不動産売買の営業員にとって、売買契約時の書類で重要な書類は、やはり売買契約書と重要事項説明書ですよね!
でも実は、物件状況報告書(告知書)も非常に重要であることをご存じですか?
この記事では、売買契約書や重要事項説明書の存在にくらべ、何となくその印象が薄いイメージのある物件状況報告書(告知書)について、その重要性を改めて皆さんと共有したいと思います。
早速、参りましょう!
物件状況報告書(告知書)とは
不動産の売買契約の際に必要となる物件状況報告書(告知書)とは、そもそもどういうものでしょう?
売買営業員の方はご存じのことと思いますが、ここで改めて、サラッと確認しておきます。
物件状況報告書(告知書)とは、主に売買契約締結時に買主が受けとる、容量A4サイズ1枚~数枚(A3用紙を用いる場合もあるようです)の書面です。
なお物件状況報告書(告知書)のことは、ハトマークでお馴染みの全国宅地建物取引業協会連合会においては、「物件状況確認書」と言うとされています。
そしてその役割は文字通り、売買の対象となる土地・建物の状況を、買主様に報告することです。
具体的には、主に下記のような事項について「有」・「無」、あるいは「知っている」・「知らない」等のチェックを入れ、それを買主様に提出します。
雨漏りはあるか/白蟻被害はあるか/境界越境はあるか/地盤の沈下はあるか/周辺環境に影響を及ぼす施設はあるか/近隣に建築計画はあるか(その他あり)
勤務先の不動産会社が所属する団体のホームページ等から、その提携書式が取得できると思います。
是非ご確認頂けたらと思います。
物件状況報告書(告知書)は誰が書く?
ではこの物件調査報告書(告知書)は、誰が書くのが相応しいでしょう?
例えば、不動産売買における重要事項説明書は、一般的には売主側の仲介業者(自ら売主物件の場合は売主自ら)が作成しますよね。
では、物件状況報告書(告知書)も、売主側の仲介業者が書けばいいのでしょうか?
この点については、原則としては、売主様ご自身に、ご記入頂くものとされています。
勤務先の会社によっては、「売主様からヒアリングして、仲介業者が書く」と指導しているところもあるようです。
もし勤務先の会社が、その会社の責任において、そのように指導しているようでしたら、一従業者としては、それに従わざるを得ないように思います。
しかし物件状況報告書(告知書)には、最終的に、売主様の記名・押印が施されることになっています。
つまり、物件状況報告書(告知書)の記入責任は、売主様にあるということです。
この点は大切なので、しっかり押さえておきましよう!
そもそも物件状況報告書(告知書)の作成は義務?
ではこの物件状況報告書(告知書)の作成は、そもそも義務なのでしょうか?
実は物件状況報告書(告知書)は、宅建業法によって重要事項説明の義務が定められているみたいな、何らかの法令による作成義務のようなものは、今のところありません。
そもそも物件状況報告書(告知書)は、国土交通省が作成した「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」というガイドラインに示されました。
その書面の48ページに、「不動産の売主等による告知書の提出について」という記載があります。
*国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」リンク
国土交通省はこの記載を通じて、物件状況報告書(告知書)の提出を促しています。
そしてそれを受けた宅建業の各団体が、物件状況報告書(告知書)の定型書式を作成したようです。
更に物件状況報告書(告知書)の定型書式には、その抱き合わせとして、「記入上のご注意」とか「ご記入にあたって」という、売主様に向けての通知書面が存在します。
この通知書面では、物件状況報告書(告知書)の作成は、「義務」という言葉こそ用いていませんが、作成されるべきものであり、またその記載は、売主様によると述べています。
よって不動産売買の現場に携わる売買営業員としては、物件状況報告書(告知書)の作成は、ほぼほぼ義務であると認識しておいたほうが良さそうです。
加えてその記載も、売主によるべきものと認識しておいたほうが良さそうです。
物件状況報告書(告知書)はいつ書く?
それでは、不動産売買におけるこの物件状況報告書(告知書)は、いつ売主様に書いて頂くのが適切でしょう?
物件状況報告書(告知書)は、売買契約締結時に買主様に提出すればいいので、形式的にはその前日までに、売主様に書いて頂けば良いことになります。
しかし実務においては、売主様から売買の媒介を承ったら、早々に記載に着手して頂くのが良いようです。
そもそもなぜ不動産売買において、売主様に、物件状況報告書(告知書)を書いて頂く必要があるのでしょう?
その理由は、やはり国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の中に見ることができます。
その中に、下記のような記載があります。
**引用**
宅地又は建物の過去の履歴や隠れた瑕疵など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項について、売主等の協力が得られるときは、売主等に告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい。
国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の「不動産の売主等による告知書の提出について」より
このように、物件状況報告書(告知書)の目的は、取引物件の売主や所有者しか分からないことを、売主等の協力を得て、明らかにすることにあります。
それはいわば、不動産の売買営業員が売主様から物件の売却依頼を承った際に行う、物件調査の1つであると言えますよね!
不動産売買の営業員は、お客様から物件の売却依頼を承ったら、その物件についていろいろ調査しますが、その一環として当然、「その物件について、売主様しか分からないこと」について確認しますよね。
その際に、物件状況報告書(告知書)を活用するわけです。
具体的には売主様に面会する際に、本紙をお示し、まず「記入上のご注意」とか「ご記入にあたって」の箇所を、お読み頂きます。
その上で、物件状況報告書(告知書)の本文を、上から順番に読み合わせをしながら、売主様にチェックを入れて頂きます。
その場では分からない箇所については、書面をお預けし、ご確認頂くなどして書いておいて頂き、後日お預かりするようにします。
こうすることで、より精度の高い物件状況報告書(告知書)を作成することができ、かつ物件調査も、よりスムーズに進められます。
そしてそれらの報告事項の中で、これは特に大事と思われるものは、重要事項説明書の特約事項に反映させたりします。
物件状況報告書(告知書)の作成は、物件調査の手段として用いるためにも、売主様と協力し、是非早期に着手しましょう!
売主が物件について知っていることを、買主に告知しなかった場合のリスク
ここまでで、売主様による買主様への物件状況報告書(告知書)は、その提出はほぼほぼ義務であり、その記載は、原則売主様自ら行って頂くべきであり、その着手時期は、早めが良いことが、お分かり頂けたと思います。
物件状況報告書(告知書)については、これらの点さえ押さえておけば、特に問題ありませんが、もう一点、頭の隅に置いきたいことがあります。
売主様が知っていることで、特に物件のデメリットについて、買主様に告知しなかった場合のリスクについてです。
この辺りのことをしっかり伝えることは、売買賃貸問わず、不動産の営業員にとっては、当然のことかと存じますが、改めて確認しておきましょう!
契約不適合責任を追う契約の場合、その責任を求められるリスクがある
売主様が契約不適合責任を追うことになっている売買契約において、売主様が万が一、知っていることを買主様に告げなかったら、売主様は、その契約不適合責任を負わなければならなくなるリスクがあります。
しかも「知っていることを告げなかった」という点が、「売主様に帰責事由あり」と判断されたら、損害賠償請求という、契約不適合責任の中でもワンランク重い責任を、問われる可能性があるようです。
消費者契約法に当たる契約の場合、取り消されるリスクがある
売主様を事業者、買主様を消費者とする売買契約には、消費者契約法が適用されます。
消費者契約法が適用される売買契約において、売主様が万が一、知っていることを買主様に告げなかった場合、その契約は、買主様によって取り消されるリスクがあります。
【重要】契約不適合責任を負わず、消費者契約法に当たらなくても、損害賠償義務が発生するリスクがある
これが一番重要なのですが、実は不動産の売買契約においては、売主様が知っていることを買主様に告げなかった場合、それは契約不適合責任とか消費者契約法云々以前の問題
になります。
すなわち、契約不適合責任を負わず、消費者契約法に当たらない契約形態であっても、売主様に損害賠償義務が発生するリスクがある、ということです。
実は、不動産売買に関する裁判においては、「売主には説明義務がある」という前提で判断されるケースが多々あります。
不動産の売買の契約が健全に成立するためには、売主様と買主様とで、物件に対する情報量が同一であるべきであり、その為には、売主様は買主様に対し、物件のこと、特に売主自身しか知り得ないようなことを、しっかり説明しなければならない、という考え方です。
今のところ、この「売主の説明義務」というのは、民法においては明文化はされていません。
しかしこれまでの判例によれば、この「売主の説明義務」という考え方で、判断されるケースは多々あり、専門家の方々の見方では、今後もその傾向は続くとしています。
物件状況報告書(告知書)は、非常に大切な書類であり、それを売主様にご記入頂く際には、知っていることはしっかりご記入頂くようにすること、ここで改めて押さえておきましょう!
まとめ
いかがでしたか?
是非この機会に物件状況報告書(告知書)について改めて確認し、不動産売買取引の安全性を、より一層高めて参りましょう。
最後にもう一度、内容を確認しておきます。
□物件状況報告書(告知書)の書き手
売主。
□物件状況報告書(告知書)の作成時期
物件調査開始時が好ましい。
□物件状況報告書(告知書)を作成する目的
取引物件の売主や所有者しか分からないことを、売主等の協力を得て、明らかにするため。
□売主が物件について知っていることを、買主に告知しなかった場合のリスク
裁判になった場合に、「売主には説明義務がある」という前提で判断され、売主に損害賠償義務が求められるリスクがある。
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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