不動産会社で賃貸営業をやっていると、いろいろな日にちが出てきて混乱しませんか?
契約が始まる際は契約日・契約開始日・引渡し日が、また終わる際には退去日・明渡し日・解約日が出てきますよね。
それぞれ何がどう違うのでしょう?
この記事では、不動産賃貸に登場する様々な日にちの意味について、初心者の方向けにご説ます。
この記事を読めば、賃貸借契約の日にちのことがクリアになりますよ!
では、どうぞ。
不動産賃貸の契約日・契約開始日・引渡し日について
まずは賃貸借契約が始まる際に関係してくる、契約日と契約開始日の違いについて見ていきます。
なお引渡し日についても、一緒に確認しておきましょう。
契約(締結)日とは
契約日とは、賃貸借契約書に実際に記名・押印した日のことです。
契約締結日とも言います。
賃貸借契約書の記名・押印欄の近くに日付を書く欄がありますよね。
あの欄に記載される日にちが契約(締結)日です。
一般的に契約(締結)日は、後述する契約開始日と同日、もしくはそれより前になります。
かつ重要重要説明を行った日と同日、もしくはそれより後になります。
賃貸借契約への記名・押印には、賃貸人、賃借人、連帯保証人、賃貸人側仲介業者、賃借人側仲介業者等、複数の方々が登場します。
したがって実務においては、記名・押印がすべて揃った日を契約(締結)日とするケースや、契約開始日と同じ日を契約(締結)日とするケースなど、様々あるようです。
また地域によっても違いがあるようです。
契約開始日とは
契約開始日とは賃貸借が実際にスタートし、賃料が発生し始める最初の日のことです。
賃貸借契約書で言えば、契約期間の「○○から□□まで」の欄の、○○に当たる日のことです。
引渡し日とは
引渡し日とは、今まで賃貸人様に備わっていた物件を支配できる権利を、賃借人様に移すの日のことを言います。
実務においては、賃借人様に鍵をお渡しすることを言います。
原則として引渡し日は、契約開始日と同日になります。
ただし賃借人様と管理会社のどちらか一方の都合で契約開始日に渡せない場合は、賃借人様都合だったら契約開始日よりも後、管理会社都合だったら前に渡すケースが多いようです。
不動産賃貸の退去日・明渡し日・解約日について
ここからは賃貸借契約が終わる際に関係してくる、明渡し日と解約日について見ていきます。
なお退去日という言葉のも、頻繁に出てくる言葉だと思います。
一緒に確認しておきましょう。
退去日とは
退去日とは、賃借人様が引っ越す日と捉えると分かりやすいです。
意味合いとしては、賃借人様が物件から出て行く日のことです。
賃借人様の退去に際し、原則的には日管理会社による退去確認が行われます。
賃借人様はその確認に立ち会うことを求められます(退去立ち会い)。
そして問題無かったら鍵をご返却頂き、明渡し(詳しくは後述します)完了となります。
したがって退去日はたいていの場合、明渡し日と同日になります。
また場合によっては、賃借人様が引っ越しだけ先に済ませ、退去立ち会いのために改めて物件にお越し頂くケースもあります。
この場合退去日は、明渡し日の前になります。
また実務においては、退去を明渡しとほぼ同一の意味として用いる場合もあります。
明渡し日とは
明渡し日とは、これまで賃借人様に備わっていた物件を支配できる権利を、賃借人様ご自身の物を全て退かした上で、賃貸人に戻して頂くことです。
実務としては、鍵をご返却頂くことで成立します。
したがって明渡し日は、賃借人様の退去の日と同日、もしくはそれより後になります。
また解約日(詳しくは後述します)と同日、もしくはそれより前になります。
賃借人様は解約日もしくはそれより前までに、物件を明渡さなければなりません。
解約日とは
解約日とは、実際に賃貸借契約が解かれる日、終了する日のことで、賃料がかかる最後の日のことです。
一般的には住居の場合は1ヶ月前、店舗事務所の場合は3ヶ月または6ヶ月前の予告をもって解約とするケースが多いです。
賃借人様は、遅くとも解約日までに物件を明渡さなければなりません。
契約(締結)日以降契約開始日前に、解約希望があった場合の処理
ここまで、不動産賃貸に関する様々な日にちの意味について確認しました。
ここからは、それらの日にちに関係する特殊なケースについて、その一般的な処理のされ方について見ていきます。
まずは契約(締結)日と契約開始日に関することです。
もし万が一、契約(締結)日以降契約開始日前に、賃借人様が解約したいとおっしゃたら、それはどのように処理されるのでしょう?
実は不動産の契約は、民法においては口約束でも成立するとされています。
でもそれだと揉めかねないので、書面で契約を交わします。
契約書の記名・押印欄の付近に「契約を結んだことを証するために…」というような文言があると思います。
賃貸借契約書に記名・押印することは、「私はこの賃貸借に契約しました」という証拠なわけです。
契約書を交わす理由はもう一つあります。
その不動産が宅地建物で、宅建業者が仲介に入った場合、賃借人様は重要事項説明を聞いて納得した上で契約することになっています。
以上のようなことから、契約の当事者が契約書に記名・押印するという行為は、たいへん重い行為として捉えられます。
ニュアンスとしては、「本当は口約束でも契約なんだろうけど、それだと微妙なので、契約書を交わしましょうね。その代わり交わした以上はお互い『これは絶対!』ということにしましょうね。」といった感じでしょうか。
つまりどう控え目に見積っても、契約書に記名・押印したら契約成立となるわけです。
したがってもし万が一、賃借人様が契約(締結)日以降契約開始日前に解約したいとおっしゃってきたら、実務においては中途解約として処理することとせれています。
もしその契約が1ヶ月前解約予告で、かつ短期違約金1ヶ月分だったら、賃貸人様はその総額の支払いを賃借人様に求め、賃貸人様や仲介業者に特に過失等が無かったら、お支払い頂くことになる可能性が高いわけです。
賃貸人様と賃借人様が解約書に記名・押印する行為はとても重い行為であること、そして契約(締結)日はとても重要な日にちであること、この2点はしっかり押さえておきましょう。
解約日までに明渡しが完了しない場合
不動産賃貸において、契約(締結)日と同様にとても重い扱いをする日があります。
明渡し日です。
賃借人様は、解約日までに物件を明渡さなければなりません。
全国の宅建業者の8割が加盟するとされる全国宅地建物取引業協会連合会の賃貸借契約書の定型書式には、解約日までに明渡しができなかったら、解約日の翌日から明渡し日までの日割り賃料の倍額を支払うこと、とあります。
円滑な賃貸物件管理には、賃借人様の明渡し日の遵守が欠かせないということなのでしょう。
この辺りのことは、業務区分で言えば管理部門の領域でしょうが、営業の方々もしっかり押さえておきたいところだと思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回の内容は、不動産賃貸に登場する様々な日にちのご説明でした。
日々の賃貸営業の実務に、少しでもお役立て頂けたら幸いです。
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□契約(締結)日
契約書に記名・押印した日。
□契約開始日
契約が開始する日。賃料が発生し始める日。
□引渡し日
物件を支配できる権利が賃貸人様から賃借人様に移る日。実務においては賃借人様が鍵を借り受ける日。
□退去日
賃借人様が物件から出ていく日。引っ越す日。
□明渡し日
賃借人様が物件内にある自分のものを全て退かせ、物件を支配できる権利を賃貸人様に戻す日。
□解約日
賃貸借契約が解かれる日。終わる日。賃料が生じる最後の日。
□契約(締結)日以降契約開始日前の解約
実務としては、中途解約として処理されるのが一般的。
□解約日までに明渡しが完了しない場合
賃借人様に、解約日の翌日から明渡し日までの日割り賃料の倍額の支払いが求められる場合あり(全国宅地建物取引業協会連合会なによる賃貸借契約書の定型書式)。
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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