宅建の試験範囲に、自ら売主制限(8種制限)という箇所がありますよね。
この箇所の8種の制限うち、1種目から6種目までは、過去問題でも頻出傾向ですし、存在感も大きいので、何とかマスターできている方は多いと思います。
でもそこで息が切れてしてしまい、その先の7種目「割賦販売契約の解除等の制限」と、8種目「所有権留保等の禁止」が、漠然としたままになっている方、意外に多いのではないでしょうか?
この記事では、宅建試験における自ら売主制限(8種制限)の、7種目「割賦販売契約の解除等の制限」と、8種目「所有権留保等の禁止」について、分かりやすくご説明します。
では、どうぞ。
宅建業法の自ら売主制限(8種制限)とは
そもそも宅建の試験範囲の、自ら売主制限(8種制限)とはどういうものでしょう。
簡単に確認しておきます。
以下の8種です。
1種目.自己の所有に属しない物件の契約制限
2種目.クーリングオフ
3種目.損害賠償額の予定等の制限
4種目.手付の額の制限等
5種目.瑕疵担保責任の特約の制限
6種目.手付金等の保全措置
7種目.割賦販売契約の解除等の制限
8種目.所有権留保等の禁止
これら8種のうち、1種目については、しっかり理解されている方は多いと思います。
何と言っても1種目、スタート地点ですから!
そして2種目、3種目と進んでいって、難しいながらも6種目までは、何とか辿り付ける方は多いと思います。
問題は7種目と8種目、「割賦販売契約の解除等の制限」と「所有権留保等の禁止」ではないでしょうか?
仮に自ら売主制限(8種制限)全てをマスターする労力を、100とします。
すると1種目から6種目までで、大抵90ないし95を費やすような印象があります。
そして7種目と8種目に出くわす頃には、労力もほとんど残っておらず、しかも「割賦販売契約」や「所有権留保」といった小難しい言葉も出てきたりして、「もういいや」となってしまい、放置してしまう方は意外に多いのではないでしょうか?
でも実はこの2つ、学習意欲が充実している時にしっかり向き合うと、案外易しいです!
1種目から6種目、とりわけ2種目から6種目のように反復学習は必要ないように思います。
よってしっかり一度押さえれば、あとは直前に少し振り返るだけで、出題されれば得点できると思います。
なのでこの機会に、是非マスターしてしまいましょう!
以下、この「割賦販売契約の解除等の制限」と「所有権留保等の禁止」について、できるだけ分かりやすくご説明します。
自ら売主制限(8種制限)の「割賦販売契約の解除等の制限」について
7種目の「割賦販売契約の解除等の制限」では、まず割賦販売契約という言葉が馴染みないと思います。
まずはここから確認していきましょう!
割賦販売とは
まず割賦販売とは、品物の販売方法の1つで、売買代金を一括でなく、分割で支払う販売方法を言います。
割賦販売という言葉の意味自体をくどくどご説明すると、割賦販売法に基づく専門用語として用いられる場合や、より日常的で広義な意味合いで用いられる場合があるなど、少々ややこしそうです。
ここでは、「物件を買たら、その支払いが分割になる販売方法」とシンプルに理解しておけば大丈夫です!
なお参考までに申しますと、その支払い方法には定めがって、支払い期間については1年以上、また支払い回数については2回以上と定められています。
ところでこの割賦販売と、ローンとの違いは分かりますか?
割賦販売もローンも、買主の支払いが分割になるという点は同じですよね。
でも実は、その支払い先が決定的に異なります!
割賦販売に基づく分割払いの支払い先は、売主になります。
一方ローンでは、金融機関になります。
加えて、売主の売買代金の受領方法も異なります。
割賦販売では、分割で受領します。
一方ローンでは、一括(手付金がある場合は残代金を一括)で受領します。
割賦販売とローンのこれらの違いは、是非押さえておきましょう!
(注)
割賦販売という言葉を広義の意味で用いた場合、ローン=割賦販売とする場合もあるようです。
しかしこの記事では、両者を区別した用いり方に基づいて、ご説明しております。
割賦販売契約の解除等の制限とは
割賦販売契約では、それぞれの返済の返済額と返済期限が決められます。
割賦販売契約で不動産を購入した買主は、当たり前ですが、その返済期限を守らなければなりません。
しかし、売主と買主の関係性が自ら売主制限に当たる場合、期日までに返済が無いからといって、売主である宅建業者が、買主にいきなり契約解除を迫ったり、一括返済を要求することは禁じられています。
そういう場合まず売主は、30日以上の期間を定めて書面で催告しなければなりません。
そしてこの催告にもかかわらず、定めた期限内に返済が無い場合でなければ、契約の解除を迫ったり、一括返済を求めたりできません。
またこれに反する特約は、無効となります。
極端に申しますと、不動産のプロがそうでない買主様に対し、賦払金の支払いがちょっと遅れただけで、「売った物件を返してください」とか「残金を一括返済してください」とは言えません、ということです。
ここでのポイントは下記の2つです。
・催告には30日以上の期間を定める。
・催告は書面で行う。
なお、催告は書面でなければなりませんが、それでもなお返済が無かった場合の契約の解除は、書面で行う必要はありません。
またこの制限が適用されるのは、対象不動産が宅地建物である場合に限られます。
対象不動産が市街化調整区域内の土地だったりした場合、この制限は適用されません。
自ら売主制限(8種制限)の「所有権留保等の禁止」について
次に8種目の「所有権留保等の禁止」について見ていきます。
ここでも、所有権留保の意味が分かりづらいと思います。
これから見ていきましょう。
所有権留保とは
通常の不動産売買では、売買残代金全額が買主から売主に支払われたら、物件は売主から買主に引渡され、所有権も売主から買主に移転されます。
【通常の不動産売買】
売買代金 :買主→全額支払い→売主
物件:売主→引渡し→買主
所有権:売主→移転→買主
ところが割賦販売契約では、この異動が通常の場合と異なります。
割賦販売契約では、売買代金の支払いがまだ残っている状態においては、物件の引渡しは行われても、所有権は売主に留めておいてよいとされています。
【割賦販売契約】
売買代金:買主→一部支払い→売主(*残代金あり)
物件:売主→引渡し→買主
所有権:売主→移転されない→売主
そしてこの時の所有権の状態、すなわちその販売が割賦販売のときに、売買代金の支払いがまだ残っている場合、所有権が売主に留まることを、所有権留保と言います。
所有権留保等の禁止とは
割賦販売法という法律においては、その販売方法が割賦販売の場合、買った側の支払いが全部終わるまでは、所有権は売った側に留保されたものと推定する、としています。
この法に従えば、その不動産売買契約が割賦販売契約の場合、売買代金全額が支払われるまでは、売主は所有権留保を主張したり、所有権移転を拒んだりできるということになります。
しかし売主と買主の関係性が、自ら売主制限に当たると、売主がその代金を一定額を超えて受領した場合には、所有権留保は禁じられます。
その一定額とは、代金額の10分の3を超えた額です。
この「10分の3超」という数字は、ポイントです。
覚えておきましょう。
ただし例外として下記2つの場合には、所有権留保は認められます。
・受領した額が、代金額の10分の3以下の場合。
・受領した額が10分の3超であっても、残代金について、担保措置を講じる見込みがない場合。
売買代金の支払いが残る場合、通常売主は、その支払いが行われない場合に備え、抵当権や先取特権を設定したり、保証人を立ててもらったりします。
しかしこれらを講じるには、買主からの協力が必要です。
「担保措置を講じる見込みがない」とは、これら買主からの協力が得られる見込みがない等の場合を言います。
まとめ
いかがでしたか?
是非今回の7種目「割賦販売契約の解除等の制限」と8種目「所有権留保等の禁止」もしっかり押さえ、宅建試験における自ら売主制限(8種制限)を、仕上げてしまいましょう!
最後にもう一度、内容を確認しておきます。
□割賦販売契約の解除等の制限
賦払金の支払いがない
→30日以上の期間を定めて書面で催告
*その期間内に支払いがないときでなければ、契約の解除または一括精算を求めることはできない
□所有権留保等の禁止
代金の10分の3超を受領した
→所有権留保の禁止
*下記2つの場合は例外として所有権留保できる
・受領した額が、代金額の10分の3以下の場合。
・受領した額が10分の3超であっても、残代金について、担保措置を講じる見込みがない場合。
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント