不動産屋で働いていて、住居賃貸から店舗等事業用賃貸に移ってまだ日が浅いと、知らない言葉が多くて辛いですよね。
例えば重飲食。
他業者様もお客様も、皆この言葉を「知ってて当たり前」みたいな体(てい)で言ってきませんか?
意味を知らないビギナーとしては、聞いてて嫌な汗が出てきそうですよね。
でも、もう大丈夫です!
この記事を読めば、重飲食が分かります!
この記事では、重飲食という言葉の意味を捉えつつ、不動産の店舗賃貸営業員が重飲食店舗に関わる際に押さええおきたいポイントをご説明します。
この機会に重飲食を押さえ、他業者様やお客様とのコミュニケーションを、より円滑なものにしていきましょう!
では、どうぞ。
重飲食とは
さてこの重飲食という言葉、果たしてどういう意味なのでしょう?
他業者様やお客様との会話の中で、何となく「色々と作り込む料理のことだろう」という予測はつきますよね。
まさにその通りで、重飲食とは調理の過程で強い火や熱を使い、煙がモクモク出たり、きつめの臭いが放たれたりする業種のことです。
ラーメン、焼き肉、焼き鳥、天ぷら、唐揚げなどがそうです。
では重飲食という言葉は、何らかの法令等で定義付けされているのでしょうか?
実はそうではありません。
もちろん重飲食とされる業種を、規制する法令はあります。
調理で火を使用するのであれば、消防法の規制がかかりますし、飲食店である以上、食品衛生法の対象となります。
しかし「重飲食とはコレコレコウイウ業種のことです」という定義付けは、どの法令もしていません。
では重飲食とそうでないものとの線引きは、どうなっているのでしょう?
実はこれも、明確な線引があるわけではありません。
したがって同じ業種について、Aという重飲食不可物件では不可だけど、Bという重飲食不可物件では可、というケースが稀にあります。
明解なようで、案外曖昧ですね!
実は重飲食という言葉は、飲食店舗に関わる宅建業者やオーナー様、飲食業者様や内装業者様ぐらいしか使用しません。
使用範囲が極めて狭い、限定的な言葉なんですね。
決して堅苦しい専門用語でなく、むしろ業界用語に近い言葉と言えそうですね!
重飲食の可否を決める要因3つ
ここまでで重飲食は、法令で定義づけらけられているわけでもなければ、慣例で明確な線引きがあるわけでもないことが分かりました。
ではその物件で重飲食が出来るかどうかは、何によって決まるのでしょう?
この点を掘り下げていくと、住居賃貸等お部屋探しでも、類似のケースがあることが分かります。
例えば、ピアノ使用の可否です。
住居賃貸において、その物件でピアノ使用が出来るかどうかは、主に下記の3つの要因で決まりますよね。
・その物件の周辺環境
・その物件自体の構造や設備
・貸主様の意向
その物件で重飲食が出来るかどうかも、法令でも何でもなく、実はこの3つの要因で決まります。
以下に1つづつ、見ていくことにしましょう。
周辺環境が重飲食の可否を決めるケース
例えば閑静な住宅街で、狭いところに住居が密集しているような場所では、ピアノの使用が不可だったりしますよね。
重飲食もそういう面があります。
例えば、2階以上が住居の集合物件の1階部分に、煙りモクモキの焼き鳥店が入ったらどうでしょう?
上の住居の方々からクレームが来かねませんよね。
また上階や横隣りが美容サロンやブティックだったら、その下や隣りで豚骨ラーメンのお店は厳しいと思われます。
このようにその物件で重飲食が出来るかどうかは、その物件の周辺環境に左右される場合があります。
物件自体の構造や設備が重飲食の可否を決めるケース
例えば木造2階建のアパートの2階部分では、ピアノの使用は不可だったりしますよね。
それは構造的に、木の床がピアノの重さに負けてしまう恐れがあるからでしょう。
重飲食もそうです。
その物件自体の構造や設備が、出来る出来ないを決める場合があります。
例えば焼き肉店や焼き鳥店では、高機能な排煙設備が必要です。
そういう排煙設備が予め備わっているか、備えることが可能な構造でないと、焼き肉店や焼き鳥店はできません。
また中華料理店や天ぷら屋では、それらを調理するのに充分な加熱設備が必要です。
これもやはり、その物件にそういう設備が備わっているか、備えることが可能な構造になっている必要があります。
このように重飲食が出来るかどうかは、その物件自体の構造や設備に大きく左右されます。
(注)
この記事では設備という言葉を、「建物に備わっている物全般」という意味で用いています。
いわゆるサービス(設備)品との対比としての用いり方とは異なります。
貸主の意向が重飲食の可否を決めるケース
環境面に問題なく、建物自体の構造や設備面にも問題ない、でもピアノの使用は不可という場合がありますよね。
こういう場合、貸主様の意向によって不可としているのが一般的ですよね。
重飲食も同様です。
繁華概の路面にあって環境面の問題は無く、スケルトン渡しなのでゼロから重飲食向けの店作りが可能、でも重飲食不可という物件があります。
こういう場合、不可の理由は貸主様の意向による場合が多いです。
もっとも貸主様としては、貸主様なりの不可理由があるようです。
一般的に重飲食は、物件に負担がかかると言われています。
設備など、どうしても大きく重たい物を必要とする場合が多いです。
この点を懸念される貸主様は多いです。
また一度物件に染み付いた臭いが、なかなか抜けないのでは、と心配される貸主様もいらっしゃいます。
実際には、賃借人様がしっかり店作りを行うことや、スケルトン戻しを担う業種様が入念に作業をすることで、臭いが気にならなくなるケースはあるようです。
とは言え一度抱いたそのようなイメージは、なかなか払拭できない場合が多いようです。
また貸主様によっては、物件に一度重飲食が入ってしまうと、その後他の業種が入りづらくなるのでは、と心配される方もいらっしゃいます。
実際には、後から別業種や別用途が入ることは普通にありますが、貸主様方のそのようなお考えは、ある意味根強いです。
このように重飲食は、貸主様の意向によって出来ない場合があります。
店舗賃貸等テナント営業員が重飲食可の物件に客付けする際のポイント3つ
ここまでで、重飲食が環境面や物件の構造・設備面で制約を受け、貸主様の意向のも左右されることが確認できました。
では私たち宅建業者の店舗等テナント営業員が、重飲食が可能な物件に関わる場合、どういう点に気をつければ良いのでしょう?
以下に、重飲食可能な物件に客付けする場合のポイントを見ていきましょう!
それは主に以下の3つです。
(注)
重飲食可能物件を元付け業者として扱う際のポイントは、この記事では割愛します。
重飲食可能な居抜き物件はライバル多数
様々な制限を受ける重飲食は、実施可能な物件数がどうしても不足しがちになります。
そしてお客様が居抜き物件をご希望となると、その状況は更に強まります。
一般的に居抜き物件は開業コストを軽減できるメリットがあり、お客様方からは根強い人気です。
お客様が重飲食可能な居抜き物件をご希望の場合、先に物件探しを開始した方々が、何名も出待ちしている可能性が高いです。
そのような背景から重飲食可能な居抜き物件は、募集開始早々に申込者が殺到する場合があります。
そういう場合、貸主様は先着順でなく、申込者の中から最も属性の良い方を選定する傾向にあります。
重飲食可能な居抜き物件は、独立開業のお客様方も希望されると思います。
しかし一方で、開業実績のある増店のお客様方にも人気です。
独立開業のお客様と増店のお客様が競合した場合、貸主様は増店のお客様に貸し出しをご希望する傾向にあります。
お客様が新規開業の方で、なおかつ重飲食可の居抜き物件をご希望の場合は、場合によっては非常にハードルが高いことを、予め申し添えておくと良いです。
また一方で客付け業者としては、日々の新着物件チェックを強化し、重飲食可の居抜き物件が出たら、直ちにお客様に提案するようにしましょう。
打ち出しが「重飲食不可」でも、物元への営業可能業種は要確認
レインズ等物件情報で貸店舗・貸事務所を閲覧していると、「重飲食不可」と打ち出している物件をよく目にすると思います。
そういう物件であっても、物元業者様に業種を伝え、可否の判断を仰ぐようにしましょう。
上記で申し上げた通り、重飲食という言葉には明確な線引きはありません。
こちらが重飲食だから無理だろうと思っていても、物元側では可としている場合が稀にあります。
焼き肉や焼き鳥など重飲食として揺るぎない業種もありますが、パスタや蕎麦など、判断が別れる場合もあります。
また業種で判断できない場合、具体的なメニュー内容で判断されます。
その場合、メニューを制限すれば可となる場合が以外に多いです。
重飲食不可物件への相談の申し入れ
重飲食不可物件であっても、借主様側の費用負担で設備面を改善するなどで、賃借可能となる場合が稀にあります。
多いのが排煙設備の改善です。
店の煙が近隣に広がってしまう問題を、排煙設備をずっと上のほうまで延ばすことで回避する、といったものです。
ただしこの場合、借主予定者様には高額な費用負担が想定されます。
内装業者様による見積り等を検討した結果、それであれば他の物件を探します、とおっしゃる場合も多いです。
また借主様側の費用負担で問題解決が図れることが確認できても、やはり重飲食不可であることに変わりはない、といったケースのほうが多いようです。
軽飲食とは
重飲食とは対照的な言葉として、軽飲食というのがあります。
やはり飲食店舗に関わる宅建業者やオーナー様、飲食業者様や内装業者様ぐらいしか使用しない言葉です。
臭いが強く煙りがもくもく出る重飲食とは対照的に、あまり火を使わない業種が軽飲食と言われます。
ドリンク類をメインとし、フードはそれこそ軽食のみを提供するような業種です。
具体的にはカフェなどがそうです。
軽飲食は、基本的には飲食可能物件であれば可能です。
また飲食自体が不可の物件であっても、軽飲食だったら可という場合が稀にあります。
但し重飲食同様、軽飲食とそうでないものとの明確な線引きがあるわけではありません。
業種についてはしっかり確認するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
いろいろと制限が多い重飲食ですが、宅建業者として実際に関わると、取引の幅がグッと広がりますよ!
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□重飲食とは
焼き肉、焼き鳥、天ぷら、唐揚げなど、調理の過程で強い火や熱を使い、大量の煙が出たり、きつめの臭いが放たれたりする業種のこと
□重飲食の可否を決める要因3つ
・その物件の周辺環境
・その物件自体の構造や設備
・貸主様の意向
□重飲食可物件への客付けポイント3つ
・重飲食可の居抜き物件はライバルが多い点を押さえる
・「重飲食不可」の打ち出しでも物元に要確認
・借主側費用負担による設備改善で重飲食可となる場合あり
□軽飲食とは
カフェ等、火や油をあまり使用しない業種
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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