【不動産賃貸】事業用建物の引渡しと明渡し、6つの基本パターン!

事業用建物の賃貸となると、事務所(オフィス)や店舗、更には倉庫などもあったりと、多種多様で難しい印象ありませんか?

実はこの記事を読めば、事業用建物賃貸のことが、スッキリ整理できます!

この記事では、事業用建物賃貸の引渡しと明渡しを、6つの基本パターンに分けてご説明します。

補足として、2つの応用パターンもご紹介します。

この記事を読めば、事業用建物賃貸の肝(きも)が理解でき、お客様にも、更には取引の相手方業者の方にも、きっと自信を持って対応できるようになると思います!

目次

事業用建物賃貸における「動産」の扱われ方

基本パターン6つのご説明に入る前に、事業用建物(事務所、店舗、倉庫など)の賃貸取引の現場で、非常によく用いられる言葉を3つご紹介します。

「設備」、「譲渡物」、「サービス(設置)品」です。

事業用建物には、スケルトン物件(詳しくは後述します)を除き、何らかの「動産」が付いています。

そしてこれら「動産」は、その扱われ方によって、「設備」、「譲渡物」、あるいは「サービス(設置)品」と呼ばれます。

「設備」、「譲渡物」、「サービス(設置)品」とは、それぞれ何なのでしょう?

順番に見ていきましょう。

「設備」とは

建物に付いていて、賃貸借対象不動産と一緒に、賃貸人から賃借人に貸し出される動産を「設備」とい言います。

「設備」の所有権は賃貸人にあります。

賃借人が普通に使用していて故障したら、賃貸人が修理しなければなりません。

「譲渡物」とは

引渡しと同時に、前の賃借人(あるいは賃貸人)から賃借人に譲り渡された動産を「譲渡物」と言います。

「譲渡物」には有償の物と無償の物があります。

「譲渡物」の所有権は賃借人にあります。

したがって賃借人は、明渡しの際にその「譲渡物」を撤去しなければなりません。

「サービス(設置)品」とは

所有権は賃貸人にありながら、特約などによって、故障した時の修理を賃借人がすることになっている動産を「サービス(設置)品」と言います。

「サービス(設置)品」の所有権は賃貸人にあります。

よって明渡しの際、賃借人に撤去義務はありません。

いかがでしょう。

ここまでで、事業用建物に付帯する「動産」が、それぞれどのように扱われた時に何と呼ばれるか、ご理解頂けたかと思います。

ここからこの記事の本題、「事業用建物賃貸での引渡しと明渡しの基本パターン6つ」をご説明して参ります。

基本パターン1.スケルトン物件→スケルトン物件

建物を支える柱、梁(はり)、床などの構造躯体のみで、それ以外のものが何もない状態の物件をスケルトン物件と言います。

いわゆるコンクリート打ち放しの骨組みだけの状態の物件です。

よく新築マンションなどで、1階が店舗用で2階以上が住居となっている建物ありますよね。この1階部分などがそうです。

そして、基本パターンの1つ目が、引渡しの現状がスケルトンで、明渡しに際しても、スケルトンに原状回復しなければならないパターンです。

賃借人は引渡しを受けたら、自らの費用負担ですべての動産を造作しなければなりません。

賃借人には費用が多くかかるデメリットがありますが、店造りを自由にできるメリットがあります。

基本パターン2.スケルトン物件+有償の譲渡物→スケルトン物件

基本パターンの2つ目は、引渡し時に前の賃借人が造作した動産を、新たな賃借人が有償の譲渡物として譲り受け、明渡し時にはそれらを撤去してスケルトンに戻さなければならないパターンです。

譲渡物の所有権は、引渡し前には前の賃借人に、引渡し後は新たな賃借人にあります。

したがってこのパターンの取引では、前の賃借人の明渡しと新たな賃借人への引渡しを同時に実施し、かつ譲渡物の譲渡も同時に実施することになります。

そしてこのような取引が、いわゆる居抜き取引と呼ばれるものです。

基本パターン3.スケルトン物件+無償の譲渡物→スケルトン物件

基本パターンの3つ目は、引渡し時には造作物を無償で譲り受け、明渡し時にはそれらを撤去してスケルトンに戻さなければならないパターンです。

前の賃借人が当初は有償譲渡するつもりだったけど、賃料の支払い困難などの理由からそれを断念し、かつ賃貸人が動産の残置を承諾し、一旦前の賃借人から賃貸人に引き継がれた動産を、新たな賃借人が無償で譲り受けるパターンです。

あるいは、完全にスケルトンに戻してもらうよりも、造作物の一部、例えばトイレや洗面台は残しておいてもらったほうが、次の賃借人が付きやすいと賃貸人が判断して残置を承諾した場合もこれに当たります。

また、天井に空調配管だけが残っている、などの状態で引渡された場合もこれに当たります。その空調配管が無償の譲渡物になります。

このパターンでは、賃貸借の対象はあくまでスケルトンになります。

一見どんなに立派な動産であっても、明渡し条件がスケルトン戻しでしたら、それらの動産は設備ではなくて無償の譲渡物になります。

繰り返しになりますが、譲渡物の所有権は賃借人にあります。

故障した時の修理は賃借人がしなければならない点に注意しましょう。

また引渡し前に、これら動産の撤去を賃貸人にお願いしても、お断りされる場合が多いのがこのパターンの特徴です。

無償の譲渡物を引き継ぐことが賃貸借の条件になっている場合が多いからです。

基本パターン4.設備付き物件→設備付き物件

設備付き物件とは、壁、床、天井が最初から備わっている物件です。

内装工事や造作物の造作などをしなくても、机なり棚なりの備品を置けば、事務所なり店舗なりの機能を果たせる状態の物件のことです。

駅前にあるオフィスビル群の各々の貸室などや、一般的な住居賃貸物件などもこれに当たります。

(注)「設備付き物件」という言葉は、特に不動産の専門用語というわけではありませんが、取引の現場ではよく用いられます。この記事でも、説明上使用することとします。

そして基本パターンの4つ目は、引渡しの現状が設備付き物件の状態で、明渡しに際しても、当初の設備付き物件の状態に原状回復しなければならないパターンです。

このパターンでは、クロスやカーペットが張り替えられ、清掃も行き届いたピカピカの状態で引渡される場合が多いです。

この場合、明渡し時もクロスやカーペットを張り替え、室内清掃もしっかりやるところまでを原状回復の範囲とするのが一般的です。

また逆に、一通り設備は揃っていますが、クロスやカーペットは前の賃借人が退去したままの状態で引渡される場合もあります。

その場合、新たな賃借人は引渡し後にクロスやカーペットを張り替る必要が出てきます。

しかし明渡し時の原状回復においては、その必要はないのが一般的です。

基本パターン5.設備付き物件+無償譲渡→設備付き物件

基本パターンの5つ目は、ベースは基本パターン4と同じ設備付き物件ですが、引渡し時に無償の譲渡物が付帯しているパターンです。

パーテーション、あるいは業務用エアコンなどが、無償の譲渡物として付帯されている場合がよくあります。

無償の譲渡物の所有権は賃借人にあります。

よって賃借人は、明渡しの際にそれら譲渡物を撤去しなければなりません。

この場合も、基本パターン3と同様に、引渡しを受ける前に対象動産の撤去を賃貸人にお願いしても、お断りされる場合が多いです。

しかし、小物でしたら応じて頂ける場合もあります。

基本パターン6.設備付き物件+サービス品→設備付き物件+サービス品

基本パターンの6つ目は、無償譲渡物ではなく、サービス(設置)品が付帯されているパターンです。

サービス(設備)品の所有権は賃貸人にあります。

壊れた時の修理は賃借人がしなければなりませんが、明渡し時に撤去する必要はありません。

事業用建物賃貸借では、やはり業務用エアコンなどがサービス(設備)品となっている場合が多いです。

ここまで、基本のパターン6つを見て参りました。

ここからは、少し応用的なパターンを2つご紹介します。

これらは基本パターンと較べ、少し変則的です。

しかし事業用建物賃貸ではよく登場します。

押さえておきましょう。

応用パターン1.通常「譲渡物」あるいは「サービス設置)品」として貸し出される動産を、「設備」として貸し出す

応用パターンの1つ目は、賃貸人が前の賃借人から引き継いだ動産を、新たな賃借人に「設備」として貸し出すパターンです。

一般的には、賃貸人が前の賃借人から引き継いだ動産は、「譲渡物」あるいは「サービス(設置)品」として新たな賃借人に貸し出されます。

しかし、それら動産が比較的新しく、状態が極めて良好だった時などに、賃貸人が自ら完全に所有し、賃貸借の対象となる不動産に組み入れて貸し出すパターンです。

以下が具体例です。

なお、これを上記の基本パターンに置き換えると、パターン1とパターン4の複合型であると言えます。

(具体例)

前賃借人は、スケルトンで引渡された物件を造作して飲食店をやっていましたが、やがて明渡しの時が来ました。

賃貸人の了承のもと、トイレだけ残置されることになり、賃貸人はその所有権を引き継ぎました。

そのトイレは状態も良好で、とても綺麗だったので、賃貸人はこれを「設備」とし、賃貸借対象不動産と一緒に貸し出すことにしました。

応用パターン2.通常「設備」として貸し出される動産を、無償の「譲渡物」として貸し出す

応用パターンの2つ目は、賃貸人が前の賃借人に「設備」として貸し出していた動産を、新たな賃借人に無償の「譲渡物」として貸し出すパターンです。

一般的に、前の賃借人に「設備」として貸し出された動産は、新たな賃借人にもやはり「設備」として貸し出されます。

しかし、それら動産があまりに古くなってしまた場合などに、賃貸人が、賃貸借の対象物をスケルトンのみとし、付帯の動産を無償の「譲渡物」として引渡すパターンです。

このパターンは、住居賃貸ではほとんどお目にかかりません。しかし事業用賃貸においては、ごくごく一般的に行われます。

この場合、気をつけなければならない点は、新たな賃借人の責任の範囲についてです。

新たな賃借人は、いわば古くて汚れたような印象の状態で引渡しを受け、自らの費用で改装し、明渡しに際しては、スケルトンへの原状回復義務を負います。

一見、新たな賃借人が損する印象の取引です。

しかし実際は、このタイプの物件は、目の肥えた事業主の方に人気物件だったりします。

それは、賃料が相場より安い場合が多い上、通常だと拒まれる、ラーメン店や焼き肉店なども営業できる場合が多いからです。

以下が具体例です。

なお、これを基本パターンに置き換えると、パターン3であると言えます。

(具体例)

クロス張り替えやハウスクリーニングなど一切されてない状態を現状とした、設備付き物件として引渡しを受けた前賃借人は、自らクロスを張り替え、パーテーションを施し、雀荘を営業していました。

そして、やがて時が経ち明渡しの時が来ました。

前賃借人は、パーテーションを撤去して原状回復しました。クロス張り替えや清掃は、原状回復に含まれないので実施しません。

前賃借人は、とても長い期間借り続けたので、貸室の表面には染みができ、水回りも汚れていました。

また、専有部内の配管の一部が水漏れを起こしていました。

賃貸人は、新たな賃借人への賃貸条件について、管理会社と協議しました。

その結果、賃貸借の対象をスケルトンのみとし、埋設された付帯の専有部配管を含めたすべての動産を、無償の「譲渡物」とすることとしました。

また、募集賃料を5000円下げ、物件に負担がかかるからという理由で拒んでいた重飲食(ラーメン店や焼き肉店など)も、募集対象とすることとしました。

まとめ

事業用建物賃貸仲介の現場では、取引が上記パターンのどれに該当するか、是非お考えになってみてください。

きっと、スッキリと整理がつくことと思います!

下記に改めて、要点を書き出しておきます。

□基本パターン

1.スケルトン物件→スケルトン物件
2.スケルトン物件+有償の譲渡物→スケルトン物件
3.スケルトン物件+無償の譲渡物→スケルトン物件
4.設備付き物件→設備付き物件
5.設備付き物件+無償の譲渡物→設備付き物件
6.設備付き物件+サービス(設置)品→設備付き物件+サービス(設置)品

□応用パターン

1.通常「譲渡物」あるいは「サービス設置)品」として貸し出される動産を、「設備」として貸し出す
2.通常「設備」として貸し出される動産を、無償の「譲渡物」として貸し出す

以上になります。

是非、この記事でご紹介したの基本パターン6つと応用パターン2つを押え、取引の幅を広げて参りましょう!

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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