不動産会社で売買営業員をやっていると、マンション等を購入しようとするお客様が、外国人の方の場合もありますよね。
さてこういう場合、どうしたらいいのでしょう?
買主様となる方が日本の方でないという点で、何か注意すべきことはあるのでしょうか?
この記事では、マンション等不動産の買主様が外国人の方の場合に、注意すべきことについてご説明します。
是非この機会に、買主様が外国人の方の場合の手続き方法を押さえ、取り引きの幅を更に広げて参りましょう!
では、どうぞ。
(注)
この記事では、買主様が、日本に在留する外国人の方の場合についてのみ説明しており、国外在住の外国人の方の場合については、言及しておりません。
また、売主様が外国人の方の場合についても、言及しておりません。
更にこの記事では、長期在留者についてのみ説明しており、特別永住者については概ね通常の手続き方法で足りることから、また在留資格のない外国人、及び乗員についても極めて稀であることから、言及しておりません。
日本に滞在する外国人の方が、不動産の買主様となるケース
最近は不動産会社の中にも、外国人のお客様を主要ターゲットとする会社が増えてきているようです。
そして日本国内に滞在し、自ら不動産を購入しようとする外国人の方々は、そのような外国人の方向け不動産会社に、物件探しを依頼するケースが多いようです。
したがって、外国人の方向けでない一般的な不動産会社が、外国人の方に携わるケースとしては、自社が関与する物件に、外国人の方向けの仲介業者が外国人の方を付けてくる、というケースになるかと思います。
すなわち自ら売主物件、あるい売主様側仲介物件に対し、外国人の方向け仲介業者が、外国人の方を買主様として付けてくる、というケースです。
このようなケースでは、買主様側仲介の売買営業員が、外国語が話せる場合が多いため、言葉の問題で困惑することは、比較的少ないかと思います。
ところが場合によっては、買主様側仲介として、外国人のお客様に直接的に携わる場合もあるかと思います。
この場合、そのお客様が日本語が解れば良いですが、そうでない場合には、日本語が解る方を間に介して頂く必要があります。
後述しますが、日本国内に存在する不動産を取引する場合には、原則として、契約書等は日本語で書かれた契約書等を用いることになります。
したがって、不動産を購入しようとする外国人のお客様が、日本語が解らない場合には、お知り合いの方でもいいですし、専門業者に依頼して頂いてもいいので、お客様の母国語と日本語の双方が解る方を、間に介す必要があります。
その見通しが難しい場合は、残念ですが、取引の安全性を鑑み、お客様に対して「私達は、貴方のお力になれません」とお伝えし、手を引いたほうが無難かもしれません。
中長期在留者と在留カードについて
日本に滞在する外国人の方で、不動産を購入しようとする方々の多くは、法務省が掲げる在留管理制度という制度における、中長期在留者という方々に相当する場合が多いようです。
在留管理制度とは、法務大臣が、日本に中長期間在留する外国人の方々の在留状況を、継続的に把握するための制度です。
中長期在留者として認められる外国人の方々とは、例えば、日本人と結婚している方、企業等に勤務する方、経営者、技能実習生、留学生、永住者といった方々が想定されます。
在留管理制度において、中長期在留者に当たるとされる方々には、在留カードというものが交付されます。
観光目的等で3ヶ月未満しか滞在しないといった方々は、中長期在留者とは認められず、よって在留カードが公布されることはありません。
なお、在留カードの交付を受けた中長期在留者の方々は、それを常時携帯することが義務付けられています。
日本に滞在する外国人の方で、不動産を購入しようとする方々は、大抵の場合、この在留カードを所持した、中長期在留者に当たる方々になろうかと思います。
したがって話は前後しますが、日本に滞在する外国人の方で、不動産を購入しようとする方々は、大抵の場合、日本語がある程度解るか、解る知り合いの方がいらっしゃる場合が多いようです。
またそうでなくても、通訳会社等、日本語で手続きするための手立てをご存じの場合が多いようです。
不動産の売買営業員が、買主様側仲介として、不動産を購入しようとする外国人の方に直接的に関わる場合であっても、落ち着いて対応すれば、やり取りを進めていけ可能性は、充分にある場合が多いと言えそうです。
なお、この在留カードをお持ちの外国人の方々は、住民票を発行してもらうことも可能とされています。
更に住民票をお持ちの外国人の方々は、諸条件を満たせば、母国で取得した運転免許証を、日本の運転免許証に切り替えることも可能とされています。
以上ここまで確認したところで、買主様が外国人(中長期在留者)の方の場合における、不動産売買の実務について、以下に見ていくことにしましょう。
買主様が外国人(中長期在留者)の方の不動産売買における本人確認
賃貸でも売買でも、不動産取引の際には、本人確認を行いますよね。
更にその取引が、宅地建物の売買の場合には、その本人確認は、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認でなければなりません。
そしてこの点については、当然のことながら、買主様が外国人の方(中長期在留者)であっても、変わりありません。
買主様が外国人の方(中長期在留者)の場合、犯罪収益移転防止法に基づく、対面での本人確認書類は、在留カードになります。
運転免許証をお持ちの中長期在留者様については、運転免許証でもOKです。
しっかり対面して、在留カードや運転免許証の提示を受け、確実に本人確認を行うようにしましょう。
また自ら売主、売主様側仲介として携わる場合には、買主様側仲介業者様に対し、本人確認を実施して頂いた証として、在留カード等の写し、顧客カードの写しを頂いておくと良いようです。
なお物件を購入しようとする外国人の方(中長期在留者)が、犯罪収益移転防止方法に基づく「特定国等」に該当する国の方の場合、また「外国の重要な公的地位にある者等との取引」に該当する方の場合には、ハイリスク取引となり、下記2点の追加確認が必要になります。
1.補完書類(国税・地方税の領収書又は納税証明書、社会保険料の領収書、公共料金の領収書等)の確認
2.確定申告書や預金通帳等による、資産・収入の状況の確認
詳しくは、不動産流通推進センターのホームページ内にある犯罪収益移転防止法等連絡協議会のページの『宅地建物取引業における犯罪収益移転防止のためのハンドブック』をご参照頂けたらと思います。
不動産売買の買主様が外国人の場合における、契約の注意点
不動産会社で売買営業員をやっていると、解らないこと、判断が付かないことが様々出てくると思います。
そういう時、大いに参考になるものに、不動産流通推進センターのホームページで閲覧できる、不動産相談事例集があります。
そしてこの相談事例集では、不動産の買主様が外国人の方の場合の契約方法についても言及しており、現場においては、それをそのまま参考にすべきかと存じます。
まずはその該当箇所を、下記に引用させて頂きます。
外国人が日本国内において不動産の売買契約を締結する場合、その売買契約に適用される法律は日本国の法律である(法例第7条〜第10条)。したがって、売買契約書の作成や重要事項説明書の作成といった業法上の規制についても日本国の法律である宅地建物取引業法が適用されるので、当然それらの書面の様式や内容は日本語で書かれたものが原則とならざるを得ない。
しかし、契約の相手方が全く日本語がわからなければ、契約は有効に成立しないので(民法第176条)、その場合には、その外国人の国の言語に翻訳したものを添付し、その国の言語で説明することが必要となる。
また、通訳を通して契約をした場合には、後日の紛争を避ける意味で、買主である当該外国人のほか、通訳の人にも売買契約書と重要事項説明書に署名・押印(サイン)してもらうなどの注意が必要となる。
なお、通訳を付けて契約をする場合には、あらかじめ買主である外国人から、当該売買契約書および重要事項説明書の内容について通訳させる旨の委任状を受領しておくことも重要である。
(公財)不動産流通推進センターHP 不動産相談 売買事例0703-B-0006 『外国人に不動産を売る場合の契約方法』より
(注)不動産流通推進センターは掲載日現在の法令に依って掲載しています。『法例』はその後全文改正され『法の適用に関する通則法』となりました。
上記で示されている契約方法の注意点は、下記の3つです。
1.契約書等は日本語で作成する。
2.通訳を付ける場合、その方の署名・捺印も要する。
3.通訳を付ける場合、「通訳させる旨の委任状」を要する。
以下に1つづつ、少し細かく見ていきましょう。
1.不動産売買の買主様が外国人の方の場合でも、契約書等は日本語で作成する
買主様が日本国内に在住する外国人の方(実際には、上述した中長期在留者になるかと思います。)であっても、日本国内で不動産の売買契約を締結する場合、大前提として、その契約に適用される法律は、日本国の法律になるとされています。
また日本においては、宅地建物の取引に宅建業者が携わる場合、宅建業法が適用され、重要事項説明書を作成して、買主様にそれをご説明した後に、作成された売買契約書を用いて売買契約を締結することになっています。
この点についても、「日本国内で不動産の売買契約を締結する場合、適用される法律は日本国の法律」という大前提により、重要事項説明書や不動産売買契約書の洋式は、日本語で作成するのが原則となります。
また重要事項説明においても、日本語で行うことが、原則となるとされています。
2 .不動産売買の買主様が外国人の方で通訳を付ける場合、その方の署名・捺印も要する
そもそも、契約を締結しようとする不動産売買契約が有効に成立するためには、買主様となる外国人の方が、重要事項説明書や契約書の内容を解っていることが前提になります。
したがって、買主様が日本語がわからない等の場合には、必要に応じてそれら書類をその方の母国語に翻訳したものを添付したり、内容説明に通訳を付ける必要があったりします。
上記で、不動産を購入しようとする外国人のお客様が、日本語が解らない場合には、お知り合いの方でもいいですし、専門業者に依頼して頂いてもいいので、お客様の母国語と日本語の双方が解る方を、間に介す必要があるとご説明しました。
買主様側仲介として、日本語が解らない外国人のお客様に直接携わる場合には、間に入って頂いたその方から、お客様に対し、「契約等が日本語が原則であること、必要に応じて翻訳や通訳が必要であること」を、まずご説明頂く必要があります。
なおこういう場合、契約書等の翻訳は、有償で専門業者に外注されるケースが多いようですが、それらのご説明については、間に入ったその方自らが通訳されるケースが多いようです。
通訳を通して契約した場合には、契約当事者である買主様に加え、通訳をして頂く方についても、売買契約書と重要事項説明書に、署名・捺印をして頂く必要があります。
特に通訳を担う方が、専門業者等の方でなく知人等の場合には、ご自身にも署名・捺印が必要であることを、予めしっかりお伝えしておくことが、契約等をスムーズに行うためにも重要であるようです。
3.不動産売買の買主様が外国人の方で、通訳を付ける場合、「通訳させる旨の委任状」を要する
なお、不動産の買主様となる外国人の方が日本語がよく解らず、通訳が付くことになる場合には、買主様となるその外国人の方から、「通訳させる旨の委任状」を、受領しておく必要があるとされています。
「私は○○○の不動産の売買契約に際し、その通訳を□□□に委任します」といった趣旨の委任状です。
委任者が不動産の買主様となる外国人の方で、受任者が通訳を担う方になります。
その委任状を仲介業者が受領し、その上で重要事項説明等を進めていくことになります。
そして、重要事項説明書と売買契約書に予め通訳者の署名・捺印欄を設けておき、その欄に署名・捺印を頂くようになります。
不動産売買の買主様が外国人の場合における、住宅ローンの注意点
上述の通り、日本に在住する外国人の方が不動産を購入する場合、その多くが、在留管理制度における中長期在留者(この記事では、特別永住者については言及しません。)になろうかと思います。
個人の方が不動産を住宅目的で購入する場合、一般的に住宅ローンを用いますが、住宅ローンは返済が長期に渡り、かつ中長期在留者の方々には、永住権が無いことから、中長期在留者の方々への住宅ローンの融資は、ハードルが高いです。
とは言え近年は、外国人の方々による日本の不動産の購入が増加傾向にあることから、様々な金融機関が、融資を実施しているようです。
しかしその審査自体は、やはり難易度は低くは無いようです。
不動産を購入しようとするお客様が、日本在住の外国人である場合は、融資可能な金融機関を探すと共に、出来れば自己資金で購入可能な物件をご検討頂くよう、ご誘導するのが望ましい場合があるようです。
不動産売買の買主様が外国人の場合における、司法書士への依頼の注意点
不動産を購入しようとするお客様が、日本在住の外国人である場合、決済・引渡し時に登記業務を担う司法書士の方の選定にも、やはり注意を要するようです。
司法書士の方によっては、外国人の方の登記業務が、どちらかと言えば不得手である方もいらっしゃるようです。
不動産を購入しようとするお客様が、日本在住の外国人である場合には、その辺りの経験がある司法書士の方に依頼するのが望ましいようです。
まとめ
いかがでしたか?
日本在住の外国人の方の不動産の購入に携わる場合には、日本の方の場合には無い、注意すべき点があるので、その点をしっかり押さえることがポイントであるようです。
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□日本語が解る方を間に介することの重要性
不動産を購入しようとする外国人の方が、日本がよく解らない場合、その方の母国語と日本語の双方が解る方を、間に介することがポイントになります。
□中長期在留者と在留カード
日本在住の外国人の方で、不動産を購入使用とする方は、中長期在留者に相当する方が多い。
中長期在留者の方は、在留カードの交付を受けている。
□中長期在留者の本人確認
中長期在留者への犯罪収益移転防止法に基づく本人確認(取引時確認)における本人確認書類→在留カード。
□不動産売買の買主様が外国人の場合における、契約の注意点
1.契約書等は日本語で作成する。
2.通訳を付ける場合、その方の署名・捺印も要する。
3.通訳を付ける場合、「通訳させる旨の委任状」を要する。
□不動産売買の買主様が外国人の場合における、住宅ローンの注意点
取り扱い金融機関は増えているもののハードルは低くはない。
自己資金で購入できる物件提案が好ましい場合あり。
□不動産売買の買主様が外国人の場合における、司法書士の依頼の注意点
経験のある司法書士に依頼するのが望ましい。
この記事は、以上となります。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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