【初心者向け】宅建業者目線で見る分譲マンション(区分所有建物)

不動産仲介をやっていると、賃貸でも売買でも、分譲マンションを扱う機会が多くないですか?

そんな分譲マンションですが、解っているようで案外解らないこと、多いのではないでしょうか。

この記事では、分譲マンションのことで、知っておくと今後の取引がより一層スムーズになりそうな事柄を集めてみました。

では、どうぞ。

目次

分譲マンションにおける区分所有者と敷地との関係

分譲マンションにおける、区分所有者と敷地との関係は、一般的なものとしては、区分所有者全員で、その敷地を共に所有し合っている(共有している)タイプだと思います。

そして、私たち宅建業者が扱う分譲マンションも、ほとんどこのタイプです。

しかしもしかしたら、今後ちょっと違うタイプを扱うかもしれません。

以下に6つの例を記載します。

タイプは他にもございますが、これら6つを頭に入れておけば、何かと応用が効くと思いますよ!

下記の通りです。

【例1】マンション業者が土地を購入し、そこに1棟だけ建てて分譲したタイプ

これが、上記で一般的なものとして触れたタイプです。そのマンションの区分所有者が、敷地を共に所有し合う(共有する)ことになります。

区分所有者の敷地に対する権利(敷地利用権、詳細は後述します)は所有権です。

【例2】マンション業者がとても広い土地を購入しました。そしてその土地を5つに文筆しました。そしてそれぞれの土地に、マンションを1棟づつ、計5棟建てて分譲しました。

これは、①のタイプが5つ集まったタイプです。各マンションの区分所有者は、自分が所有するマンションが建っている敷地のみを共に所有し合う(共有する)ことになります。

区分所有者の敷地利用権は、やはり所有権です。

【例3】マンション業者がとても広い土地を購入しました。そしてその土地を分筆せずに5棟建てて分譲しました。

これは、5棟全ての区分所有者が、自分が所有しているマンションが建っている敷地だけでなく、他の4棟が建っている敷地も共に所有し合う(共有する)タイプです。

区分所有者の敷地利用権は、やはり所有権です。

【例4】マンション業者がとても広い土地を購入しました。そしてその土地を分筆せずにマンションを4棟建て、敷地の真ん中には庭園を設けました。マンション業者はこのマンションを、高級分譲マンションとして売り出しました。

これは③と同じタイプです。敷地の真ん中にある庭園も、区分所有者全員で共に所有し合う(共有する)ことになります。

区分所有者の敷地利用権は、やはり所有権です。

【例5】マンション業者は、その土地に隣接するお寺さんから、自らが所有する建物を建てる目的でその土地を賃借し、そこにマンションを1棟建てて分譲しました。

これはタイプとしては①に近いですが、決定的な違いがあります。

このマンションもこれまでのマンションと同様に、区分所有者はその敷地に対し、共に権利を持ち合っています。しかしその権利は所有権ではありません。賃借権になります。

これまでと同じような言い回しでご説明しますと、「このマンションの区分所有者の敷地利用権は賃借権である」となります。

なお、賃借権を共に持ち合うことを「準共有」と言います。「共有」ではない点に注意しましょう。

「共有」が用いられるのは、その権利が所有権の場合に限られます。

【例6】マンション業者が土地を購入し、そこに単身者向けの間取りのマンションを1棟建てました。そして分譲販売と平行して賃借人を募り、共有部の管理及び賃貸管理はそのマンション業者が自ら行うことにしました。

このタイプはいわゆる投資用マンションです。

各戸の区分所有者は外部に居住していて、そのマンションに実際に居住しているのは賃借人の方々になります。

なおこの場合、敷地利用権は有するのは、各賃借人ではありません。外部の区分所有者になります。

また、敷地利用権の種類については、やはり所有権になります。

分譲マンションにおける管理組合、理事会、管理会社とは

分譲マンションの仲介でよく登場する管理組合、管理会社と言葉も似ていてちょっと混同してしまいそうですよね。

やはりよく登場する理事会と合わせ、この機会に整理しておきましょう。

管理組合

分譲マンションに限らず建物は、メンテナンス等が欠かせないですよね。

一軒家であれば、そのメンテナンスはその家の持ち主がしますよね。持ち主では出来ないよいなことは、お金を払って業者にお願いしたりしますが。

しかしあくまでも、メンテナンスをするその主体は、その家の持ち主です。

では分譲マンションでは、誰がするでしょう?

実は分譲マンションも同じです。

分譲マンションのメンテナンスも、あくまでも、そこの区分所有者が主体となって実施します。

そして管理組合とは、メンテナンスを含むありとあらゆる維持管理を行う主体である区分所有者の集まりのことです。

マンションの区分所有者は、皆、その分譲マンションの管理組合の構成員になります。

なお賃借人は、管理組合の構成員ではありません。その分譲マンションに実際に居住してはいますが、管理組合の構成員は、外部に居住していても、その区分の所有者になります。

理事会

分譲マンションの戸数は、50戸だったり100戸だったりします。つまり管理組合の構成員は、50人だったり100人だったりするわけです。

分譲マンションの維持管理を円滑に進める為には、組合員同士が話し合いが大切だったりしますが、50人とか100人とかが、そう頻繁に集まるのも大変です。

そこで組合員を代表して理事会メンバーが集まって、マンション維持管理の様々な業務をこなしていくわけです。

維持管理の実務は、管理会社が管理組合の代わりとして実施します。理事会は管理組合に代わって、管理会社の仕事振りをチェックしたり注文をつけたりします。

誤解されがちなのが、理事会の権限です。

実は理事会には、マンションの維持管理に関することを決める権限はありません。

その権限があるのは管理組合です。

学校のクラスを管理組合に例えたら、理事会は日直です。学級委員ではありません。

管理会社

賃貸営業においては、賃貸人側の宅建業者のことを管理会社といったりしますが、これはその宅建業者が、賃貸人から委託を受けてその賃貸物件を管理しているからですよね。

しかし分譲マンションにおける管理会社というのは、まず、管理組合から委託を受けてそのマンション全体を管理している会社のことを差します。

そしてこのようなマンション管理会社は、1室の賃貸借や売買といった不動産取引に直接関与しない会社もあります。

そういう場合、1室の区分所有者が、それまで住んでいた賃借人が退去し、新たに賃借人を募ることになったので募集した、などの場合の宅建業者があります。

したがって分譲マンションの1室の賃貸借で、賃借人側の仲介に入るときは、マンションの管理会社て、対象となる1室の管理会社の双方とやりとりする場合もあります。

取引業務や一室の管理業務も兼務する管理会社もあり、そういう場合はその1社が窓口になります。

分譲マンションのフロントマンと管理人

フロントマンとは

宅建業者は、物件所有者様から物件の売却依頼を承ったら、その物件についていろいろ調査しますよね。

いわゆる物件調査です。

その際、いろいろ確認したり質問したりする先は、基本的には役所だと思います。

分譲マンションもそれは同じですが、分譲マンション特有の問い合わせ先があります。

それが、その分譲マンションの管理会社になります。

ただし確認したい内容によっては、管理会社の一般事務の方では把握しておらず、その分譲マンションの担当者への確認が必要な場合があります。

そういう時に登場するのがフロントマンです。

フロントマンは、担当する分譲マンションのありとあらゆる事に精通しています。

いわばその分譲マンションのスペシャリストです。

私たち宅建業者は、必要に応じて、その分譲マンションのフロントマンとやりとりするケースが出てくる場合があります。

管理人(管理員)とは

分譲マンションの管理人さんのことは、改めてご説明するまでもないと思いますが、何点か触れておきます。

フロントマンの方の主な仕事が、管理会社のオフィスでのデスクワークであるのに対し、管理人の方は現場仕事です。

フロントマンの方と管理人の方とは、上司と部下の関係にあって、連携して仕事をしています。

私たち宅建業者は、場合によっては、そのマンションの管理人の方に、問い合わせるケースが出てくる場合もあります。

重要事項調査報告書とは

実は不動産売買の重要事項説明においては、取引対象が分譲マンションの場合に限り、必ず説明しなければならない項目があります。

このことは、宅建業法第35条1項6号(区分所有建物の場合)という箇所で定められています。

(注)

この記事では、宅建業法第35条1項6号の詳細については割愛します。

そして実は、これらを重要事項説明として説明するために欠かせない調査資料こそが、重要事項調査報告書(重要事項に係る調査報告書)なのです。

重要事項調査報告書は、管理会社が有償で作成します。

売主側の仲介業者が、重要事項説明書作成時に費用を負担して取り寄せるのが一般的です。

宅建業者が押さえたい分譲マンションの専門用語

分譲マンションに関する専門用語で、私たち宅建業者が押さえたい言葉は沢山あると思います。

その中でも、特に押さえたい用語を集めてみました。

下記のとおりです。

敷地利用権

分譲マンションのような区分所有建物の区分所有者が持ち合っている、敷地に対象する権利のことを言います。

例えば、分譲マンションの購入をお考えのあるお客様が、上記【例2】を下見にいらしたとします。

そしてそのお客様が、「この物件の敷地利用権はどこまでですか?」とご質問されたとします。

その場合担当営業マンは、「隣のマンションとの間に境界がありますので、その手前までになります」などと回答することにならます。

もしこれが【例4】の場合だったら、「隣のマンションの向こう側の道路の手前まで、敷地利用権がございます」などとなります。

すると不動産にお詳しいお客様だったりしたら、「ちなみに中庭はどうなんですか?」とご質問されたりします。

その場合営業マンは、「はい。中庭にも権利がございます」と回答したりします。

するとお客様は、「ということは、中庭の分も、管理費や積立金を負担することになる訳ですね」とおっしゃったりします。

このように敷地利用権とは、その分譲マンションの区分所有者が、敷地に対して有している権利のことを言います。

敷地利用権の多くは所有権ですが、上記【例5】のように、賃借権の場合もあったりします。

敷地権

敷地権をご説明する前に、少しだけ敷地利用権の続きです。

敷地利用権は、言ってみれば、その分譲マンションの区分所有者みんなの権利です。

だから例えば、区分所有者のうちの1人が、自分の持ち分だけを勝手に売ったりしたら、いろいろ不都合が生じるわけです。

そしてそのことは、区分所有法という法律でも禁じられています。

しかし様々な法解釈の結果、区分所有者のうちの1人による、自分の持ち分だけの敷地利用権の処分が成立してしまうケースが、実は存在してしまいます。

そこで登場してくるのが敷地権です。

言葉にすると非常に解りづらいですが、敷地権とは、「この敷地利用権は、区分所有建物と分離できない敷地利用権ですよ」ということを、その登記によって確定させた権利のことです。

敷地権は、登記されることで初めて敷地権になります。

敷地権の登記がされていれば、その分譲マンションの区分所有者は、区分所有建物と分離して自分の持ち分の敷地利用権だけを勝手に売ることができなくなります。

区分所有建物と一体でないと売れないわけです。

法定敷地

区分所有者の敷地利用権が及んでいる敷地は、法定敷地というものと、規約敷地というものに分けて扱われる場合があります。

建物には、その建物を建てるための敷地が当然必要ですよね。

それは分譲マンション(区分所有建物)であっても同じです。

そして、その分譲マンションを建てるために、当然に必要となった敷地のことを、法定敷地といいます。

管理規約によって定める定めない以前に、そもそもその分譲マンションが分譲マンションとして成立するために、無くてはならない敷地、そういうものを法定敷地と言います。

規約敷地

一方規約敷地とは、区分所有者の敷地利用権が及んでいる敷地のうち、法定敷地でない敷地のことを言います。

法定敷地が、その分譲マンションの建物と一体となっている敷地であるのに対し、庭園や通路や、少し離れたところにある専用駐車場などの土地のことです。

また規約敷地は、管理規約によって敷地と定められています。

その土地が、規約敷地に当たるかどうかの判断のポイントは、その分譲マンションと一体となっていない点と、管理規約によって定められている点の、2点とされています。

専用使用権

分譲マンションの共用部分は、本来、各区分所有者、あるいは区分所有者から賃借している賃借人が、皆で使用し合うべき部分ですよね。

しかし共用部によっては、ある特定の区分所有者、あるいは賃借人が、いわば独占的に使用したほうが実情に則しているものがあります。

各専用部のバルコニー部分や、1階の専用庭などがそうです。

このように、ある特定の所有者、あるいは賃借人が、共用部分をいわば独占して使用することができる場合、その権利のことを専用使用権と言います。

なお分譲マンションの各専用部における、の玄関扉、窓、網戸などは、一般的には共用部に属します。

したがって、各区分所有者、あるいは賃借人は、実はそれらを所有しているわけではなく、専用使用権によって専用使用している、というのが実情です。

このことは、分譲マンションに馴染みの無い方にとっては意外なことかと存じます。

この機会に押さえてしまいましょう!

占有者

私たち宅建業者が「占有者」と言う時、一般的には、その物件を占有できる権利を持っている者ということで、所有者、あるいは賃借人のことを言うかと思います。

しかし分譲マンション管理の業界では、占有者を区分所有者の対となる言葉、つまり賃借人という意味で用いているようです。

管理会社のフロントマンとやりとりする時など、「占有者=賃借人」として話しをしないと、話しが噛み合わなかったりします。

まとめ

いかがでしたか?

売買でも賃貸でも、分譲マンションには特有の注意事項があるかと思います。

この記事では、その入門的な事柄を掻い摘んで取り上げてみました。

参考になればと思います。

最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。

□敷地との関係(例)

・1つの敷地に1棟タイプ
・5つが隣接しているタイプ
・1つの敷地に5棟タイプ
・1つの敷地に4棟+庭園タイプ
・敷地が借地権
・外部所有者タイプ(投資用) 等

□管理組合/理事会/管理会社とは

□フロントマン/管理人(員)

□重要事項調査報告書

□その他押さえたい専門用語

敷地利用権/敷地権/法定敷地/規約敷地/専用使用権/占有者 等

この記事は、以上になります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

はじめまして。宅地建物取引士のケイヒロと申します。40歳代半ば過ぎに不動産会社に転職し、住居賃貸営業、店舗事務所賃貸営業を経て、今は売買営業をやっています。よろしくお願いします。

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