宅地建物の売買において、売主が宅建業者だったら、宅建業法による制限がかかりますよね。
いわゆる8種制限です。
でも実は宅建業者でなくても、制限がかかる場合があるのをご存じですか?
消費者契約法による制限です。
この記事では、消費者契約法が適用される不動産売買契約とはどういうものか、またそれが適用される場合、とりわけ契約不適合責任はどう扱われるかについてご説明します。
消費者契約法は、宅建試験においても特に問われなかったりするので、経験豊富な不動産売買営業員でも、よくご存じでない方がいたりします。
でもとても大事な決まりごとなので、この機会に是非押さえてしまいましょう!
では、どうぞ。
消費者契約法が適用されなさそうで、適用される可能性がある不動産売買
例えば、永らく専業農家をやられていた方が、大東建託さん等から賃貸経営をお勧めされ、一部農地を転用してアパートを2棟、賃貸戸建て1戸を建て、農業する傍ら、それらを賃貸経営し始めたとします。
そして十数年後、ご高齢になったその方は相続人も居ないことから、それらを売却したとします。
そのうちの戸建てを、空室状態で、個人の方が居住用として購入したとします。
さてこの場合、「売主は契約不適合責任を追わない」とする特約は有効でしょうか?
答えは「有効とは言い切れない」、すなわち「無効となる可能性がある」です。
消費者契約法が適用されるのは、契約の当事者が消費者と事業者の場合です。
不動産売買の実務においては、私の勤務先が所属する全国宅地建物取引業協会の契約書の雛形についていえば、売主が事業者、買主が消費者の場合を想定したものが用意されています。
ここで、この契約書の採用基準において、判断が難しいのが、売主である事業者です。
売主が法人であり、買主が個人の方であれば、採用すべき契約書の雛形は、迷わず消費者契約法適用の契約書でしょう。
判断しづらいのが、個人でありながら事業を行っている方の場合です
消費者契約法では個人事業主でも、事業として、または、事業のために契約の当事者になるなる場合、事業者としています。
したがって上記例の農家である売主様は、消費者契約法における事業者とみなさらる可能性があります。
買主様が個人の場合、消費者契約法が適用される可能性があります。
契約不適合責任を追わないとする特約を設けたとして、万が一買主様がそれを不服として裁判で争うことになった場合、裁判所がその特約は無効であると判断する可能性がある、ということです。
このケースでは、消費者契約法が適用されることを想定し、消費者契約法適用の売買契約書による契約が望ましいと言えます。
消費者契約法が適用される場合の契約不適合責任
消費者契約法が適用される不動産売買の場合、契約不適合責任はどう扱われるでしょう?
以下に全国宅地建物取引業協会連合会の、消費者契約法が適用される場合の契約書の雛形をベースに、確認することにしましょう。
契約不適合責任を完全に無効とする特約を付すことはできない
消費者契約法が適用される場合、売主の契約不適合責任を完全に無効とする特約を付すことはできません。
付した場合、その特約は無効になます。
契約不適合責任を負う期間を著しく短くすることはできない
売主が契約不適合責任を負う期間を、著しく短くする特約を付してしまうと、裁判で無効たされる恐れがあります。
現に機会を3ヶ月とした特約が無効になった判例が現にあります。
改正民法に従って買主が不適合を知った時から1年間とするか、自ら売主制限と同じように、引渡しから2年とすれば、有効な特約になるとされています。
雛形では、それより売主負担を軽くし、引渡しから1年としいます。
契約不適合責任における買主の代金減額請求権について
改正民法においては、契約不適合責任の1つとして、買主は、直せるものは催告のうえ、また直せないもの等は催告不要で、代金減額請求ができるとそれています。
しかしこの代金減額請求は、一般消費者用の売買契約書の雛形においては、条文に設けられていません。
しかし消費者契約法用の雛形においては、自ら売主の雛形と同様に、予めこの条文が付されています。
消費者契約法適用の場合の損害賠償金額の予定について
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する場合には、平均的な損害の額を超える損害賠償額は無効となります。
具体的に、自ら売主制限と同様に、20%を上限に定めています。
ただし実務においては、10%とする場合が多いようです。
消費者契約法適用の場合の手付解除期限について
自ら売主制限が適用される場合には、手付金を放棄あるいは倍返しによる契約解除について、日数による期限を設けることはできません。
では消費者契約法が適用される場合、この点はどうなるのでしょう?
全国宅地建物取引業協会連合会の雛形においては、この点は一般消費者用の雛形と同じです。
すなわち、手付解除の日数期限を設けることごできるとしています。
消費者契約法適用の場合の付帯設備の補修・損害賠償について
全国宅地建物取引業協会連合会の雛形においては、消費者契約法が適用される場合、付帯する設備に不具合がある場合、引渡し後30日以内通知があれば、売主は補修・損害賠償の責任を追うこととしています。
消費者契約法と宅建業法の自ら売主制限
宅地建物の売買において、消費者契約法と宅建業法の自ら売主制限が重なった場合、宅建業法の自ら売主制限が優勢されます。
ただしこれは双方が重なった場合であって、重ならない部分について消費者契約法が適用される場合は、適用されます。
実際にそのような判例も出ています。
宅建業法の自ら売主制限では、売主が買主に不利益になることをわざと伝えなかった結果、買主がその事実が存在しないと誤認した場合に対する措置についての制限は特にありませんよね。
でも消費者契約法においては、売主である事業者が買主である個人にそのようなことをしたら、承諾の意思表示を取り消すことができるとされています。
このことは、宅建業法の自ら売主制限と消費者契約法が重なり合うことではありません。
こういう場合は、消費者契約法が適用されます。
判例においても、消費者契約法に基づく、事業者による消費者への不利益事実の付告知を根拠に、契約解除になっています。
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