不動産の売買営業員として中古物件を仲介する場合、一般的に売主様の契約不適合責任は、特約で免責としますよね。
でも場合によっては中古物件でも、免責でしない場合もあったります。
宅建業者が買い取ってリフォームし再販した物件等を、仲介する場合などがそうです
このような物件は、売主が宅建業者だったりするので、契約不適合責任を免責することはできません。
したがって不動産の売買営業員は、仲介業者として、あるいは自ら売主業者として、契約不適合責任を伴う物件を扱う可能性は充分にあると言えそうです。
やはり不動産売買営業員としては、契約不適合責任の正しい理解は必要なのでしょう。
この記事では、不動産売買における契約不適合責任について、それが免責できるルールや、責任を請求できる期間のルールについてご説明します。
また肝心な、契約不適合責任の責任内容なついても、不動産売買営業初心者の方向けにわかりやすくご説明します。
難しい内容ですが、一緒に頑張って押さえましょう!
では、どうぞ。
契約不適合責任とは
例えば、私たちがネットで中古品を販売するとします。
その時、その販売品に汚れやキズがあったら、やはりそのことを商品説明欄で明らかにして販売したほうが、買った方からクレームが出る可能性が少なくて、安心ですよね。
逆にそれら汚れやキズを伏せて販売してしまうと、後から「ハナシが違うじゃないか、責任とれ!」と言われやしないか、ヒヤヒヤすることになりそうです。
ネット販売ではこのように、販売品と商品説明欄との適合性が、重要であると言えそうです。
契約不適合責任は、この販売品と商品説明欄との関係性を、物件と売買契約書との関係性に置き換えるとイメージし易いです。
ネット販売においては、販売品に関して、売る側と買う側の共通ツールは商品説明欄です。
それが不動産売買においては、物件に関し、売主と買主との共通ツールは売買契約書になります。
したがって売主は買主に対し、売り渡す物件の実態を、共通ツールである売買契約書に、適切にあらわす必要があります。
そしてそれが適切にあらわされていなかった場合、すなわち、物件と契約書とのあいだに不適合があった場合、売主は買主に対し、不適合の責任を負わなければならないことになっています。
この責任のことを、契約不適合責任と言います。
民法テキに申しますと契約不適合責任とは、「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものがあるとき」の売主の責任のことです。
繰り返しますが、契約不適合責任が問題とするのは、あくまで物件と売買契約書の適合です。
「建築基準法等の法令に適合しているかどうか」とか、「本来あるべき姿に適合しているかどうか」等は、契約不適合責任では問題にしません。
例えばある売買物件が容積率オーバーで、いわゆる既存不適格物件だったとします。
でも契約書に「この物件は容積率オーバーです」と記し、そのことを重要事項説明で説明して買主が納得すれば、その点については、物件と売買契約書の内容は適合していると言えます。
契約不適合責任を求められることはありません。
なお仮に、物件と契約書の内容に不適合があった場合、その不適合は売主の見落としかもしれませんし、売主が知っていたけど意図的に契約書に記さなかった内容かもしれません。
また一口に不適合と言っても、修理すれば解決する小規模なものもあれば、契約の目的を達成できないような大規模なものもあり得ます。
このように、物件と売買契約書とに不適合がある場合には、様々なケースがありると言えます。
そこで契約不適合責任では、そのような様々なケースを想定して、「こういう場合は、こういう責任になりますよ」ということを制度化しています。
主に以下のようなことについて、制度化しています。
・どういう場合に「補修してくれ」と言えるか。
・どういう場合に「不適合相当費用を減額してくれ」と言えるか。
・どういう場合に「契約解除してくれ」と言えるか。
・どういう場合に「損害を被ったから賠償してくれ」と言えるか。
・またその賠償はどの程度まで求められるか。
これら詳細については、以下で詳しくご説明します。
契約不適合責任を求めることができる期間について
買主が売主に契約不適合責任を求めることができる期間は、民法で規程されています。
ただし民法の内容は、それを求めることができる期間も含め、売主と買主が同意すれば、内容を変えても良いことになっています。
不動産の売買契約書ベースで申しますと、民法の内容と異なる特約を定めても、それは有効になります。
以上を前提としたうえで、契約不適合責任を求めることができる期間について、ご説明します。
まず民法においては、不適合を知ったときから1年以内に、売主に対して通知することとされています。
「通知」である点にご注意ください。
ご存じの通り、契約不適合責任は、改正前民法では瑕疵担保責任となっておりました。
そしてこの瑕疵担保責任においては、「1年以内に『行使』」でした。
それが改正後の民法で契約不適格責任となり、「行使」も「通知」に変わりました。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかった場合は、「1年以内に通知」というシバリは無くなり、その後も制限なく求めることができます。
また1年以内に通知を行ったら、その後5年以内に請求する必要があります。
また引渡しから10年で、買主が不適合責任を求めることができる権利は消滅します(消滅時効)。
なお、下記の自ら売主制限のところでも触れますが、宅建業者が売主の場合、買主が契約不適合責任を求めることができる期間は「引渡しから2年以内に通知」とするのが一般的です。
契約不適合責任の免責の可否と民法、宅建業法(自ら売主制限)、消費者契約法
繰り返しになりますが、契約不適合責任は、民法で定められています。
民法の内容は原則として、特約で免責したり、内容を変更することが許されています。
不動産売買においては、売主が一般の方だったら、この原則を取り入れることができるので、「契約不適合責任を負わない」とする特約を設けることで、契約不適合責任を免責することが許されます。
しかし売主が宅建業者だったら、民法で定められた内容よりも、売主の責任を軽くすることは許されません。
きわゆる自ら売主制限(8種制限)ですね!
契約不適合があった場合の売主業者の責任は、民法で定められた内容が最小ラインになります。
ただし買主が契約不適合責任を求められる期間を「引渡しから2年以内に通知」とする特約は有効です。
現に不動産売買契約書の雛形では、契約不適合責任の責任内容を最小ラインである民法の内容とし、期間だけ「引渡しから2年以内に通知」となっています。
また売主と買主との関係性が、消費者契約法が適用となる場合も、契約不適責任を一切負わないとする特約を設けることはできません。
不動産売買契約書の雛形では、期間を「引渡しから1年以内に通知」としているものが多いようです。
契約不適合責任の内容
ではここから、契約不適合責任そのものの内容について、具体的に見て参ります。
売主が引渡した物件に契約不適合がある場合、買主は売主に対し、下記4つのことを求めることができます。
1.追完請求
2.代金減額請求
3.契約解除
4.損害賠償請求
以下、順番にご説明していきます。
1.追完請求
売主が引渡した物件に契約不適合がある、買主は売主に対し、補修などを求めることができます。
これを追完請求と言います。
そしてこの追完請求こそが、契約不適合責任で最も一般的な責任内容になります。
なお売主は、買主が求めた通りの方法で追完請求に応じることとされていますが、買主に不相当な負担を課するものでないときは、それと異なる方法で応じてもよいことになっています。
2.代金減額請求
売主が引渡した物件に契約不適合がある場合、買主は売主に、代金の減額を求めることができます。
これを代金減額請求と言います。
ただし代金減額請求は、買主が請求できるものとしては、2次的なもになります。
売主が引渡した物件に契約不適合があり、買主が売主にその責任を求める場合、買主はまず、追完請求する必要があります。
まず追完請求をして、相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときに、初めて代金減額請求をすることができるとされています。
追完請求→催告→代金減額請求の順番です。
ただし履行の追完が不能であったり、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときは、直ちに代金減額請求できるとされています。
3.契約解除
追完請求をしたにも関わらず、売主がそれに応じない場合に、代金減額請求以外にもう1つ、買主ができることがあります。
契約解除です。
なお契約解除も、代金減額請求と同様に2次的なもので、基本的に、直ちに契約解除することはできません。
追完請求→催告→契約解除の順番です。
ただし下記のような場合は、代金減額請求と同様に、直ちに契約解除できるとされています。
・債務の全部の履行が不能であるとき。
・売主がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
・債務の一部の履行が不能、または売主が債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したことにより、残存部分では契約をした目的が達成できないときなど。
4.損害賠償請求
売主が引渡した物件に契約不適合がある場合、買主は売主に、損害賠償を請求することもできます。
ただし、売主に帰責事由がない場合、買主は売主に対し、損害賠償を請求することはできません。
なお契約不適合責任の損害賠償請求の範囲は、履行利益も含まれるとされています。
履行利益とは、契約が履行されたならば債権者が得られたであろう利益のこととされています。
例えばある買主が、クリスマス商戦を見据え飲食店舗物件を購入したとします。
ところがこの物件に、売主に帰責事由がある契約不適合がありました。
その為買主は、クリスマス前までに店をオープンすることができず、本来クリスマス商戦で得られたはずの利益を、得ることができなかったとします。
この場合買主は、物件の補修と共に、クリスマス商戦で得られるはずだった利益についても、損害賠償を請求できることになります。
売主に帰責事由があって損害賠償請求になると、売主の責任の範囲は、追完請求や代金減額請求よりも大きくなる点、押さえておきましょう。
契約不適合責任の注意点6つ
契約不適合責任の内容としては、上記の通りですが、ここで改めて、注意点を整理しておきます。
下記の6つです。
A.不動産売買の契約不適合責任では、「数量」は問題にしない
B.「1.追完請求」と「2.代金減額請求」と「3.契約解除」は、売主の帰責事由の有無は問わない
C.「1.追完請求」と「2.代金減額請求」と「3.契約解除」ができるのは、買主に帰責任事由が無い場合に限られる
D.「 4.損害賠償請求」ができるのは、売主に帰責事由がある場合に限られる
E.「3.契約解除」は、軽微なものはできない
F.不動産売買の契約不適合責任では、売主が一般の方の場合、「2.代金減額請求」の規程は設けない
順番にご説明します。
A.不動産売買の契約不適合責任では、「数量」は問題にしない
そもそも契約不適合責任とは、民法上は、「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものがあるとき」の売主の責任でしたね。
ところが、売買の目的物が不動産の場合、一般的に「数量」は問題にしないようです。
「数量」を問題とする契約は、数量指示売買という売買に限られ、不動産は、それには当たらないとされているようです。
なお上述の通り、民法における契約不適合責任の通知期限は、「不適合を知ったときから1年以内」でした。
しかしこれはあくまで、「種類」又は「品質」に契約不適合がある場合の規程です。
「数量」にはこの規程が適用されません。
「数量」に契約不適合がある場合、民法上の通知期限は無く、「知ったときから5年以内に請求」、及び「10年で時効」といった、消滅時効の規程だけが適用されます。
これら契約不適合責任の「数量」については、実務ではそうそう要求されることは無いようです。
ただし宅建試験で問われる可能性があるようです。
宅建試験を今後にお控えの方は、一応押さえておきましょう!
B.「1.追完請求」と「2.代金減額請求」と「3.契約解除」は、売主の帰責事由の有無は問わない
契約不適合責任は大前提として、売主の帰責事由の有無は問いません。
売主に帰責事由が無くても、売買の目的物と契約書の内容に不適合があり、そのことを買主が通知期限前に通知したら、特約等で契約不適合責任を負わない旨を合意していない限り、売主は、契約不適合責任を負わなければなりません。
これが大前提です。
ただし売主に帰責事由が無い場合、契約不適合責任のうちの1つである、損害賠償請求だけは免れます。
損害賠償請求だけを免れるのであって、契約不適合責任そのものを免れるわけではない点、しっかり押さえておきましょう!
C.「1.追完請求」と「2.代金減額請求」と「3.契約解除」ができるのは、買主に帰責任事由が無い場合に限られる
上記でご説明した通り、契約不適合責任における「1.追完請求」・「2.代金減額請求」・「3.契約解除」では、売主の帰責事由の有無は問いませんでした。
ただし買主側の帰責事由については、限定的です。
「1.追完請求」・「2.代金減額請求」・「3.契約解除」ができるのは、買主に帰責事由が無い場合に限ります。
買主に帰責事由がある場合、これらを求めることはできません。
D.「4.損害賠償請求」ができるのは、売主に帰責事由がある場合に限られる
一方、契約不適合責任における「4.損害賠償請求」は、売主の帰責事由について限定的です。
買主が「4.損害賠償請求」できるのは、売主に帰責事由がある場合に限られます。
売主に帰責事由が無い場合、買主は「4.損害賠償請求」できません。
逆に、買主の帰責事由の有無は問いません。
その契約不適合に買主の帰責事由があっても、そもそも売主にも帰責事由があったら、買主は損害賠償を請求することがでます。
E.「3.契約解除」は、軽微なものはできない
契約不適合責任なおいては、その不適合が軽微なものである場合、買主は「3.契約解除」を求めることはできません。
例えば、ある契約不適合が、追完請求(補修等)でこと足りるとします。
そういう場合、売主はその請求に応じて補修すれば、契約不適合責任を果たしたことになるとされています。
補修で足りる契約不適合に対しまで、買主が「3.契約解除」を求めることはできません。
なお不動産売買契約書の雛形によっては、契約不適合責任の契約解除の規程において、「軽微なものを除いて」といった文言を用いていない雛形もございます。
その場合、「目的を達せられないときは」とあうような文言を用いているようです。
F.不動産売買の契約不適合責任では、売主が一般の方の場合、「2.代金減額請求」の規程は設けない
当該雛形は、売主を一般消費者としています。
不動産売買においては、その売主が一般の方の場合、「2.代金減額請求」の規程を設けないのが一般的とされています。
ただし売主が宅建業者の場合には、民法を変えることで、売主の責任が軽減さらるようなことがあってはなりません。
したがって民法に従い、「2.代金減額請求」についても規程しなければなりません。
不動産売買契約書の雛形も、「2.代金減額請求」については、宅建業者売主用の雛形にはその規程が設けられていますが、一般売主用の雛形には設けられていません。
なお売主と買主との関係性が、消費者契約法の適用となる場合も、一般的にはその雛形に、「2.代金減額請求」の規程は設けられているようです。
契約書の雛形に見る契約不適合責任
一般財団法人 不動産適正取引推進機構が、不動産売買の手引(令和2年度改訂版)というものを作成しております。
その中に参考資料として、土地・建物売買契約書(土地実測売買)の参考例が掲載されています。
以下その中の第20条、契約不適合責任の箇所を参考に、見ていくことにしましょう。
契約不適合責任の内容と追完請求
(一財)不動産適正取引推進機構が作成した売買契約書雛形の中の契約不適合責任の欄では、まず契約不適合責任の内容と追完請求について記されています。
第20条 買主は、買主に引き渡された本物件が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)がある場合は、売主に対し、本物件の補修を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法により補修することができる。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
契約不適合責任を、「種類又は品質に関して契約の内容に適合しないこと」としており、「数量」が入っていないことがご確認頂けると思います。
次に、追完請求についてです。
契約不適合がある場合は、「本物件の補修を請求することができる」と記されており、追完請求できることを明らかにしています。
その先に「買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法により補修することができる」は、民法に定められた追完請求の内容の1つです。
追完請求と損害賠償請求の関係
第2項では、追完請求と損害賠償との関係について記されています。
2 買主は、前項の補修に代え、又は前項の補修とともに売主に損害賠償を請求することができる。ただし、契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
契約不適合があるときは、第1項で記されている通り、買主は追完請求できますが、その契約不適合に売主の帰責事由があったら、買主は損害賠償を請求できることが明らかにされています。
なお、その損害賠償が「補修に代え」というのはお分かり頂けると思いますが、「補修とともに」が、少し難しいと思います。
契約不適合責任がある場合、買主が請求できる損害賠償の範囲は、履行利益まででしたね。
「補修とともに」とは、売主に帰責事由があって損害賠償を請求できる場合には、履行利益に相当する損害があったら、補修と共にその損害賠償も請求できる、という意味です。
例えば、引渡しを受けた飲食店舗に雨漏りがあり、そのことに売主の帰責事由があったら、雨漏りの補修と共に、開店が遅れたことによ売上げの損失等も、請求できるということです。
契約解除
次の第3項では、契約解除について記されています。
3 買主は、契約不適合について買主がこの契約を締結した目的を達せられないときは、この契約を解除することができる。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
民法の条文では、「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微なものを除き」となっていますが、ここでは「この契約を締結した目的を達せられないときは」となっています。
なお、当該雛形では、催告に関する記載が省略されていますが、解除できるのは、基本的に、補修を催告したうえで、それでも補修されない場合にできらとされています。
ただし上述の通り、債務の全部の履行が不能だったり、債務の一部が履行不能で、残存部分では買主の契約目的が達成できない場合には、催告することなく解除できます。
当該雛形では、そのあたりを要約して「この契約を締結した目的を達せられないときは」としているようです。
不動産の売買営業に携わる者としては、少し細かいですが、契約解除については、上述した内容まで、何とか押さえるようにしましょう!
契約解除と損害賠償請求の関係
第4項では、契約解除と損害賠償請求の関係について記されています。
4 買主は、前項の契約解除とともに損害賠償を請求することができる。ただし、契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして、売主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
ここでも、「契約解除とともに」とは、売主に帰責事由があって損害賠償を請求できる場合には、履行利益に相当する損害があったら、契約解除と共に、その損害賠償も請求できる、という意味です。
売主に帰責事由がある場合、売主の責任はとても重いものだと言えそうですね!
契約不適合責任と買主の帰責事由の関係
第5項では、契約不適合責任と買主の帰責事由の関係について記されています。
5 契約不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は第1項の補修の請求及び第3項の契約の解除をすることはできない。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
記されている通り、契約不適合責任では、買主に帰責事由があったら、追完請求と契約解除をすることはできません。
ただし追完請求と契約解除について、売主の帰責事由の有無は問いません。
上述の通り、売主の帰責事由が無い契約不適合に対しても、買主は追完請求することができ、催告のうえ、あるいは状況によっては催告無く、解除することもできます。
損害賠償請求の範囲
第6項では、契約不適合責任の損害賠償請求の範囲について記されています。
6 第2項及び第4項の損害賠償の請求については、標記(H)の違約金の定めは適用されないものとする。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
一般的な不動産売買契約書では、契約不適合でない債務不履行があったら、違約金は幾らになるか定めています。
第6項では、契約不適合責任による損害賠償の請求が、その違約金の額ではないことを明らかにしています。
繰り返しになりますが、契約不適合責任においては、損害賠償の請求の範囲は、履行利益まで広げられています。
買主が契約不適合責任を求めることができる期間
第7項では、この売買契約における、契約不適合責任を求めることができる期間について記されています。
7 買主は、本物件の引渡しを受けてから2年以内に売主に本物件に契約不適合がある旨の通知をしなかったときは、売主に対して本条に定める権利を行使できないものとする。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではない。
(一財)不動産適正取引推進機構『不動産売買の手引(令和2年度改訂版)』P67より
民法の規程では、「知ったときから1年以内以内に通知」ですが、当該雛形では、「引渡しを受けてから2年以内に通知」としています。
またその後、「売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではない。」と記されています。
これは民法の規程通りです。
なおこれ以外にも、例えば一般売主でしたら、「引渡しを受けてから3ヶ月以内」あるいは「1年以内」とするのが多いようです。
もっとも一般売主の場合には、ご承知の通り、そもそも契約不適合責任を免責負とするのが一般的です。
また売主が宅建業者の場合には、宅建業法で認められている「引渡しを受けてから2年以内に通知」を採用するケースが多いようです。
また消費者契約法適用の場合、「引渡しを受けてから1年以内」とする場合が多いようです。
代金減額請求について
当該雛形は、売主を一般の方としています。
不動産売買においては、その売主が一般消費者の場合、上述の通り、代金減額請求の規程を設けないのが一般的とされています。
この雛形でも、代金減額請求の規定は設けておりません。
まとめ
いかがでしたか?
不動産の売買営業に携わるようになると、遅かれ早かれ契約不適合責任を伴う案件を扱うことになります。
その時落ち着いて対処するためにも、是非早い段階から、契約不適合責任に馴染んでおきましょう!
最後にもう一度、内容を確認しておきます。
□契約不適合責任の種類
1.追完請求
2.代金減額請求
*追完請求→催告→代金減額請求の順/直ちに代金減額請求できる場合あり
3.契約解除
*追完請求→催告→契約解除の順/直ちに契約解除できる場合あり
4.損害賠償請求
□契約不適合責任の注意点
○不動産売買では「数量」は問題にしない
○追完請求・代金減額請求・契約解除→売主の帰責事由の有無は問わない
○追完請求・代金減額請求・契約解→買主に帰責任事由が無い場合に限られる
○損害賠償請求→売主に帰責事由がある場合に限られる
○契約解除→軽微なものはできない
○代金減額請求→売主が一般の場合、契約書に規程は設けない
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント