【不動産売買】売却依頼物件を売主側仲介で売り出す際の物件調査

お客様からご自宅の売却依頼を承ったけど、不動産売買の初心者なので何をどう扱っていいかわからない、ということはないですか?

実は、この記事を読めば、物件を売り出す際にまず最初にやらなければならない、物件調査についておおまかに解ります!

この記事では、物件調査について、極力深掘りは控え超初心者の方向けに5ステップでご説明します。

合わせて、不動産売買の初心者の方に適した売り出し物件が、どういうものかも解りますよ!

では、どうぞ。

目次

売却依頼物件の売り出しに必要な物件調査5ステップ

「今の自宅を売却してもらえませんか」

お客様からそんな依頼を承ったら、一般的にはそのお客様と媒介契約を結び、その物件情報を不動産サイトに登録して、他の宅建業者に買い手を探してもらいますよね。

ところが物件情報を登録するにも、その登録内容がちょっと難しかったりします。

また、物件の売主様側仲介となると、他業者からいろいろ質問を受け、それらに回答しなければなりません。

つまりその物件が、「不動産の売買取引の対象物として、どういう物件なのか」を知っておく必要があるということです。

そしてそのためには、いろいろと調べたり確認したりする必要があります。

いわゆる物件調査です。

不動産売り出しの際の物件調査は、おおまかに申しますと、下記の5ステップで進めていくことができます。

ステップ1.そこはほんとうに建物が建てられる場所か?

ステップ2.隣地及び前面道路との高低差はどうか?

ステップ3.境界確定は見込めるか?

ステップ4.その建物は今の建築基準法等に適合しているか?

ステップ5.越境物は無いか?

以下に1つずつ、少しだけ踏み込んで見ていきましょう!

ステップ1.そこはほんとうに建物が建てられる場所か?

建物は通常、それが建てられる場所に建っています。しかし実は希に、原則として建てられない場所に建っていたりします。

宅建業者は、売却依頼物件の建っている場所が、建物が建てられる場所なのかどうか確認する必要があります。

その主な確認点は以下の3つです。

1ー1.市街化区域か市街化調整区域か?

国土には、市街化区域と市街化調整区域というものがあります。

市街化区域は建築物が建築できる場所、市街化調整区域は原則、できない場所です。

売却依頼物件が、もし市街化調整区域に建っていたら、それは例外的に認められたか違反しているかです。

(注)
非線引き区域についての言及は割愛します。

1ー2.接道義務は満たしているか?

建築物を建築する場合には、その敷地が建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならない、と建築基準法で決まっています。

これを接道義務と言います。

接道義務を満たしていない場合、原則として建築物は建築できません。

売却依頼物件が接道義務を満たしていなかったら、その建築物は、既存不適格建築物か違反建築物というものになり、取引の対象物として扱うのがグッと難しくなります。

1ー3.そこは土砂災害特別警戒区域に入っていないか?

都道府県は、土砂災害の恐れがある場所を、土砂災害警戒区域、あるいは土砂災害特別警戒区域に指定できます。

土砂災害警戒区域を通称イエローゾーン、土砂災害特別警戒区域をレッドゾーンと言ったりします。

そしてもし、その場所がレッドゾーンだったら、建築物の建築はできません。

またイエローゾーンの場合、いろいろと制限される可能性があります。

ステップ2.隣地及び前面道路との高低差はどうか?

建物は平坦地に建っていたり、雛壇の中腹地のように、隣地と高低差が大きいところに建っていたりします。

そして隣地との高低差が大きいところに建っている物件には、背の高い擁壁が設置されていたりします。

背の高い擁壁が設置されていると、平坦地の物件には関わってこない、踏み込んだ調査が必要になります。

背の高い擁壁が設置されている物件は、扱う難易度が非常に高いです。

ステップ3.境界確定は見込めるか?

不動産売買では、売主様は隣地及び前面道路との境界を確定させ、それを買主様に明示なければなりません。

その為には一般的には、確定測量図というものが必要です。

確定測量図とは、隣地の所有者や利害関係者の承諾を得て確定された境界を元に、土地家屋調査士という有資格者が測量して作った図面です。

ポイントは2つあります。

1.その境界に関わる売却依頼主様と隣地の所有者や利害関係者とのあいだで、「境界はココですね」ということを認め合っている書面がある。

2.測量が土地家屋調査士によって成されている。

境界と思われる箇所の地面を気をつけて見てみると、金属状だったりプラスチック状の印に目が止まる場合がありますよね。あれが境界の目印です。

そしてそのような目印が施されていると、その境界の当事者が確定測量図をお持ちである場合が多いです。

依頼主様が、確定測量図をお持ちだったらそれで良いですが、そうでない場合、一般的には確定測量を実施して頂く必要があります。

確定測量には、費用が相当額かかり、日数もかかるので、一般的には、売買契約後に実施するケースが多いです。

それでも、境界確定が見込めれば、大きな問題はありません。

問題は、確定できるかどうかわか判断つかなかったり、確定が見込めなかったりする場合です。

上記で確定測量図には、「その境界に関わる売却依頼主様と隣地の所有者や利害関係者とのあいだで、『境界はココですね』とを認め合っている書面」が必要と申しました。

対象地によっては、境界のことでお隣り様と見解が相違していたり、お隣り様が長らく不在で空き家状態だったりする場合があり、そうなると、境界が確定できない可能性が出てきます。

そしてそういう物件は、扱うのが非常に難しいです。

ステップ4.その建物は今の建築基準法等に適合しているか?

4ー1.建ぺい率オーバーでないか?

建築物を建築する際には、その場所で指定されている建ぺい率の上限の範囲内で建築しなければなりません。

建ぺい率とは、敷地の面積に対する、建築物を真上から見たときの面積の割合のことです。

例えば、100平米の敷地に45平米の建築面積の建築物だったら、建ぺい率は45%になります。

もし仮に、この場所の建ぺい率の上限が50パーセントだったら、この建築物は、指定建ぺい率に収まっています。

しかしもし、40パーセントだったらどうでしょう。

実際の建ぺい率が45パーセントですから5パーセントオーバーしていることになります。

そういう建築物は、既存不適格建築物か違反建築物になり、取引の対象物として扱うのがグッと難しくなります。

4ー2.容積率オーバーでないか?

容積率とは、敷地の面積に対する、建築物の延べ床面積の割合のことで、やはり場所ごとに上限が決まっています。

例えば、100平米の敷地に1階45平米、2階が30平米の建築物だったら、延べ床面積は75平米、容積率は75%になります。

そしてもし、実際の容積率が容積率の上限を越えていたら、やはり既存不適格建築物か違反建築物になってしまいます。

4ー3.それ以外の主な確認事項

建ぺい率と容積率以外にも、確認すべき事項は様々あります。

この記事では詳細は割愛しますが、確認項目は概ね下記の通りです。

・外壁後退距離の制限

・最低敷地面積の制限

・高さ制限

・特別用途地区内かどうかと、地区内の場合に付加される制限

・地区計画(等)の区域内かどうかと、区域内の場合に付加される制限

・その他

ステップ5.越境物は無いか?

物件によっては、境界の隣地側からこちら側に木の枝などが越境している場合があります。

その場合は隣地の方に、越境している部分を除去して頂くよう丁重に申し入れ、実施して頂きます。

越境しているからといって無断で除去することはできません。注意しましょう。

またこちら側が越境している場合も、ご依頼主に除去して頂きます。

確認・問い合わせ先

では、市街化区域かどうかや、土砂災害特別警戒区域かどうか、あるいは建ぺい率や容積率の上限など、これら一連の事項は、いったいどこで調べられるのでしょう。

この記事では詳細は割愛しますが、おおまかに申しますと、各都道府県庁や市役所・市町村役場などの、都市計画課や建築指導課などになります。

それぞれの窓口に赴いて、直接確認することもできるでしょうし、インターネット上で調べられる自治体もあるようです。まずは是非一度、検索してみることから始めてみるとよいでしょう。

初心者の方が、売却依頼を承って売主様側仲介で売り出すのに適した物件

さてここまでで、売却依頼を承った際の調査についておおまかに見てきましたが、実はこれを見ると、売主様側の仲介業者として物件を売り出すのに、初心者の方に適した物件と、難易度が高くて適さない物件との違いが見えてきます。

売主様側仲介は、ただでさえ専門知識を要しとても難しいです。初心者の方は、以下のような初心者の方に適した物件を扱うようにしましょう!

1.市街化区域内の物件

2.接道義務を満たす物件

3.イエロー及びレッドゾーン外の物件

4.隣地・前面道路との高低差が少ない物件

5.境界確定が見込める物件

6.建ぺい率及び容積率オーバーでない物件

そしてこれら以外の、市街化調整区域内の物件や、接道義務を満たさない物件、イエロー及びレッドゾーン内の物件、高低差が大きい物件、境界確定が見込めない物件、建ぺい率及び容積率オーバーの物件、それ以外の既存不適格物件や違反建築物の物件等は、最初のうちは、扱うのは見送りましょう。

後から難易度が高いと分かった場合の対処法

しかしながら物件によっては、当初、初心者でも扱えると思って依頼主様に「お任せください!」などと申し上げていたら、後から難易度が高いとわかって、慌ててしまう場合もあるかと思います。

そういう場合、いったいどうしたらよいでしょう?

もちろん、難易度が高い物件を扱うのに要する知識を習得し、独力で売り出すことができればそれが一番です。

しかし現実的には、それは難しい場合が多いです。

場合によっては依頼主様、そして会社からお叱りを受けるかもしれませんが、そういう場合はある種の勇気を持って、「手を引く」選択をしましょう。

ただし独自調査は続けていきましょう!

そして次に繋げましょう。

難易度が高い物件だった場合の、引き継ぎ先確保について

物件調査(売り出し準備)をしていた物件が難易度が高い物件だった場合に備え、初心者の方は、案件を引き継いで頂ける方を予め確保しておくことをおすすめします。

職場にそのような方がいらっしゃったら、是非その方にお願いしましょう。

いらっしゃらない場合は会社に申し出て、例えば、他業者を依頼主様にご紹介してみるのもよいでしょう。

ただ残念ながら、会社によっては理不尽な要求を従業員に突き付けてくるところもあるようです。

社内に引き継いで頂けそうな方がいらっしゃらず、かつ社外にそれを求めることを拒むような会社です。

もし勤務先が、そういう会社だとわかったら、転職を視野に入れるのも一つではないでしょうか?

幸い不動産業界は、転職者には極めて寛容な業界です!

まとめ

いかがでしたか?

買主様側仲介では、ローンや税金などの知識を、また売主様側では、不動産そのものの知識を求められたりで、不動産て本当に難しいですね。

是非一つ一つ、習得して参りましょう!

最後にもう一度、内容を確認しておきます。

□物件調査の5ステップ

ステップ1.そこはほんとうに建物が建てられる場所か?

1ー1.市街化区域か市街化調整区域か?
1ー2.接道義務は満たしているか?
1ー3.イエロー及びレッドゾーン外か?

ステップ2.隣地及び前面道路との高低差はどうか?

ステップ3.境界確定は見込めるか?

ステップ4.その建物は今の建築基準法等に適合しているか?

4ー1.建ぺい率オーバーでないか?
4ー2.容積率オーバーでないか?
4ー3.外壁後退距離/最低敷地面積/高さ/特別用途地区/地区計画/その他

ステップ5.越境物は無いか?

□確認・問い合わせ先

各都道府県庁や市役所・市町村役場などの、都市計画課や建築指導課など

□初心者の方向け売り出し物件

1.市街化区域内の物件
2.接道義務を満たす物件
3.イエロー及びレッドゾーン外の物件
4.隣地・前面道路との高低差が少ない物件
5.境界確定が見込める物件
6.建ぺい率及び容積率オーバーでない物件

□後から難易度が高いと解った場合

勇気を持って手を引こう!

□難易度が高かった場合の引き継ぎ先確保

できれば社内の上司や先輩に→難しい場合他社に→それら双方を拒む会社は退職も一案

この記事は以上となります!

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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