賃貸でよく扱う「サービス(設置)品」、お客様に自信を持ってご説明できてますか?
「サービス(設置)品」は、実はベテランの方でも間違って理解している方がいらっしゃるなど、深掘りするとかえって解らなくなるような面があるように思います。
「サービス(設置)品」については、賃貸物件お引渡し後、トラブルに発生するケースも少なくないと言われています。
この記事では、「サービス(設置)品」について、初心者の方向けにご説明します。
是非「サービス(設置)品」についてもしっかりと理解し、より安全で快適な仲介をめざして参りましょう!
そもそも「サービス(設置)品」とは?「設備」と何が違う?
「サービス(設備)品(地域によっては残置物というようです)」とは、そもそもどういう物を言うのでしょう。
地域によって多少違いはあるようですが、概ね下記のような物かと思います。
「サービス(設置)品」とは
・前の賃借人が、自ら設置した物。
・退去の時、賃貸人の承諾を得て前の賃借人が置いていった物。
・新たな賃借人は他の設置物と同様に使用してよいが、故障した時の修繕は、賃借人自らの費用負担となる。
このような「サービス(設置)品」ですが、よく対比される物に「設備」があります。
「設備」については、不動産業に携わる方々はよくご存じかと思いますが、参考まで、確認しておきましょう。
下記の通りです。
「設備」とは
・賃貸借の対象物。当初から物件に備わっていた物。
・普通に使っていて壊れたり故障した時の修理・修繕は、賃貸人の費用負担になる。
「サービス(設置)品」、所有権があるのは賃貸人?賃借人?
このような「サービス(設置)品」ですが、深掘りしてみると、実は「解っているようで解っていない」点、多いように感じませんか?
例えば所有権。
ここでは、「サービス(設置)品」の所有権について、見ていくことにしましょう!
実は賃貸人にある「サービス(設置)品」の所有権
上記で対比した「設備」については、所有権が賃貸人にあることは、すんなり理解できると思います。
そもそも賃貸借とは、「賃貸人が賃料を得て自分の物を貸し出し、賃借人は賃料を払ってそれを借り受ける」ことを言いますよね。
そして「設備」は、このやり取りの範囲に含まれる物です。
だからもし、例えば「設備」としてエアコンが付いていたら、賃貸人は住居と一緒に自分の物であるエアコンも貸し出し、賃料の中にエアコンの貸し出し代も含まれていることになります。
では、もしそのエアコンが「サービス(設置)品」だったら、どのように扱われるのでしょう?
そしてその所有権は、賃貸人と賃借人のどちらにあるのでしょう?
結論から申します。
「サービス(設置)品」の所有権は、賃貸人にあります!
「民法」に見る、「サービス(設置)品」の所有権が賃貸人にある理由
「サービス(設置)品」の所有権が賃貸人にある理由を、引続きエアコンを例にご説明します。
前の賃借人がエアコンを自分で買って自分で付けた、この時のエアコンの所有権は、当然前の賃借人にありました。
でも前の賃借人は、エアコンを置いたまま退去しました。そして賃貸人はその状態を受け入れ、明渡しが成立したわけです。
やがてこのお部屋に、新たな賃借人が現れたとします。
そして賃貸人はこの新たな賃借人に、前の賃借人が置いていったエアコンを使用させることにし、物件引渡し後、新たな賃借人は、現にそのエアコンを使用したとします。
ここで一つだけ、硬い話をさせてください。
「民法」の登場です。
実は民法の第249条(無主物の帰属)というところに、「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」とあります。
これが、「サービス(設置)品」が賃貸人の所有物である根拠とされます。
明渡しが成立した段階で、前の賃借人は、当初自ら買って設置したエアコンの所有権を放棄したことになります。
この時点で、このエアコンの所有権が賃貸人に移転したと解せるか否かは一旦置いておくこととしますと、少なくともこの場合、「所有者は誰も居ない」という要件だけは明らかに成立したと言えます。
かくして、誰の物でもなくなったエアコンを、賃貸人は、新たな賃借人に使わせました。
実はこの、「新たな賃借人に使わせた」ことが、民法の第249条で言う「所有の意思をもって占有する」と解されるようなのです。
以上のことから、賃貸人は「その所有権を取得」したとなります。
「明渡し」に見る、「サービス(設置)品」の所有権が賃貸人にある理由
もう一つ、上記以外に「サービス(設置)品」の所有権が賃貸人と言える根拠があります。
「明渡し」です。
実は、賃貸人がエアコンの残置を認めて明渡しに応じたら、その時点で、そのエアコンの所有権を引き継いだことになる、とされています。
明渡しとは、前の賃借人の私物を空にして、お部屋を占有できる権利を賃貸人に戻すことを言います。
したがって、賃貸人が「駄目です、エアコンは撤去してください」と言ったら、前の賃借人は撤去しなければなりません。
にもかかわらず、賃貸人は残置を認めたわけです。これは所有権を引き継いだことになる、ということのようです。
もし賃貸人が、エアコンの残置を認めたくなければ、賃貸人は明渡しを拒むことができます。
更に言えば、もし前の賃借人が無断でエアコンを残置した場合であっても、賃貸人は、自らの費用負担でエアコンを撤去し、その費用を前の賃借人に請求するか、敷金から差し引くことも可能です。
賃貸人が、そのような措置をとらずに明渡しを受け入れてしまったら、原則としては、残置物の所有権を引き継いだと解されるようなのです。
「サービス(設置)品」の修繕を賃借人がしなければならない理由
ここまで、「サービス(設置)品」と「設備」の違いについて、また「サービス(設置)品」の所有権について見て参りました。
以上のように、実は「サービス(設置)品」の所有権も、「設備」と同じように賃貸人にあります。
ここで、また新たな疑問が浮かび上がって参ります。
ではなぜ、「サービス(設置)品」は、故障した時の修繕を賃借人がしなければならないのでしょう?
当初、前の賃借人が買って付けたからといって、その残置を受け入れて明渡しを受けた以上、その所有者は賃貸人です。
新たに賃貸借契約が成立し、そのエアコンを新たな賃借人に引渡した段階で、そのエアコンも、通常の「設備」と同一視してもよさそに思われます。
であれば、賃借人が通常利用して故障した場合、その修繕は賃貸人が負うはずです。
にもかかわらず、修繕は賃借人がすることになるのは何故でしょう?
実は、「特約」でそのように規定したから、というのが理由です。
「特約」で、例えば「リビングに設置されているエアコンはサービス設置品になります。故障した場合の修繕は、賃借人の費用負担で行うものとします」と規定したから、というのが理由なのです。
つまり、「前の賃借人が残置した物」だからといって、自動的に「サービス(設置)品」扱いになる訳ではない、ということのようです。
更には、自動的に「故障した場合、その修繕は賃借人の費用負担で行わなければならない」となる訳ではないようです。
したがって、もし特約等にそのような規定が特段無ければ、通常使用での故障の修繕等は、賃貸人が行うことになるようです。
「サービス(設置)品」に関して「特約」の定めにないことが起きた場合
これまで見てきた通り、「サービス(設置)品」については、一般的に「特約」等で「故障した場合の修繕は賃借人の費用負担となる」旨を定めます。
しかし実際には、物件引渡し後、「特約」の定めに無いことが起こる場合もあります。
ここでは、「サービス(設置)品」に関することで、起こりそうなこととその対応法を何点か見ていきましょう。
契約前の「サービス(設置)品」の撤去
もし契約前に、お客様から「サービス(設置)品」を撤去してほしいとら、どうなるのでしょう?
賃貸人が、あくまでも「『サービス(設置)品』付き物件」として貸し出したければ、お客様にそれをご納得頂くしかありません。
ご納得頂けない場合は、契約をご遠慮頂くしかありません。
撤去に応じる場合は、その費用は賃貸人の負担になります。
契約期間中の「サービス(設置)品」の撤去
ではもし、契約期間中に賃借人から「サービス(設置)品」を撤去してほしいと言われた場合は、どうなるでしょう?
賃借人は「サービス(設置)品」が付いていることを了承して引渡しを受けました。
賃貸人は、撤去を拒むことができるのが一般的です。
「古くて効かないため、新しいのを賃借人自ら買って付けたいから」など、撤去の希望に正当理由があるようでしたら、賃貸人は自らの費用負担で、撤去に応じる必要があるようです。
契約期間中に賃借人が「サービス(設置)品」を無断で外した
契約期間中に、賃借人が「サービス(設置)品」を無断で外した場合は、どうなるでしょう?
「サービス(設置)品」の所有権は、賃貸人にあります。人の物を無断で処分できません。
理屈だけで言えば、賃貸人に付け戻すよう主張されたら、賃借人はそれに応じざるを得ない、と言えるようです。
退去時に賃借人が「サービス(設置)品」を無断で持ち出した
ではもし、退去の際に、賃借人が「サービス(設置)品」を無断で持ち出したとしたら、どうなるでしょう?
「サービス(設置)品」の所有権は賃貸人にあります。人の物を無断で持ち出せません。
理屈だけで言えば、賃貸人に付け戻すよう主張されたら、賃借人はそれに応じざるを得ない、と言えるようです。
まとめ
いかがでしたか?
深掘りすると難しい「サービス(設置)品」ですが、是非この機会に整理し、今後の仲介の現場に生かしていきましょう!
最後にもう一度、「サービス(設置)品」とはどういうものか、ポイントを確認しましょう。
□「設備」との違い
・当初の所有者→前賃借人(「設備」では賃貸人)
・引渡し後の修繕→賃借人(「設備」では賃貸人)
□所有権が賃貸人にある理由(民法)
「新たな賃借人に使わせた」=「所有の意思をもって占有する」(民法第249条「無主物の帰属」より)
□所有権が賃貸人にある理由(明渡し)
「残置を容認して明渡しを受けた」=「残置物を引き継いだ」
□賃借人が修繕しなければならない理由
特約等で定めたから
□契約前にお客様から撤去してほしいと言われたら
撤去しない旨をお客様にご説明。ご理解頂けなかった場合、承諾あるいは契約見送り。承諾した場合の撤去費用は賃貸人負担。
□契約期間中に賃借人から撤去してほしいと言われたら
賃貸人は拒むことができる。賃借人の主張が正当な場合は、賃貸人の費用負担で撤去。
□契約期間中の賃借人による無断撤去
所有権は賃貸人。他人の物は無断撤去できない。賃貸人が再設置を主張したら、賃借人は応じざるを得ない可能性が高い。
□退去時の賃借人による無断持ち出し
所有権は賃貸人。他人の物は無断持ち出しできない。賃貸人が再設置を主張したら、賃借人は応じざるを得ない可能性が高い。
この記事は以上となります!
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (2件)
所有権は大家にあるのに、修繕費用は借り手とは何とも不公平な契約ですね。
エアコンも処分費がかかります。
もし残置物が耐用年数を超えていたら、入居後二年以内の故障は大家持ちにするとか、契約時に話を詰めておかないといけませんね。
totoさま、コメントありがとうございます。
サービス(設置)品は、サービス(設置)品という言われ方はされますが、所有権が賃貸人様にある以上、特約に何ら定めが無ければ、その扱いは原則設備と同じですもんね。
ですので、何らかの負担を賃借人様に強いる場合には、それをしっかり特約に掲げることが大事でしょうし、またtotoさまのおっしゃる通り、契約時にしっかり話を詰めておくことが、何よりも大事なのでしょうね。
なお耐用年数を考慮して、「入居後二年以内の故障は大家持ちにする」との見解は、私も勉強になりました!
ありがとうございます。