不動産所得とは、この時の利益なり損益なりを言います。
不動産取得の計算
不動産所得は、下記の方法で計算します。
不動産所得=総収入金額-必要経費
ここで言う「総収入金額」とは、月々の賃貸や共益費はもちろん、返金しない敷金(敷引や敷引償却など)や礼金等も含みます。
なお「総収入金額」についてお客様方から、「○○は収入に入れられますか」等のご質問を頂くこともあると思います。
そういう場合、ご自身で判断つかなかったら、税務署や税理士さん等にお問い合わせ頂くよう申し伝えましょう。
一方「必要経費」には、下記のようなものがあります。
【固定資産税・都市計画税】
賃料収入を得ようとして不動産を所有し続けると、固定資産税・都市計画税が発生しますよね。
これらは不動産所得の必要経費にできます。
【損害保険料】
物件のオーナー様方は、基本的にその物件に火災保険や地震保険を掛けていますよね。
それら損害保険料も必要経費にできます。
【修繕費】
物件のオーナー様方は、物件の維持管理に際し、自らの費用負担で何かと修繕を施す必要がありますよね。
これら修繕費も、定められた上限の範囲内で必要経費とすることができます。
【減価償却費】
さあここでも出ました、減価償却です!
減価償却とは、その物件の使用や経年によって、その物件の建物部分の価値が目減りしていくことです。
仮にその不動産の建物部分の1年の価値の目減りが、10万円づつだったとします。
3年前に1000万円で購入したとしたら、2年前には990万円、去年は980万円、今年は970万円と、1年ごとに10万円づつ目減りしていくと捉えます。
そしてこの目減り分の10万円が、その年の減価償却として経費計上できるというわけです。
【借入金利子】
多くの物件オーナー様方は、自ら所有する土地上に建物を建てたり、収益目的で土地建物を購入したりして、賃貸経営に取り組んでいます。
そしてほとんどのオーナー様方は、それら物件を建てたり取得したりするのに、銀行等から借り入れしています。
実はこれら借り入れの利子も、不動産所得の必要経費にすることができます。
【その他】
上記以外にも、例えばオーナー様方が私たち不動産業者に建物管理を委託している場合、その管理料等も必要経費になります。
他にもいろいろあります。
もしお客様から、不動産所得の必要経費についてご質問があったら、安易な回答は控え、税務署等にお問い合わせ頂くようご誘導しましょう。
不動産取得の事業的規模の判定について
この項はちょっと細かいです。
物件のオーナー様方は、自ら所有する物件を賃貸(税務署や税理士さんは『貸付け』と言うようです)していますが、その貸付けがある程度の規模以上になると、税務署が事業的規模と判定する場合があります。
事業的規模と判定されると、所得金額の細かい計算方法がガラッと変わります。
そして一般的には、この変化は物件オーナー様方にとって、メリットとされています。
事業的規模として判定される目安としては、概ね下記の通りとされています。
・戸建貸家→概ね5戸以上
・アパート・マンション→概ね10室以上
詳細は覚えなくて大丈夫でしょうが、事業的規模と判定されたら、不動産所得の計算方法がガラッと変わることを押さえておきましょう。
不動産所得が利益の場合の納税について
ここもちょっと細かいです。
その貸付けの規模が事業的規模でない場合、不動産所得が利益だったら、他の所得と合算して、所得税・住民税として納税します。
またその規模が事業的規模として判定されたら、個人事業税という、所得税・住民税とは別種の税金が発生する場合があります。
不動産所得と不動産の譲渡所得の違い
不動産所得と似た言葉に、不動産の譲渡所得という言葉がありまして。
不動産所得がこれまで見てきた通り、不動産の賃料収入等に基づく所得であるのに対し、不動産の譲渡所得とは、不動産の売却に伴う所得です。
実は税制では、所得を下記の10種類に分類して計算することになっています。
1.利子所得/2.配当所得/3.不動産所得/4.事業所得/5.給与所得/6.退職所得/7.山林所得/8.譲渡所得/9.一時所得/10.雑所得
不動産所得が「3.不動産所得」で、不動産の譲渡所得は「8.譲渡所得」ですね。
これら2つはこのように、所得を計算する時の項目が異なります。
頭の隅に置いておきましょう。
不動産所得の確定申告について
自ら所有する物件を貸付けて賃料を得ているオーナー様方は、原則として、不動産所得について確定申告する必要があります。
ただし例えば、サラリーマン等給与所得のある方が、副業で賃料収入を得ている場合、不動産所得が20万円以下だったら、確定申告しなくてよいことになっています。
また給与所得が無い方であっても、状況によっては確定申告が不要となる場合があるようです。
この項では知識として、「給与所得のある方が副業で賃料収入を得ている場合、不動産所得が20万円以下だったら、不動産所得の部分については確定申告不要」ということを覚えておきましょう。
ただしこの知識を、実務に用いるには注意が必要です。
不動産の売買営業に携わっていると、自宅を賃貸に出したり、収益物件を購入して不動産投資をスタートするお客様を接客するようになると思います。
そしてそのようなお客様方から、賃料収入に関する確定申告について、ご相談を受ける場合もあると思います。
そういう場合、基本的にはやはり安易な回答は控え、最寄りの税務署や税理士さんにご相談頂くようご案内しましょう。
仮にそのお客様が給与所得を得ており、かつお客様が認識している不動産所得が20万円以下であっても、「お客様の場合確定申告は不要ですよ」といった断定的な回答は控えましょう。
場合によってはお客様が、本来必要経費に出来ないものを誤って必要経費にして計算しているかもしれません。
その場合、計算し直して20万円を越えていたら確定申告が必要になります。
またあるいは、私たちの知識が及ばない他の要因で、本当は確定申告義務があったりするかもしれません。
税金に関しては、基本的に素人である私たち宅建業従業者は、その取り扱いには充分注意しましょう!
不動産取得の損益通算
その年の不動産所得が損失だったら、不動産所得についての確定申告は不要とされています。
しかし給与所得等他の所得がある方は、確定申告したほうが良いとされています。
なぜなら不動産所得は、給与所得等と通算できるからです。
これを損益通算と言います。
税金の額は、所得が高かったら高いですし、低くかったら低くいですよね。
不動産所得の損失は、トータルとしての所得を圧縮し、納めるべき税金の額を減らす効果、いわゆる節税効果があるとされています。
不動産所得が損失だったら、損益通算によって節税できるわけです。
ただし損益通算には、土地の購入に係る部分の借入金利子は算入させられません。
細かいですが、この点は押さえておきましょう。
損益通算を適切に行うには、不動産所得の計算の必要経費を正しく算入させることがポイントとされています。
その中でも特にポイントなのが減価償却費です。
今まで住んでいたご自宅を賃貸に出して新たなオーナー様になられる方々の中には、減価償却費を必要経費にできることをご存じでない方がいらっしゃったりします。
もしそういうお客様を接客する機会があったら、減価償却費は必要経費になること、不動産所得が損失だったら損益通算できることをお伝えしてみるのも1つかと思います。
ただし必ず、詳細については税務署等でご確認頂くよう申し伝えるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
宅建業の従業者は、日々様々なお客様方と接しますよね。
中でも所有する物件を貸し出しているオーナー様方は、不動産知識も豊富で、初めのうちは接客していて気後れすると思います。
でもそんな時、不動産所得の基本知識が助けになったりします。
細かい部分もありますが、是非繰り返しお読み頂き、習得してしまいましょう!
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□不動産所得の計算式
不動産所得=総収入金額-必要経費
□不動産所得の計算に出てくる必要経費について
固定資産税・都市計画税、損害保険料、修繕費、借入金利子等に加え、減価償却費も計上できる点に注意。
□不動産取得の事業的規模の目安
・戸建貸家→概ね5戸以上
・アパート・マンション→概ね10室以上
□不動産所得と不動産の譲渡所得
所得の計算箇所が異なる。
不動産所得→3/譲渡所得→8
□不動産所得の損益通算
土地の購入に係る部分の借入金利子は、損益通算に入れられない点に注意。
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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