【不動産賃貸】月極駐車場の契約で重要事項説明が不要な理由とは

月極駐車場契約だって立派な不動産取引なのに、重要事項説明をしないのはなぜ、と疑問に思いませんか?

でもこの記事を読めば、その辺りがスッキリします。

この記事では、月極駐車場の契約に重要事項説明が不要な理由をご説明します。

この記事を読み終えたら、その点が明らかになるとともに、宅建業法に対する理解も深まりますよ!

では、どうぞ。

目次

月極駐車場と宅地建物取引業法

月極駐車場の契約って重要事項説明しなくて本当にいいんでしょうか?

本当はしなければいけないのに、取引としては軽い(言葉は適切ではありませんが)から、しないが当たり前になっているのでしょうか?

あるいは、本当はどこの業者もしていて、していないのは実は自分の勤務先業者だけだったりするのでしょうか?

何だか不安になりますね。

でもご安心ください。

実は月極駐車場の契約では、本当に重要事項説明をしなくてよい、とされています。

なぜでしょう?

結論から先に申します。

実は月極駐車場は、「宅建業法でいう宅地」でも「宅建業法でいう建物」でもない、とされているからです。

重要事項説明は、宅建業者が「宅建業法でいう宅地」か「宅建業法でいう建物」を仲介する場合に、賃借人に対して実施します。

でも月極駐車場は、「宅建業法でいう宅地」でも「宅建業法でいう建物」でもないので、宅建業者がそれを仲介しても重要事項説明はしなくてよい、とされているのです。

月極駐車場が「宅建業法でいう建物」でないという点は常識的にわかると思います。

問題は、月極駐車場が「宅建業法でいう宅地」ではない、という点です。

なぜ、月極駐車場は「宅建業法でいう宅地」でない、と言い切れるのでしょう?

そのご説明に入る前に、そもそも「宅建業法でいう宅地」とはどういうものか、確認しておきましょう。

「宅建業法でいう宅地」とは

「宅建業法でいう宅地」とは、下記の①、②、③のどれかに該当する土地のことです。

①.現在、建物が建っている土地
②.①ではないが、建物を建てる目的で取引する土地
③.①でも②でもないが、用途地域内の土地(ただし、現在、道路・公園・河川・広場・水路である土地を除く)

したがって月極駐車場が、用途地域内におれば「宅建業法でいう宅地」であってもよさそうですよね。

しかしそうではない。

なぜそう言い切れるのでしょう?

「月極駐車場という施設」ということについて

月極駐車場は「宅建業法でいう宅地」ではないわけですよね。

では一体何なのでしょう?

実は、月極駐車場は「駐車場という施設」として扱う、とされています。

月極駐車場は「施設」であり、「土地」ではない、ということです。

月極駐車場は、住居系の用途地域にも、商業系の用途地域にも多く見受けられますよね。

しかし、それらは「土地」としては扱われず「施設」として扱われる、よって「宅建業法でいう宅地」ではない、ということなのです。

「月極駐車場という施設」として扱われないケース

ただしここで言う「月極駐車場」という言葉には、少しだけ注意が必要です。

ここで言う月極駐車場とは、「車1台ごとの月極駐車場」に限られます。

下記のようなケースでは、「月極駐車場という施設」としては扱われません。

【事例1】

BさんがAさんから用途地域内にある土地を借り、そこを月極駐車場としてCさん・Dさん・Eさんに貸し出すとします。

この場合の、賃貸人をAさん、賃借人をBさんとする取引の対象不動産は、土地として扱われます。更にこの土地は用途地域内にあります。よってこの対象不動産は、「宅建業法でいう宅地」になります。

もし宅建業者がAさんとBさんの取引を仲介したら、Bさんに重要事項説明をしなければなりません。報酬も、宅建業法の規定の範囲内で受領しなければなりません。

【事例2】

2台目駐車場を探しているbさんが、aさんから用途地域内にある家庭菜園用地の一分を借り、そこに自分の車を駐車することにしたとします。

この場合のaさんとbさんの賃借の対象不動産も、「月極駐車場という施設」ではなく「宅建業法でいう宅地」になります。

もし宅建業者がaさんとbさんの取引を仲介したら、やはりbさんに重要事項説明をしなければなりません。やはり報酬も、宅建業法の規定内で受領しなければなりません。

【事例3】

これは少しこの記事の本筋とはずれる事例ですがお示しします。

とある物流会社が、市街化調整区内にある土地を借り、そこを自社のトラックの駐車場として使用することにしたとします。

この場合の賃借の対象不動産は、「月極駐車場という施設」でもなければ、用途地域内でなく市街化調整区域内にあるということで、「宅建業法でいう宅地」でもない、ということになります。

以上、事例を3つ見て参りましたが、その不動産が「月極駐車場という施設」として扱われるためには、いわゆる通常の「車1台ごとの月極駐車場」である必要があるわけです。

お部屋探しのお客様がお部屋と一緒にお借りになる月極駐車場や、オーナー様から管理を任されている月極駐車場などは、一般的には「車1台ごとの月極駐車場」かと思います。「駐車場という施設」と見て良いでしょう。

しかし中には「月極駐車場という施設」なのか、「宅建業法でいう宅地」なのか、判断がつかない場合もあるかと思います。

そのような場合は、上司や先輩、あるいは宅建協会等に確認して、明確な回答が得られればそれに越したことはないです。

しかし確認しようが無い場合や、確認したけで明確な回答が得られない場合もあるかと思います。

そういう場合はやはり念のため、「宅建業法でいう宅地」として扱い、仲介に入っていたらしっかり重要事項説明も実施しておくと良いでしょう。

「月極駐車場の使用は賃貸借とまでは言えない」とする見方について

ここで少し難しいと申しますか、ややこしいご説明をします。

ただしこのご説明に捕らわれなくても、その不動産が「月極駐車場という施設」か「宅建業法でいう宅地」かの判断基準に変化は生じません。

参考としてお読み頂けたらと思います。

業界に精通していらっしゃる方々の中には、車1台ごとの月極駐車場の使用は、賃貸借とまでは言えない、とおっしゃる方がいらっしゃいます。

賃貸借では一般的に、賃借人の対象不動産に対する占有権はとても強いです。

しかし、車1台ごとの月極駐車場使用では、そこまで占有しているとは言えない、そこまで占有する必要がない、よって賃貸借とまでは言えない、とする見方です。

ただ一方で、不動産適正取引推進機構の月極駐車場に関する事項の記載箇所や、全国宅地宅建取引業協会が出している駐車場使用契約書の書式の中では、現に「賃貸借」という言葉が登場します。

この記事では、「車1台ごとの月極駐車場使用が賃貸借に当たるかどうか」についての言及は控えます。

ただそういう見方があるという点だけご紹介申し上げます。

なお繰り返しですが、月極駐車場の利用が賃貸借に当たろうと当たらなかろうと、その不動産が「月極駐車場という施設」か「宅建業法でいう宅地」かの判断基準に変化は生じません。

この点はしっかり押さえておきましょう!

まとめ

いかがでしたか?

この記事の内容を押さえ、是非月極駐車場の取引にも、安心感と自信を持って対応して参りましょう!

最後にもう一度内容を確認しておきます。

□月極駐車場(車1台ごとに限る)とは

「宅建業法でいう宅地」ではなく「月極駐車場という施設」

→宅建業者が取引を仲介しても重要事項説明不要

□「月極駐車場という施設」として扱われないケース

・月極駐車場をやるために借りた用途地域内の土地→「宅建業法でいう宅地」

・車を駐車するために借りた用途地域内の土地(家庭菜園用地や空き地の一部)→「宅建業法でいう宅地」

「月極駐車場という施設」として扱われるのは「車1台ごとの月極駐車場」に限る。

□月極駐車場の使用は賃貸借か

「月極駐車場の使用は賃貸借とまでは言えない」とする見方もある。

以上になります。

最後までお読み頂いてありがとうございました!

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 勉強になりました。
    宅建士の試験に受かったものの、実務経験がほとんどなく、親会社のビルの一部の立体駐車場の仲介だけしています。
    そしていきなり別の宅建士に、取引台帳作ってないの?あり得ない!資格持ってんだろ的なことを言われました。
    こういう場合も必要なのでしょうか

    • まろんさん、コメントありがとうございます。
      駐車場は宅地建物ではないので、宅建業法による取引台帳作成義務はないです。
      その方は、お間違いのようですね。
      ただ会社によっては方針として、作っているところはあるかもしれません。
      宅建士、お持ちなんですね。
      今は実務に活かせてないようですが、早い段階で習得されたことは、今後の強みかと存じます。
      頑張ってください。

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