不動産に関わる仕事をしていると、よく「不動産を使った節税対策」といった言葉を耳にしませんか?
「不動産を使った節税対策」とは、一体どういうことでしょう?
今回、そんな疑問にお答えする記事をご用意しました。
この記事では、不動産を使った節税対策3つを、不動産業界初心者の方向けにわかりやすくご説明します。
この記事を読めば、不動産を運用することで期待できる節税効果が理解できます!
では、参りましょう。
不動産を使って所得税・住民税を節税する仕組み
賃貸のオーナー様方が所有する建物は、それ自体が経費
所有する土地建物を貸し出して賃料を得ているオーナー様方は、折に触れ、賃料収入から経費を差し引いて不動産所得を計算しています。
不動産所得の経費は、固定資産税や修繕費、管理会社に支払う管理費など様々ありますが、実はこれらよりもより根本的で、かつより絶対的な経費が存在します。
実体が大きすぎてあまりピンと来ないその経費とは、建物そのものです!
不動産所得の計算においては、建物の取得に要した金額そのものが経費になりのです!
まずはこの点を、しっかり押さえましょう。
そして、この建物の取得に要した金額を経費にするときの手続きが減価償却であり、その手続きによって計算された額が、減価償却費です。
減価償却費は、不動産所得が利益になるか損失になるかを決定付ける大きな要因です。
そしてもし不動産所得が損失だったら、他の所得と通算(損益通算)して、所得そのものが圧縮されます。
不動産賃貸のオーナー様方や不動産投資家の方々か行う所得税と住民税の節税は、この効果を活用しています。
以下にその具体的手法2つを、見てみることにしましょう。
建物を躯体と設備に分けて減価償却する
建物の減価償却には、以下の2つの方法があります。
・建物一括で減価償却する。
・躯体と設備に分けて減価償却する。
そして減価償却を躯体と設備に分けると、所有期間の1年目から15年目までに限り、減価償却費を高額にすることができます。
なぜなら設備の耐用年数が15年であることから、その間に限り躯体と設備の双方が減価償却されることになるからです。
ただし16年目からは躯体だけになり、減価償却される額はグッと下がります。
以下に建物価格が税込1100万円の、新築RC造の事業用物件を例に、建物一括で減価償却した場合と、躯体と設備に分けた場合の違いを見てみることにしましょう。
この建物を一括で減価償却した場合、その減価償却費は下記のようになります。
1100万円×0.022=242000円
(*0.022はRC造事業用の償却率です。)
この場合47年間に渡って、242000円を減価償却費として経費計上し続けることができます。
では躯体と設備に分けたらどうでしょう?
1100万円の内訳を、躯体770万円、設備330万円と想定して見てみます。
下記の通りです。
躯体→770万円×0.022=169400円
設備→330万円×0.067=221100円
(*0.067は設備の償却率です。)
1年目から15年目までは、169400円+221100円で390500円を、減価償却費として経費計上できることになります。
16年目以降はグッと減って169400円になります。
不動産所得においては、他にも様々なものを経費にすることができます。
設備と躯体に分けて高額になった減価償却費に様々な諸経費を合わせ、結果として不動産所得を損失にして、損益通算するわけです。
不動産賃貸のオーナー様方や不動産投資家の方々は、このように15年間に渡って所得税と住民税を節税した後に、その物件を売却したりしています。
(注)
上記の例では減価償却費を、消費税を含んで計算していますが、納税者の経理方法によっては、含まず計算する場合があるようです。
法定耐用年数越えの中古物件を運用する
法定耐用年数を越えた古い物件を運用することで、所得税と住民税を節税できるとされています。
なぜなら減価償却期間がグッと短くなり、必然的に経費計上できる減価償却費が高額になるからです。
再び建物価格1100万円のRC造事業用建物を例に、新築で購入した場合と法定耐用年数越えで購入した場合の減価償却費を比較してみましょう。
まず新築で購入した場合、その減価償却費は242000円でした。
これが法定耐用年数越えだったらどうなるでしょう?
法定耐用年数越えの減価償却期間は、下記の計算式から求めます。
法定耐用年数✕20%
RC造事業用建物の法定耐用年数は47年ですから、47年✕20%=9.4年、減価償却期間は9年になります。
価格1100万円の物件を9年で減価償却するとなると、下記のようになります。
1100万円÷9年=1,222,222円
法定耐用年数越えの物件を運用すれば9年間に渡り、1,222,222円を減価償却費として経費計上し続けることがでるわけです。
新築の場合の242000円に比べてかなり高額になり、効果的な損益通算が期待できます。
ただしこの場合、その物件を売却した際の譲渡所得が高額になる可能性があり、売却年の所得税と住民税が嵩んでしまう可能性があります。
したがって法定耐用年数越え物件の運用による節税対策を試みる場合は、売却時の譲渡所得も考慮する必要があるとされています。
不動産を使って贈与税を節税する仕組み
一定規模以上の財産を贈与によって取得したら、贈与税を納税する必要があります。
贈与者(与える側)が受贈者(貰う側)に不動産を贈与しようとする場合、売却によって現金化しその現金を贈与する方法と、不動産のまま贈与する方法が考えられます。
この場合、どちらが節税効果が期待できるでしょう?
答えは「不動産のまま」です。
なぜなら不動産のままの場合、その贈与税の根拠となる価格は、実勢価格でなく相続税評価額だからです。
売却によって現金化し、その現金を贈与によって取得したら、その現金の額に対し贈与税が課税されます。
このことはいわば、その不動産の実勢価格に対し課税されることと同じことと言えます。
ところが「不動産のまま」取得したら、その不動産の相続税評価額に対し、課税されることになります。
相続税評価額は土地には相続税路線価が、建物には固定資産税路線価が根拠になります。
相続税路線価は公示地価及び基準地価の80%程度、固定資産税路線価は70%程度です。
更には公示地価及び基準地価は、一般的には実勢価格よりも幾分低額だったりします。
例えば土地建物の相続税評価額が1500万で、その内訳は土地評価額が800万円、建物評価額が700万円の贈与対象不動産があるとします。
この土地建物を売却によって現金化した場合、幾らに対して贈与税が課税されるでしょう?
まずこの土地建物の、公示地価及び基準地価に基づく額を計算してみましょう。
すると土地は800万円×8÷10で1000万円、建物は700万円×8÷10で1000万円、土地建物で2000万円になります。
またこの土地建物の周辺の取引事例によれば、実勢価格は公示地価及び基準地価に基づく価格の1.2倍だったとします。
するとこの土地建物の実勢価格は2400万円と想定されます。
この土地建物の場合、不動産のままだったら1500万円に対して贈与税が課税されますが、売却によって現金化したら、2400万円に対して課税されると想定されます。
以上のことから、不動産を現金に換えずに不動産のまま贈与したほうが、節税対策になることがわかります。
(注)
この記事では、貸家建付地及び貸宅地の贈与については割愛します。
不動産を使って相続税を節税する仕組み
不動産を相続によって取得したら、やはり税金が課税されます。
この時の税金を、相続税と言います。
不動産の相続税は、やはり相続税評価額に対して課税されます。
贈与税と同じです。
したがって同じ財産を相続によって取得するのであれば、現金よりも不動産のほうが節税効果が期待できるとされています。
財産を多く保有する方々の中には、その財産を現金でなく、不動産で保有する方々が多いようです。
そしてその理由の1つには、将来相続人に課税される相続税の節税対策があるようです。
(注)
この記事では、貸家建付地及び貸宅地の相続については割愛します。
まとめ
いかがでしたか?
不動産を使った節税についておおまかでも知っておくと、賃貸物件のオーナー様方や、収益物件の購入・売却をご検討のお客様とお話する際の助けになります。
是非整理して、頭に入れておきましょう。
最後にもう一度、内容を確認しておきます。
□所得税・住民税の節税対策
・建物を躯体と設備に分けて減価償却費を高額にする手法
・法定耐用年数越え物件を運用して減価償却費を高額にする手法
□贈与税の節税対策
実勢価格と相続税評価額との差による贈与税の節税
□相続税の節税対策
実勢価格と相続税評価額との差による相続税の節税
この記事は以上になります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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