本屋で不動産関連の専門書コーナーとかを眺めていると、「底地」という言葉を目にしたことはありませんか?
この「底地」は、例えば不動産業者向け物件検索サイトの土地売買の画面でも、目にすることがあると思います。
「底地」は「ソコチ」と読みます。
この「底地(ソコチ)」、一体何物なのでしょう?
この記事では、扱うことは稀かもしれませんが、不動産業に携わる上で是非知っておきたい「底地」の全体像について、不動産営業3年未満程度の方向けに、分かりやすくご説明します。
不動産業の奥深さに、きっとに触れることができると思います!
では、参りましょう!
底地とは
底地とは、その土地に他人の権利が付いていて、土地所有者が自由に使えない土地のことを言います。
ポイントは所有者目線という点です。
ある土地に他人の権利が付いている時、所有者でないその他人は、付いているその権利によって、その土地を比較的自由に使うことができます。
しかし土地所有者は、自由に使えません。
底地という言葉は、そのような状態の土地を、所有者側から見た時に用いられる言葉です。
不動産売買営業に携わっていると、建物のオーナーチェンジ物件を扱うことがあると思います。
底地とはいわば、このオーナーチェンジ物件の「土地版」です。
底地が売りに出た場合、その物件は土地のオーナーチェンジ物件になります。
底地の具体例
上記で底地とは、他人の権利が付いている土地と申しましたが、その主な権利としては、まずは借地権を挙げることができます。
土地所有者に地代を払うことにより、その土地を借地権によって借り受ける借地権者は、その土地に自らが所有する建物を建てることができます。
一方その土地の所有者は、地代を得ることはできるものの、もはやその土地を、勝手に使用・収益・処分することはできません。
こういう土地を底地と言いうます。
底地という言葉は、一般的には、設定された権利が、この借地権である場合に限り、用いられることが多いようです。
とは言え実務においては、もっと広い意味合いで用いられる場合もあることも、一応知っておくと良いかと思います。
場合によっては、設定されている権利が、地上権や地役権等であっても、所有者側から見た時に、その土地を底地という場合もあるようです。
また地域にもよるでしょうが、道路や水路の維持管理に携わる役所の職員さん方の中には、2項道路等のセットバック部分を、底地という場合もあるようです。
2項道路等のセットバック部分は、所有権はその建物側の敷地所有者ですが、その所有者は、そのセットバック部分を自由に扱うことはできません。
広義の意味では、やはり底地と言えそうです。
このように底地という言葉は、狭義かつ最も一般的な用いられ方として、借地権が設定された土地について用いられる一方で、広義の意味として、所有者以外の権利者の権利が設定されているために、所有者の所有権が制限されている土地全般に対して用いられるようです。
旧借地法について
底地について理解を深める上で、是非とも押さえておきたいことが、旧借地法の概要かと思います。
底地もそうですが、旧借地法についても、日常の不動産取引業務であまり関わらない場合も多いと思います。
この機会に確認しておきましょう。
旧借地法から改正借地借家法への流れ
宅建試験等でもお馴染みの借地借家法は、実は前からある法律が、改正されて出来た法律です。
前の法律とは、一般的に旧借地法と言われるものです。
旧借地法の制定は、大正10年とされています。
大正・昭和・平成と、日本の土地建物の賃借において、永らくこの旧借家法が適用されてきました。
そして平成に入り、平成4年8月になって、ようやく改正借地借家法が適用されるようになりました。
日本の長い土地建物賃借の歴史から見るとふ、今の不動産業従業者に身近な借地借家法は、実はまだまだ歴史が浅い法律と言えそうです。
旧借地法と改正借地借家法の違い
旧借地法と改正借地借家法では、極めておおまかに申しますと、契約の存続期間の長さが違います。
詳しくは後述します。
また、改正借地借家法に見られるような「定期借地」という規程もありません。
ましてや事業用定期借地のように、契約期間最短10年といったような、極めて短い賃借形態もありません。
ただし期間の定めがない契約が、強制的に法定期間になる点や、正当事由が無ければ、土地所有者から更新拒絶できない点は、改正借地借家法と同じです。
と申しますか、これらの点は改正借地借家法が、借地権者保護の観点から、旧借地法の内容を引き継いでいると言えるようです。
旧借地法での借地権の存続期間
旧借地法における借地権の存続期間は、下記の通りです。
なお下記で堅固な建物とは、一般的には今でいう鉄骨造やRC造、非堅固な建物とは、木造等のことを言うとされています。
【当初の契約】
(堅固な建物)
期間の定めあり:30年以上/期間の定めなし:60年
(非堅固な建物)
期間の定めあり:20年以上/期間の定めなし:20年
【更新後】
(堅固な建物)
期間の定めあり:30年以上/期間の定めなし:30年
(非堅固な建物)
期間の定めあり:20年以上/期間の定めなし:20年
【重要】平成4年8月1日以前の借地契約には旧借地法が適用される
不動産取引で底地なり借地なりを扱う機会がある場合には、留意しなければならない非常に重要なことがあります。
それは存続している借地契約のうち、当初の契約(更新前の契約)が平成4年8月1日以前に締結されたものについては、旧借地法が適用されるという点です。
何はともあれこのことは、しっかり押さえておくことにしょう!
旧借地法のもとで生まれた底地を巡る、底地権者と借地権者との揉めごと
実は底地を巡っては、底地権者と借地権者との間で、これまで幾度となく、揉めごとめいたことが起きているようです。
そしてその多くが、旧借地法のもとで形成された底地について、起きているようです。
その主なものとは、例えば下記ようなもののようです。
不動産業従業者として、知っておいて良いことかと思いますので、一緒に見ていくことにしましょう!
底地権者が明け渡しを求めるも借地権者が賃借を継続する
旧借地法にせよ改正借地借家法にせよ、契約したときに契約期間を定めなかった場合、または定めた期間が法で定めた期間よりも短かかった場合、その契約期間は強制的に法で定めた期間になります。
旧借地法においては例えば、堅固な建物でかつ期間の定めのない契約、または定めたもののその期間が30年に満たなかった場合、契約期間は強制的に60年になります。
底地権者(土地所有者)が、旧借地法のそのような事情を正しく理解せず締結してしまった場合、底地権者は「まさか60年とは思っていなかった」といった具合に、そのあまりの長さに困惑する場合があるようです。
しかも旧借地法の堅固な建物の期間の定めがない契約における更新後の契約期間は、強制的に30年です。
その上、改正借地借家法同様旧借家法においても、底地権者側から更新を拒絶するには、正当事由を要します。
底地権者側からすると、契約締結時に契約期間をしっかり理解した上で締結していないと、「60年とか90年なら、もう戻って来ないのと同じだ」と思ってしまう場合があるようです。
底地権者が借地権者に底地の買い取りを求めるも借地権者が拒む
上記のような状態になってしまった底地権者は、借地契約の解約が難しければ、買い取りを提案しようとするようです。
しかし借地権者には、買い取るよりも、賃借し続けるほうが好ましいケースがあるようです。
日本経済の成長と人々の生活水準の上昇に伴い、地代の増額が相応しい場合であっても、借地権者がそれに応じないケースもあり、結果として、相場より安価な地代で住み続けられてしまうような場合です。
底地権者が地代の値上げを求めるも借地権者が応じない
そもそも地代の値上げは、借地権者の生活基盤に直結する事柄でもあることから、難しい場合が多いようです。
とは言え一方では、上述の通り、その地代が日本経済の成長によって実態にそぐわなくなり、借地契約を継続することが、底地権者にとって大きなデメリットとなってしまっている事例もあるようです。
底地を買い受けた新たな底地権者が借地権者に強引な明け渡しを迫る
このように、とりわけ旧借地法のもとで成立した借地契約では、借地権者に対し、底地権者が我慢を強いられケースが見受けられるようですが、一方で借地権者が、底地権者から、その権利を阻害されるような事例も起きているようです。
それは例えば、底地を買い受けた新たな底地権者が、借地権者に対し、いわば強引に明け渡しを迫り、新底地権者のその行為が、裁判で不法行為に当たると判断された事例などです。
上述の通り、令和に入った今においても、当初の借地権が旧借地法のもとで設定された場合には、適用される法律は旧借家法になります。
明け渡しの難しさを象徴する事例かと思います。
底地投資(底地ビジネス)について
ここまで底地のこと、とりわけ旧借地法のもとで生まれた底地について、どちらかと言えばマイナス面に着目してご説明して参りました。
ところが実は底地は、その物件状態や立地条件によっては、優良な投資対象となる場合があるようです。
現に不動産業者の中には、底地に特化したビジネスモデルを確立している業者様も存在し、底地投資とか底地ビジネスという言葉も存在します。
底地は、その賃料収入(地代)が実体と乖離して低めな場合がありますが、通常の土地価格相場よりも著しく安価に購入できる場合があるようです。
そうなると表面利回り自体は、必ずしも著しく悪くなるとは限らないようです。
また、底地を物件管理の観点から検証した時、通常の建物賃貸物件に生じる修繕業務や清掃業務が、ほとんど必要ない場合が多いようです。
また借地上の建物は、借地権者の所有物なので、いわゆる空室リスクの心配も、ほとんど無いようです。
また底地は、その地方特性や特約内容にもよりますが、一般的に、増改築時や借地権者の名義変更時、契約更新時などに、それ相応の一時金を得るこが出来る場合も多く、地代以外の収入を見込める場合もあるようです。
また借地権者が建物の建て替えを検討する時などに、その建物が依存する土地が借地だとローンが組めなかったりするので、買い取って頂ける場合もあり、それ相応の売却益を得ることが出来る場合もあるようです。
このように底地は、優良な投資対象、魅力的なビジネス素材との側面もあるとされています。
まとめ
いかがでしたか?
どうやら底地は、物件の状態や立地にもよりますが、光の当て方によって、マイナスな物にもプラスな物にも成り得るようです。
不動産業従業者としてキャリアを形成するにあたって、その照準を底地に合わせてみるのも一案かもしれませんね!
最後にもう一度、内容を確認しておきましょう。
□底地とは
(狭義)借地権が設定された土地
(広義)所有者以外の権利者の権利が設定されているために、所有者の所有権が制限される土地
□旧借地法の存続期間
【当初】
(堅固)定めあり:30年以上/定めなし:60年
(非堅固)定めあり:20年以上/定めなし:20年
【更新後】
(堅固)定めあり:30年以上/定めなし:30年
(非堅固)定めあり:20年以上/定めなし:20年
□【重要】借地契約のポイント
平成4年8月1日以前の契約は旧借地法が適用
□底地の揉めごと
借地権を終了できない/底地を買い取ってもらえない/地代を上げられない/新底地権者による明け渡しの強要
□底地投資(底地ビジネス)
購入価格が安め/空室リスクが低い/修繕・清掃が不要/一時金が見込める場合あり/売却できる場合あり
この記事は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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