【初心者向け】日常言葉に潜む不動産用語、道路・建物・開発など

普段我々が何気なく使っている日常言葉の中に、実は不動産取引での専門用語があるのをご存じですか?

この記事では、広く日常的に使われる言葉ながら、不動産取引の現場で使われると、範囲が限定されたり意味が変わったりする用語を幾つかご紹介します。

この記事の内容は、売買仲介をされている方、宅建資格をお持ちの方には、きっと基本中の基本かと思います。

でもそのプロセスにある方には、きっと新鮮だと思います!

目次

不動産用語としての「道路」とは

例えば我々が「牛乳」と言う時、一般的な牛乳に加え、パックに「鉄分カルシウム増量」と書かれたものも含めて言うと思います。

しかし食品衛生の分野では、これは「加工乳」と言われ、「牛乳」とは明確に区別されるそうです。

このように、日常的に使われる言葉ですが、それがある特定の分野で使われると、範囲が限定されたり、意味が変わったりする言葉がありますよね。

このような言葉は、不動産取引の分野にもあるんです。

その一つが「道路」です。

一般的に「道路」と言う時、それは人や自転車や自動車が通る、表面がアスファルト舗装された(稀に砂利だったり、かつては土のままだったりしましたが)通路(つうろ)のことを言いますよね。

しかし不動産売買取引の現場では、その言葉をとても慎重に使われます。

実は、アスファルト舗装された通路(つうろ)であっても、不動産取引での「道路」に該当しないものがあります。

そして、その通路が不動産取引における「道路」かどうかで、接している土地の価値が大きく変わってくるのです。

実は土地は、不動産取引で言う「道路」にしっかり接していないと、建築物を建築することができません。

では、不動産取引で言う「道路」とは、一体どういうものでしょう。

実はこれは、建築基準法の第42条という箇所で、明確に定められています。

ここでは詳細は割愛しますが、おおまかに申しますと、不動産取引においては、建築基準法に基いて、役所が「道路」と認めたものだけを「道路」と言います。

「道路」が不動産の価値を決めます。

「見た目が道路っぽいから道路だと思ったら、実は役所は認めていなかった」こんなことになっなら大変です。

不動産売買取引においては、慎重に調査したうえで、それが「道路」だった場合に限り、「道路」と言います。

不動産用語としての「建物(たてもの)」とは

「建物」と言う時、人々が生活を営む一軒家や集合住宅だけを言う方、店舗やオフィスビルなども含めて言う方、地面の上に建っている物全般を言う方、様々あると思います。

しかし不動産取引で「建物」という時は、やはり注意を払って使われます。

それは道路と同様に、地面の上に備わっている物、あるいはこれから備えようとする物であっても、不動産業者間でいう「建物」に該当しない物があるからです。

ちなみに下記に挙げたものは、不動産取引の現場では「建物」とは言いません。

住宅展示場
ゴルフ練習場
バッティング練習場
中古車展示場
立体駐車場

そして対象物が、不動産取引における「建物」かどうかで、取引の内容が変わってきます。

例えば今ここに、土地を借りてその土地の上に何かを備えようとする人がいるとします。

もしそれが不動産取引における「建物」だったら、この土地の賃貸借は、借地借家法が適用されます。

しかし、「建物」でなかったら適用されません。

さらにもし、その土地が用途地域外にあったら、宅建業法すらも適応されません。

では不動産取引で言う「建物」とは、いったいどういうものなのでしょう。

民法では、「建物」について以下のように説明しています。

「土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを『建物』という。具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の『建物』とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の『建物』となり、不動産登記が可能になる」

また、類似の言葉に「建築物」という言葉があります。

不動産取引においては、「建物」と「建築物」という言葉を、適切に使い分けなければならない場面もあります。

詳しくは割愛しますが、「建物」が民法及び不動産登記法の言葉であるのに対し、「建築物」は建築基準法の言葉になります。

それぞれ、示す範囲が異なります。

不動産用語としての「開発」とは

一般的に「開発」という言葉は、樹木を伐採して街を創ったり、古い建物を壊して新しい建物を建てたりなど、街づくり全般について使われるかと思います。

そしてこの使われ方自体は、不動産業界内でもされています。

不動産会社には、街づくり全般を担う部署を開発部と名付けている会社がありますが、これなどは一例かと思います。

しかし一方で、より限定的かつ専門的に使う場合があります。それは「開発行為」を簡略して「開発」と言う場合です。

「開発行為」とは、都市計画法で定義されている言葉です。第4条第12項という箇所で、下記のように示されています。

「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」

そして開発行為を行うには、都道府県知事の許可が必要になります。

(注)

ただしその行為が小規模開発の場合であったり、予定建築物が図書館や公民館の場合であったりなど、許可不要の場合もあります。

したがって不動産取引においては、その行為が「開発行為」に当たるかどうか、また当たるとすれば許可の要否はどうなのか、この辺りを非常に慎重に調査します。

そして調査の結果、許可必要となれば、いろいろと時間もかかるし、クリアすべき事項も増えて、場合によっては許可されないリスクも考慮しなければならなくなります。

不動産取引の現場で「開発」という言葉が使われる時、それが「開発行為」を略して使われている場合には、極めて慎重に使われています。

もし、これまで不動産賃貸業務がメインの方が、大きめの不動産売買案件を扱う部署に異動したり、転職した場合には、「開発」という言葉の使われ方に注意してみましょう。

街づくり全般を示した日常用語的な使われ方かもしれませんし、都市計画法の「開発行為」を簡略した使われ方かもしれません。

「善意(ぜんい)」と「悪意(あくい)」

次は、「善意(ぜんい)」及び「悪意(あくい)」を見てみましょう。

これらは、日常用語として使われる場合と専門用語として使われる場合とで、意味が全く異なります。

私たちが「善意」と言う時、それは一般的には「思いやる心」、「優しい心」、「親切心」といった意味で使われますよね。そして「悪意」は、その反対の意味だと思います。

しかしこれが、法律用語として使われるとどうなるでしょう。

仮に今ここに、「長年、所有の意思を持って他人の家を占有し続けている人」が居るとします。民法では、その人はやがて時効によってその家の所有権を取得できることになっています。

その場合、占有の開始の時に「善意(正確には善意無過失)だったら10年」、「悪意(正確には悪意または悪意有過失)だったら20年」で取得できる、と定めています。

さてこの場合、「善意」及び「悪意」の意味は、上記で述べたのと同じ意味でしょうか。

「その家に思いやりある心で住み始めたら10年後に所有権が取得でき、悪い心でだったら20年を要する」といった文意になるのでしょうか。

もちろん違います。

正しくは下記の通りです。

「占有開始の時にこの家が他人の物であることを知らなかったら10年で、知っていたら20年で取得できる」

「善意」及び「悪意」は、法律用語として使われる場合、全く別の意味になるのです。

下記の通りです。

「善意」:ある事情を知らないこと
「悪意」:ある事情を知っていること

不動産取引の現場では、「善意」と「悪意」そのものよりも、「善意無過失」とう言葉が比較的よく使われます。

「善意」と「悪意」がそのまま登場するような案件は、実際の取引の現場ではあまりないように思います。そのような案件の場合は、弁護士さんが介入するような、複雑めの案件と言えるようです。

とは言え、法律用語としての「善意」と「悪意」は、宅建試験では必須事項とされています。

この機会に是非押さえておきましょう!

「承継(しょうけい)」

次は、広く日常的に使われる場合と、法律的意味合いが強い場面で使われる場合とで、表記自体が少し変わる例です。

後の人が前の人から何かを引き継ぐ時、私たちは一般的に「継承(けいしょう)」という言葉を使いますよね。

小学生の時の社会科で、「王位継承権」という言葉を耳にしたかと思いますが、これなどはその一例と言えます。

ところが不動取引の現場では、「承継(しょうけい)」と言う場合がほとんどです。

例えば、ある大家さんが人に貸している家を誰かに売ったとします。

その大家さんは、最初の契約時に敷金を預かりました。この敷金は新しい大家さんが引き継ぐのが一般的ですが、このような場合、よく「新たな賃貸人は敷金を承継する」などと言ったりします。

実は「承継(しょうけい)」という言葉は、「継承(けいしょう)」よりも法律的意味合いが強い言葉とされているようです。

不動産取引の重要事項説明書や契約書には、ことごとく「承継(しょうけい)」が登場します。

不動産取引の現場では、ほぼ「承継(しょうけい)」が用いられると思っていてよいかと思います。

まとめ

いかがでしたか?

最後にもう一度、確認しましょう。

下記の言葉は、不動産取引の現場で専門用語として使われます。

□道路【建築基準法】→建築基準法に基いて、役所が道路と判定したもの。

□建物【民法・不動産登記法】→土地の定着物で建物として利用可能なもの。住宅展示場・ゴルフ練習場・立体駐車場などは建物とは言えない。

□開発【都市計画法】→都市計画法における「開発行為」の略語。

□善意【民法】→ある事情を知らないこと。

□悪意【民法】→ある事情を知っていること。

□承継【民法】→日常言葉の「継承」の、より法律的意味合い強い言葉。

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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